| 水戸に言われたからってワケじゃないけど、考えている。 楓は何を思って突然あんなことを言い出したのか。 それを一生懸命考えても、結局辿り着く答えはひとつしかなく、だからこそ私の頭の中は考え続けることができない。 では、考える観点を変えてみよう。 私は楓をどう思ってるんだ? ...どう思ってるんだろう? これと言って私の中の流川楓に特記事項を加えるようなこと有ったっけ? 私にとって楓は、華道の先生の子供で私の幼馴染で。高校で初めて同じ学校に通って、中学の頃から騒がれてたらしいけど、バスケが凄く上手くて。 バスケってのは楓にとってのすべてであり、彼を表すことが出来る単語でもある気がする。 縁側に出た。 空を見上げると不吉に紅く輝く満月。 こういう変わった月も好き。 不吉に見えようが関係ない。昔から好きだったんだから。 ちょっと前まで一緒に並んで月を見上げられる間柄だったな、と感傷に浸る。 此処最近、私は楓を避けている。 それこそ不自然なまでに。 だから、楓と私が付き合ってるという噂はそろそろ下火になったし、クラスメイトたちも前みたいに話しかけてきている。 ただ、いつも朝の楓の声だけが私の胸を締め付ける。 あの日以来、挨拶すら返してない。 あんなの冗談だ、と笑い飛ばせるほど私は大人でもなかったらしい。 まあ、所詮中学を卒業して数ヶ月しか経ってないのだ。 ガキってヤだな... ふぅ、と溜息を吐くと 「よう」 と背後から声がした。 口から心臓が飛び出るかと思った。 しかし、口から飛び出る悲鳴すらも何とか抑えて「おかえり」と振り返らずに返事した。 楓が荷物を置いた。そして、私の隣に並び、縁側に腰を下ろした。 「。いい加減、無視するのやめてくれねぇか?」 そう言われた。 それに答えることなく、私はすっくと立ち上がり 「じゃあ、帰るわ」 そう言って踵を返した。 「待てよ」 楓がそう言って手を伸ばしてきた。 私は少しだけ歩調を速めてそれを避ける。 「じゃあね」 振り返ってそう言ったけど、その瞬間私は後悔した。 ああ、何て顔してるの? 凄く悲しそうな目をして私を見る楓。 つくづく自分のガキさ加減に腹が立つ。 目の前の幼馴染にこんな顔をさせても私の足は楓に向くことはなく、背を向けて去っていった。 目の前がぼやけて生暖かい雫が頬を伝う。 私、何で泣いてるの? 自分の身勝手さに更に腹が立った。自分の感情を優先させた結果、楓にあんな顔をさせて、それなのに、自分が悪いのに今度は泣いてる。 「ばっかじゃない!」 自分に向かってそう言ったけど、結局それは音にならず、私の口から漏れたそれは嗚咽だった。 不意に私の手が誰かに掴まれた。 この家の中で、こんなに温かくて大きな手をしてるのはただ一人しかおらず、私は振りほどくことも出来なかった。 「少し、付き合え」 乱暴にそう言われ、私は答えなかったけど、そんなことを気にせず彼は私の手を引いて家を出た。 |
桜風
07.9.3
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