| 昨日、初めて楓が怖いと思った。 怖いというか、全然知らない人のように見えて、凄く戸惑った。 夢なら良かったのに、と思ったけど 「よう、。昨日は流川王子に助けてもらえたのか?」 と朝っぱらから全く以ってデリカシーの無い高宮の一言で、昨日のあれがやっぱり現実だったんだって思ってしまう。 「ええ、お陰さまで!」 そう一言言って教室へ向かった。 乱暴に鞄を机の上に置いてその上に顔を突っ伏した。 「おう」 と廊下から聞きなれた声が聞こえたけど、お陰で昨日のあの言葉も甦ってしまって返事など出来ない。 聞こえないフリをしてそのまま鞄に突っ伏していると、楓も諦めて自分の教室へと向かった。 2時間目の体育は何となく気分が乗らないから屋上へエスケープした。 ぼーっと寝転んで空を見上げているとドアの開く音が聞こえる。 「。女の子が大の字で寝てるなよな」 笑いながらそう言うのは、水戸。 「何、サボリ?」 「そ。お前と一緒。てか、今来たから。半端な時間に教室に入っても面倒くさいだろ?」 たしかに。 「ああ、昨日はありがとう。一応、お礼を言っておきますよ」 そう言うと水戸は苦笑いを浮かべる。 「何?」 「いや。昨日の流川の顔を思い出してな。が連れて行かれたって話をしたら、いきなり顔色を変えて走り出すんだから。あの噂、本当だったのか?」 そう言ってタバコに火をつける。 「私と楓が付き合ってるってやつ?」 「そ」と言って白い煙を吐く。 「違うよ。幼馴染のようなもの」 そう答えると、 「そうか」 と納得したように水戸は呟いた。 「ねえ、水戸には幼馴染居る?」 ちょっと聞いてみた。 「いや。いねぇ。というか、居たけど、離れていったというか...」 そう言う。 「なるほど、感性が合わなくなったんだね」 そう言うと水戸が笑った。「ものは言いようだな」って。 「流川と何かあったのか?」 不意に聞かれて水戸を見る。 「あんな質問されちゃ、誰だってそう思うだろう」 笑いながらそう言う。 「楓と私って幼馴染って言っても家が隣とかそう言うんじゃなくて。でも、毎週会ってたりしたから久しぶりに会って成長した幼馴染に驚いて戸惑いを覚えたって展開は無いと思ってたのよ」 「つーことは、流川が成長してて戸惑いを覚えたのか?」 タバコを咥えたままそう聞く。 「うん。成長って言うか、知らない人に見えたの」 「ふーん」と言って白い煙を吐いてタバコの火を消す。 「向こうも同じこと思ってたりしてな」 「向こうって楓も?」 「そ。女の子の成長も中々急激だしな」 そう言って笑う。 「まあ、少しくらい考えてやってもいいんじゃないのか?お互い成長してることだし?」 水戸がそう話を締めたところでチャイムが鳴った。 「じゃあ、俺行くわ」 「うん、ありがとう」 そう言うとヒラヒラと手を振って屋上から出て行った。 ふと、グラウンドを見下ろすと体育だったのは10組も同じで、楓がこっちを見上げていた。 さっきまで水戸と居たのを見られたのかもしれない。 何も悪いことをして無いのに、少しだけ後ろめたさを覚えた。 それは、一瞬だけ合った楓の目が少しだけ寂しそうに揺れたから。 |
桜風
07.8.31
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