| 楓に手を引かれて向かった先は、幼い頃によく遊んだ公園。 あの時は凄く大きく思えたこの空間も、今の私たちにはそんなことは感じない。まあ、楓がでかくなりすぎて何もかもが小さく見えるってのが今の状況何だろうけど... 繋いだ暖かい大きな手を意識した。 いつの間にか大きくなっていた。一緒に成長したはずなのに、いつの間にか置いてけぼりを食らっていた。 「小さいね」 呟くと 「ああ。俺たち、でかくなったな」 と楓が応えた。 手を離して楓が鉄棒へと向かう。それは、楓の腰くらいの高さに過ぎない。昔は凄く高くて2人ともムキになってチャレンジしていた。 そんなことを思い出していると、 「なあ、」 と楓が声を掛けてきた。 目で楓の話の続きを促す。 「この間のこと。無かったことに出来ねぇか?」 楓のこの言葉が私の心臓を鷲掴みした。 一瞬呼吸の仕方を忘れた。ゆっくり息を吸って吐く。 「俺は、を困らせたくてああ言ったんじゃない。ただ、焦っていたんだ。が大変な目に遭ってたのに、俺は何も気付けなくて。結局、あの時は俺以外の誰かが助けたようなもんだ。だから、次に何かあったら俺を頼ってほしくて。でも、その言葉が逆にを困らせたんだ。悪い」 そう言って楓が頭を下げた。 何だか無性に腹が立った。 アレだけ悩んだ私の時間は何だったんだ? 私の流した涙は無駄になるってコトか?! そう思っていたら、すでに手が出ていた。 楓の頬をグーで殴っていた。 楓は呆然と私を見ている。 「そんなに簡単に撤回できるようなことを口にするな!」 震える声で私はそう言った。 「私が。私がどんだけ悩んで考えていたと思ってる!?そりゃ、無視しまくったのは悪かったと思ってるよ!でも、そんな簡単に無かったことに出来ることならそもそも口にするな!!」 凄く悲しかった。 無かった事にするってことは、楓はまたただの幼馴染に戻るってことだ。 凄く悔しかった。 楓にこう言わせたのはガキ過ぎる今の私だ。 私は自分の目から流れている涙を拭うつもりはなかった。 流れたければ流れるがいい、そう思っていた。 けど、 「なあ、取り敢えず。涙拭かねえか?」 楓の間抜けなこの言葉に、その選択肢もまあ、アリかな?って思った。 「ハンカチ」 一言そう言って楓に手を出す。 楓は珍しく慌ててポケットからハンカチを取り出した。 楓のハンカチで乱暴に涙を拭いた。 そして、見上げる。 少し、顔が引き攣っている。それが、ちょっとだけ可笑しい。 「で、さっきの。取り消すの?取り消さないの??」 聞いてみる。 取り消すとか言ったらもっかい殴ってやろう。 「取り消さねぇ。俺は、が好きだ。を守りたい」 楓の言葉に、思わず胸が締め付けられる。 それでも、私は意地を張って指を折って近づくように楓に言った。 楓は腰を折って私の顔の高さまで背を屈める。 楓の唇にキスをして 「ザマミロ」 と私は言った。 呆然とする楓の表情が可笑しくて笑いそうになったけど、そうすれば何となく間抜けな空間となってしまう。 気が抜けると、私は恥ずかしさのあまりまた逃げてしまいそうだ。 「?」と唇を押さえて楓は私を見る。 「私のファーストキスをくれてやったんだ。...責任とってよ」 そう言うと、楓は何だかふにゃ、と笑う。 笑うのを堪えたけど、失敗したって感じの表情だ。 「おう」 そう言って不敵に笑った。楓のこの笑顔ってヒールっぽいよなー... 「けど」と言葉が続く。 「今ののはファーストキスじゃねぇから」 そんなことを言う。 「はあ?私がファーストキスって言ってるでしょう?」 聞き返すと楓は、今度こそ自信満々に悪役よろしく笑って 「小学校に上がる前。ウチで寝てたのファーストキスは俺が貰った」 そんなことを言う。 「ちょ、聞いてないよ!!」 「言ったら今みたいに怒られるだろう?誰が言うか」 「信じらんない!スケベ!変態!!いやー、私の純情を返せー!!」 そう言って楓の胸を拳で叩いて抗議をしていたら 「いてぇ」と言って私の両手を掴んで引き寄せる。 その力に抗えなかった私は楓の胸に突進する羽目になった。 「だから、責任とってやるよ。この先、ずっとを守ってやるから」 そう耳元で囁かれた。 「仕方ないから守られてあげるよ」 悔しくてそう言い返すと楓が喉の奥で小さく笑う。 それが私の耳に響いて少しくすぐったい。 楓の体が離れて、代わりに整った顔が近づく。 瞳を閉じて私もそれに応えた。 3度目の正直。 それは忘れられない甘いキスだった。 |
桜風
07.9.11
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