| 学校から帰ると同窓会のお知らせ葉書がわたしの机の上においてあった。 中学を卒業して以来だから、2年...?いや、1年半。 それは長いのか短いのか良くわからない。 けど、何となく参加してみようかなって気分になって、葉書の『参加』にマルをして返信しておいた。 土曜の夕方からの同窓会。 どう考えても健全なものにはならないだろう。 取り敢えずカラオケボックスで大騒ぎ。人数は思ったよりも少なく、10人程度。 ありゃりゃ、こんなもんなのか? そう思っていたらのっそりと大きな人物が入ってきた。 それは、神奈川の高校に進学した仙道。 うわ、久しぶりだと思うと同時に背の高さに驚く。 中学のときも大きかったけど、絶対また伸びた。 仙道は、入り口に近い空いていたわたしの隣に腰掛けた。 「久しぶり、」 といった仙道にわたしは 「何食べたらそんなに大きくなるの?」 と返してしまった。 一瞬仙道は面食らったように黙って、そして苦笑いを浮かべる。 「再会の挨拶の前にそれ?」 「ご、ごめん...久しぶりです」 謝ると仙道はまた笑う。 「うん、久しぶり。えーと、普通に食事してたら大きくなっちゃった」 おどけたように仙道はさっきのわたしの言葉に返す。 「そ、そっか。いいね」 「そう?」と笑いながらドリンクを選んでいた。 注文を済ませた後、仙道は部屋の中を見渡す。 「てか、アルコールも入っちゃってる?」 「うん。何か好き勝手やってるよ。わたしはいつでも逃げれるように此処キープ」 そう言うと仙道は納得顔で頷いた。 「確かに。面倒な事にならないと良いよな」 「てか、仙道って神奈川の何処に行ったんだっけ?」 「陵南。知ってる?」 「ごめん。全然知らない」 「おかしいなー、結構有名どころだよ?」 「東京でも?」 「...東京までは、うん。知らないかもな。全国に行ってるワケじゃないし」 肩を竦ませて仙道が答えた。 「そうなんだ?あれ?じゃあ、今年のインターハイは?」 無遠慮に聞くわたしに 「残念ながら...」 と仙道は苦笑いを浮かべる。 ああ、悪い事を聞いちゃったんだな... そう思ってわたしはドリンクを口にした。 暫くして仙道が頼んだドリンクが届く。 「じゃ、久しぶりの再会を祝して」 と言って仙道がグラスを持ち上げるからわたしもそれにあわせてグラスを持ち上げ 「「かんぱーい」」 とグラスを鳴らす。 元クラスメイトたちもやっと仙道の存在に気付いたようで皆仙道を囲み始める。 さっきまでそれなりに話をしていたからこの場は譲ることとして、わたしは少し座る場所を変えた。 中学のときもそうだった。 仙道はクラスの中心で。友達が沢山居て、もちろん、女の子も仙道の周りには沢山居て。 『華やぐ』という言葉がいつもついて回っていた存在だったような気がする。 わたしはどちらかと言えば、そこまで目立つ存在では無くて。 結構『普通』って道を地道に歩んでいた。 だから、仙道は正直眩しいというか、どこか距離を感じていたのに。仙道には距離感というものがないのか、結構話をした記憶もある。 まあ、席替えのたびにご近所だったのがその要因のひとつだったのかもしれないけど... カラオケボックスを一旦出て、もう解散にするのかなと思っていたら今度はコンビニで花火を買って公園で騒ごうとかそんな話になった。 大丈夫かなと思いつつも、花火の誘惑に勝てずに結局奇妙な二次会にも参加することにした。 公園にやってきて驚いた事に仙道もこの集団の中に居る。 「大丈夫なの?」 「明日の部活は午後からだから」 そう答えた仙道に、何故か少しだけときめいた。 「でも、仙道。わたしらまだ高校生だから。警察が来たら下手したら補導されるかもしれないし。そんときはダッシュで逃げなよ?バスケやってんだから、問題はマズイっしょ?」 時計を見るとしっかり11時を回っている。 「は?」 「足が遅いから諦めて警察に怒られる」 そう答えると仙道は少し星空を見上げて 「抱えて走れないかな?」 と呟く。 「へ?!」 「や、うーん。無理か...」 「失礼だね、キミは」 無理なのは見たら分かるでしょうに!一々口に出さないの!! 「じゃあ、さ。もう一緒にエスケープしない?」 にこりと微笑んで仙道がわたしの返事を聞く前に腕を引いて歩き出す。 「え、ちょ!!誰かに言わないと...」 「大丈夫だって。さっき公園に行く途中で人数確認してなかったし」 仙道はどうも強引だ。 