優しさに包まれて 2





「ねえ、。頼みがあるんだけど」

ある日の昼休憩。

うららかな日差しの差し込む教室で神が声を掛けてきた。

「なに?」

今朝コンビニで購入してきた雑誌を捲りながらその『お願い』とやらを聞いてみる。

「買い物に付き合って」

ちらりと神を見ればいつものように笑顔だ。けど、今回のは少し困り顔。

「後輩の、えーと。信長くん?と一緒に行けば?仲良いんでしょ?」

と返す。

あ、このアクセサリー可愛い...

雑誌に掲載されているアクセサリーに釘付けになっていると

「信長じゃダメなんだよ」

と言われてわたしはやっとしっかり顔を上げる。

「何で?」

「姉さんの誕生日プレゼントを買いたいから」

え、今更??

神にお姉さんが居るのは聞いてるから知ってる。小学生のときに1回くらいは目にした事もあるはず。

とにかく。噂によると大層な美人だそうで。

まあ、神を見ていたら神家のDNAは素晴らしいものだというのは、何となく想像がつく。

散々『十人並み』と称されたわたしからしたら、羨ましい限りだ。

因みに、わたしを『十人並み』と称したのはのファンの子達で、彼と付き合い始めたときには珍獣よろしく毎日わたしを見学しに来る人が居てそう言い捨てていた。

今は静かで実に過ごしやすい。


それはともかく。

「今までお姉さんに誕生日プレゼントあげた事ないの?」

と聞いてみる。

「あるけど。無難なものにしてたし、姉さんの反応もイマイチだったからさ。今年は良い反応を見たいなって思って」

うわ。今、もの凄くハードル上げられたな...

「わたしでいいの?」

以外に頼める人は居ないし」

そう言って肩を竦ませる。

まあ、確かに神が他の女の子にこんな頼み事をしたら色々と面倒なことになりそうだ。

「いいよ。いつ?」

「助かる。姉さんの誕生日が5月10日だから、それまでに都合が合う休日にしない?それがダメなら放課後」

神の話を聞いて、「そうだなー」と手帳を広げる。

「神、部活の無い日は?」

「えーと、無い日はないな...あ、けどこの日は監督が用事があるとかで練習は午前で終わるんだ。午後からは何かの点検で業者の立ち入りがあるから体育館は使用禁止だって」

神の指差した日はわたしの手帳に何も記入されていない。

「おっけ。じゃあ、この日にしちゃおう。部活が終わってから、か。何時なら大丈夫?」

は?部活、ないの?」

「弱小の我が部には、休日練習というものはないよ」

そう言って笑うと「じゃあ、安心だ」と返事が返ってくる。

「昼過ぎだから、1時。じゃ、ちょっと早いかな?2時は?」

「わたしは暇してるから大丈夫。じゃあ、2時に、どこにしよう」

手帳に神との約束を書き込みながら聞くと、

「迎えに行くよ」

と神が言う。

「それはありがたい。じゃあ、2時ごろ神がウチに迎えに来てね」

「了解いたしました、お姫様」

神の言葉にわたしは吹きだし、神もつられて笑う。

「あれ?もしかして神と2人で出かけるのって今回が初めてじゃない?」

「ああ、うん。そうだよ。楽しみだな」

にこりと笑う神に「そうだね」と返す。

そして、何となく思い出す。

最近とも出かけてないや...


手帳を仕舞って再び雑誌を眺める。

何だろう。わたしは少し、いや、かなり神と出かけるのが楽しみのようだ。

そんな自分の感覚に多少なりとも困惑するけど、それでもこんな気持ちは久しぶりで少しだけ嬉しかった。









桜風
08.7.9


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