| あの早まった告白から思い切り無視され始めた。 あの翌日には屋上で水戸ってやつと授業をサボっていた。 そして、朝声を掛けても返事が無い。 溜まらなく不安になった。 の稽古の日、練習が終わってすぐに家に帰った。 もしかしたらまだ残ってるかもしれない。 家に帰ってチャリを置くと、そこにはのそれがある。 いつもがいる縁側に向かえばやはり、予想通りにが居た。 空を見上げている。 そこには紅い月が不吉に輝いていた。 あまり良い印象を受けないが、は幼い頃からあの紅い月を好きだと言っていた。 そんなことを思い出す。 深呼吸をして 「よう」 といつもどおりに声を掛ければ 「おかえり」 といつもどおりの返事がある。 ただ、いつもと違うのは俺の方を見ないということ。 鞄を置いて縁側のの隣に腰掛ける。 「。いい加減、無視するのやめてくれねぇか?」 正直キツイ。 確かに、のことを考えずに自分の感情を口にしたことは早まったと思う。それでも、こんなに無視され続けると俺だって心が折れてしまいそうだ。 俺の言葉に答えることなく、はすっくと立ち上がり 「じゃあ、帰るわ」 そう言って踵を返した。 「待てよ」 そう言って手を伸ばしたが、俺の手は空を掴む。の手には届かなかった。 「じゃあね」 は一度振り返ってそう言った。 俺は呆然とその背中を見送った。 が、月の光に照らされて何かが、の頬から雫が零れたのが見えた。 慌てての後を追う。 近づくと分かる。 は泣いている。静かに、自分の中の何かを押し殺すように。 俺はの腕を掴んだ。 振り払われるのを覚悟してたけど、の腕には力がなく、ただ俺に掴まれても何の拒絶も示さなかった。 「少し、付き合え」 そう言っての手を引いて家を出た。 近所の公園に来た。 昔はここでよく一緒に遊んだ。 子供のときは凄く広く感じた公園も、今ではそうでもない。寧ろ小さく感じる。 そういえば、この手も小さくなったな。 繋いだ手を意識してそう思った。 「小さいね」 不意にがそう言う。 「ああ。俺たち、でかくなったな」 そう言うとは頷いた。 手を離して鉄棒へと向かう。 昔はこの鉄棒は大きくて、2人で背伸びをして手を掛けていた。今では俺の腰くらいで小さい。 「なあ、」 返事は無いが、の目は俺の言葉の続きを待っている。 「この間のこと。無かったことに出来ねぇか?」 そう言った。 は目を瞠る。凄く、切なそうに。 「俺は、を困らせたくてああ言ったんじゃない。ただ、焦っていたんだ。が大変な目に遭ってたのに、俺は何も気付けなくて。結局、あの時は俺以外の誰かが助けたようなもんだ。だから、次に何かあったら俺を頼ってほしくて。でも、その言葉が逆にを困らせたんだ。悪い」 頭を下げた。 俺と距離を取って立っていたが近付いてくる。 そして、俺の頬に衝撃が走った。 は拳を握っている。 グーで殴られた... 「そんなに簡単に撤回できるようなことを口にするな!」 泣きながらがそう叫んだ。 肩で息をしているは涙を流している。けど、それを拭おうとはしない。 「私が。私がどんだけ悩んで考えていたと思ってる!?そりゃ、無視しまくったのは悪かったと思ってるよ!でも、そんな簡単に無かったことに出来ることならそもそも口にするな!!」 は男泣きに泣きながらそう叫ぶ。 こんなに派手に泣いている人間を前にして、どうしたらいいか分からない。 此処で謝ると逆効果になりそうだ。 けど、どうやったら今の、このが落ち着いて俺の話を聞いてくれる? 今まで使ったことの無い頭を巡らせてみるも、全然分からない。 「なあ、取り敢えず。涙拭かねえか?」 俺の口から出た言葉がそれで、更に火に油を注ぐんじゃないかと焦ったけど、は意外にも 「ハンカチ」 と言って俺に手を出す。 慌ててポケットからハンカチを取り出して渡した。 涙を拭き終わってが俺を見上げる。 怖ぇ... 「で、さっきの。取り消すの?取り消さないの??」 話を戻された。 ここで改めて取り消すとか言ったらまた拳が飛んでくる。 これは幼馴染としての勘。 そして、やっぱり俺としては無かった事にしたくない。 「取り消さねぇ。俺は、が好きだ。を守りたい」 そう言うとは不敵に笑ってクイクイと指を動かして近づくように言ってきた。 恐る恐る俺は腰を折って顔を近づける。 の顔が近づいたかと思うと、唇に柔らかい感触がある。 驚いて身を引くと 「ザマミロ」 はそう言って目を眇めた。 |
桜風
07.9.7
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