暫く歩いて遅くまで営業しているハンバーガーショップに入った。仙道が適当に注文してトレイを持って二階に上がる。 何やってんだろう、わたし...? 「も食べなよ。え、コレ嫌いだった?」 「ハンバーガーはさすがに入んないよ。ポテトは好き」 わたしが答えると 「じゃあ、こっちは俺が引き受けるよ」 とハンバーガーの包みに手を伸ばす。 ハンバーガーを頬張りながら 「は何で今回の参加したの?」 モゴモゴと仙道が聞いてくる。 「んー、久しぶりに中学の時のメンツと騒ぎたかったからかな?」 「でも、がいつもつるんでた女子、来てなかったよな?」 「そう。聞いてから参加すればよかったってちょっと後悔したんだけど。まあ、幻の仙道に会えたからいいや」 そう言うと仙道は「何だよ、それ」と笑う。 暫く会話がなく、わたしは窓の外を眺めていた。 今の時間に外に居るなんて中学の時のわたしには絶対にありえないことだ。 今だって、実は凄くドキドキしている。時計を見れば日付が変わろうとしていた。 「俺はさ」 不意に仙道が言う。 顔を向けると口の端にソースをつけているという、少々間抜けな仙道の顔があった。 「仙道、ソース」 と自分の口の端を指差してその位置を教える。 仙道は鏡になったわたしの指した口の端を親指でぬぐってぺろりと舐める。 「で?仙道は?」 さっきの話の続きを促すと 「あ、うん。俺はさ、が参加するって聞いたから帰ってきた」 仙道の言わんとしていることが分からなくて首を傾げると 「に会いたくて帰ってきた」 分かりやすく簡潔にそう言われた。 「は?」 「ねえ。は3年のとき席替えがある度に俺と近かったの覚えてる?」 「うん。凄い偶然があるなって。ビックリしたもん」 「変わってって色んな人に頼んで回ったもん。アレは俺の努力の賜物」 仙道の言葉に、瞳にどきりとした。店内で12時を知らせる時計の音がする。日付が変わったようだ。 それ以上仙道はわたしの気持ちを聞くとかそう言う言葉を口にせず、ずっとわたしの目を見据えていた。 目を逸らしたいけど、何となくここで目を逸らしたら負けてしまうような気がしてわたしも仙道の瞳をずっと見ていた。 ふと、仙道の瞳の緊張が緩む。 「で、話は変わるけど。今度練習試合があるんだ」 「は?」 「うちの学校で。見に来てよ。俺こう見えてキャプテンなんだ」 「副キャプテンの人がかわいそう...」 わたしが言うと仙道は 「俺もそう思う」 と言って笑う。 自分で言っちゃうんだ... 「ちょっと遠いよ」 さっきの話に戻して答えると 「大丈夫。1時間もあれば神奈川だ」 仙道がとても自信満々に言うから 「じゃあ、試合の時間教えてよ」 と言葉が口から出る。 そう言ってわたしは鞄の中からボールペンを出す。そして鞄の中を漁って溜息をもらす。 肝心のメモできる紙がない。まあ、目の前のナプキンにでも書いてもらえばいいか。 そう思ってボールペンを仙道に渡してナプキンを取りに立ち上がろうとしたら腕を掴まれた。 仙道は口でボールペンのキャップを外してわたしの手に文字を綴る。仙道の大きな手がどうしようもなくわたしの心を騒がせる。 「ちょ、くすぐったいよ」 「これで良し!」 そう言ってわたしの手を離してボールペンのキャップを嵌める。 仙道の綴った文字を見てわたしは思わず言葉を失くして仙道を見る。 「返事はその試合が終わった後ね?あ、1時間くらいを遠距離とか言わないようにしてくれると非常に助かる」 飄々としているところは全く変わらなく、寧ろそれは2年前に比べて磨きが掛かった彼の特徴となったようだ。 「じゃ、帰ろうか。送ってくよ」 仙道は立ち上がってトレイを返却場所に置いて振り返る。 「ほら、」 促されて慌てて立ち上がる。 隣に並ぶと全く自然に違和感なく仙道の大きな左手が私の右手を包む。 仙道の左手にすっぽりと包み込まれたわたしの右手には今度の練習試合の日時。そして、 『仙道彰はさんが好きです。知ってますか?』 という、あまりきれいではない文字が綴られている。 知ってますかと聞かれても... 仙道を見上げると何を考えているか分からない表情で歩いている。 何とかしてこのドキドキを倍返ししてやりたい。 今、わたしの頭の中ではそんな何となく不穏なことが渦巻いているのである。 |
桜風
07.7.7
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