| 神の宣言から数日。 徐々に嫌がらせは減っていき、殆どなくなった。 こんな早くに収拾がつくなんて全然思っていなかったから正直驚きだ。 「神って、怒らせたら怖いタイプだね」 そう言うと 「うん、そうかもね。でも、今回のは相当頭にきちゃったからね」 といつもと変わらない笑顔でそう言うから余計に怖い。 あれから神はわたしの気持ちを確かめようとしない。 ただ、それに甘えてたらいけないと思う。 それなのに、わたしの中で答えが出ない。分からないのだ。 「ねえ、神」 「ん?」 声を掛ければ笑顔を向ける神。 「あのさ。この間の話なんだけど」 「どれ?」 ああ、聞かれると思ったけど。 「えーと。ほら、神が、わたしをー、ってやつ」 「ああ、うん。俺がを好きって話ね。何?別に答えがほしくて言ったわけじゃないって言わなかったっけ?」 首を傾げながら何でもないことのように言う。 「うん、言った。でもね、わたしなりにさ、考えたのよ」 「うん」 「結局、同じ答えが頭の中を回って、それ以外出てこなくなって、ね」 「うん」 神の表情が全然変わらないのが不気味だ... 「わっかんないのよ」 「は?」 あ、今やっと表情が変わった。 「うん。そもそも『好き』って何だろうって」 「え、そこから?」 神は元々大きな目を更に少しだけ大きくして聞き返してくる。 「うん。そこから」 大真面目に頷くと神は視線を彷徨わせた後、困ったように息を吐く。 「これは俺の場合だけど」 と最初に断りを入れる。それにすらわたしはこくこくと頷く。 「一緒に居たいって思うことかな?一緒にいられる理由が見つかったらそれが凄く嬉しくなったり。ケンカも、時々あるかもね。それは自分のことを相手に分かってほしいからするんだよ。ないに越した事はないけど、そういう理由ならあっても良いなって思う。困った事があったら一緒に困りたいし、嬉しい事があったら一緒に喜んでもらえるともっと嬉しいな」 そう言って神はわたしを見る。 「俺はにそう思ってる」 まっすぐ目を合わせて言う神にまたしても言葉に詰まる。 「わたしは、..神の事...」 「いいよ。気にしなくて」 「わたしは、神と一緒に居たら楽しいと思う」 うん、楽しい。 神は驚いたようで、黙ってわたしを見ている。 「神の言葉に一々ドキドキしたりするし、そのくせ、神の隣は居心地が良いな」 「ねえ、。それって、俺のことを好きって言ってる?」 いつもよりブレのある声で神が問う。 「だから、それがわかんないって言ってるんじゃない。友達でそう感じてるのかもしれないし。わたし、やっぱり感情の何処かが欠落してんのかな?」 首を傾げて神を見る。 神は逡巡してわたしの頬をその大きな両手で包む。 「じゃあ、さ。キスしてみようか?」 「へ?」 聞き返してもそれに返事は無く、代わりに神の柔らかい唇がわたしのそれに優しく触れる。 あまりにも突然で、わたしの思考は止まってしまい、代わりに心臓の鼓動が速くなってやけにうるさい。 それこそ、神に聞こえるのではないかと心配するくらいに。 「どう?何か変わった?わかった?」 何でもないことのように神が言う。それが悔しくて顔を上げると、意外なことに神の顔も赤く染まっている。 そんな神の表情は初めて見る。 だからかもしれない。 わたしの口から出た言葉は 「もいっかい」 だった。 神は驚いたようだけどすぐににこりと微笑んで 「よろこんで」 と答えて再び唇を寄せてくる。 何度かそれを繰り返した後にわたしは再び口を開く。 「これは、わたしの見解だけど。でも、分かったような気がする」 一言断りを入れた。 神は「うん」と頷き、わたしの言葉を待つ。 「『好き』って言うのは、きっと何度でもキスをしたいと思うことなのではないかと、思う..です」 神を見上げるときょとんとして、そして、いつもよりもずっと穏やかな優しい笑みを浮かべる。 「ああ、きっとそうだね。俺もそう思うよ。だから、ねえ。もう1度キスしよう、」 それから再び何度もキスをして、その間、わたしの胸にいくらでも湧いてくる感情が声となって溢れる。 「神、好き」 「ありがとう。俺もが好き。けどね、名前で呼んでくれるともっと嬉しいな」 そう言って再び神が唇を寄せる。 「大好き、宗一郎」 「うん、俺もだよ。これから、もしかしたらたくさんケンカするかもしれないね」 額をくっつけて神が笑いながら言う。 「勝てそうにないな...」 わたしが呟くと神はクスクスと笑う。 「それはこっちのセリフ。困った事があったらちゃんと言ってね。頼りになるよ、俺」 「知ってる」 これ以上にないくらい頼りになる。 「いっぱいデートしよう。休みの日も一緒にいたいから」 「わたしもそう思った」 「じゃあ、もういっかい」 そう言って神の額がわたしから離れる 「キスしよう」 わたしが言い終わった途端神が唇を重ねてきた。 わたしに触れる大きな手は、とても優しくわたしを包み込んでくれる。 今も。そして、きっとこれからも。 |
桜風
08.8.20
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