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練習が終わって今日のサボリの罰。モップ掛けとボール磨き。

「なあ、いつからだったんだ?」

ボールを磨きながらに聞く。

もボール磨きを手伝っている。まあ、当たり前だ。

「何が?」

「あいつらの、つか。俺らの噂」

そう言うと上を向いて、指を折って

「結構前から」

とアバウトに答えた。

「数えてたんじゃねぇのかよ」

「面倒くさくなったから。楓は何で私があそこに居るって知ったの?」

「あのどあほうのツレが教えてくれたんだ」

は「あのどあほうのツレ?」と俺の言葉を呟きながら首を捻っていた。

「あ、ああ。桜木?じゃあ、水戸とかか...明日一応お礼言わないとね」

そう言って納得する。

「何であいつらのことを知ってんだ?」

聞いてみると

「中学が一緒だったから。はいはい、そっかー。アイツらか...」

と答えて一人で納得してた。


ボールを磨き終わって、体育館を競争しながらモップ掛けをして

「じゃあ、着替えてくる」

と声を掛ければ、

「おっけー。チャリ置き場に居るわ」

と言って去っていこうとした。

「...何?」

反射での手を引いていた。そんな俺を眉間に皺を寄せてが聞いてくる。

「離れんな」

の腕を引いたまま部室までいく。

「大丈夫だよ。こんなに遅いんだから」

そう抗議するが、

「ダメだ」

の意見は即却下。今度何かあったら俺がいやだ。

部室の前で待たせて素早く着替える。

練習着を適当に鞄にぶち込んで部室を出た。

「あのさ、畳んで入れた?」

俺の鞄を見るなりそんなことを聞いてくる。

「適当にぶち込んだ」

「逃げやしないから。それ、自転車のカゴに入らないよ」

呆れたようにがそう言う。

仕方ないから鞄からシャツやタオルを取り出した。

俺が出すものをは黙々と畳む。

「はい、出来た。これだけの時間で済むことをキミは何故しない?」

そう言って畳んだシャツを俺に差し出して笑う。

「いいだろ。家に帰ったら洗濯機にぶち込むだけなんだから」

そう言うと、

「男ってこれだから」

と言って笑う。


「なあ、

チャリ置き場へ向かう途中、意を決して声を掛けた。

「んー?」

適当に声を返す

「お前、覚えてるか?」

「何を?」

「俺と初めて会ったとき。お前が何ってったか」

俺の言葉には足を止めて首を捻る。

「わかんない。『こんにちは』とかそんなのじゃない?」

「まあそうだけど。は、体が弱かった俺にこう言ったんだよ。『じゃあ、楓ちゃんはが守ってあげるよ』って」

「うっそ。私カッコイイじゃん!」

そう言ってなんだか満足そうに頷く。

「や、じゃなくて。俺が言いたいのは」

と言うと、は俺を見上げて何だか期待の眼差しを送ってくる。

「俺が言いたいのは。今度は俺が守ってやるから。もう体だって丈夫になったし、背だってでかくなった。だから、は俺が守ってやるから」

はあんぐり口を開けた。

その不細工な顔のまま視線が彷徨う。

「楓、風邪でも引いた?熱があるんじゃない?」

そう言って背伸びをして俺の額に手をつけた。

「熱なんてねぇ。本気だ」

そう言っていつもより近いところにあるの顔に、唇に触れようとしたら思いっきり突き飛ばされた。

「からかわないで!」

そう叫んだの瞳に涙が溜まっていた。

ああ、早まったかも...

そう思っても時既に遅く、は俺に背を向けて走り去って行った。










桜風
07.8.27


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