| 偶々通りかかった公園でその姿を目にしたときにはわが目を疑った。 二度三度瞬きをしてよくその姿を見る。 「...楓?」 は呟き、首を傾げる。 気のせいだろう、と自己完結をして再び足を進める。 「全く、来るなら来るで連絡入れてよね」 叔母に言われては首をすくめた。 久しぶりにこの町にやって来て、本当はバスにでも乗ればもっと早く着いたはずなのだがどのバスに乗って良いか分からなかったためバスが怖くて歩いた。 お陰で足が痛く、そんなの様子を見て叔母が苦笑をする。 「まあ..どれくらいウチに居られるの?」 「明後日、くらいかな」 「あらまあ。短いじゃない」 「用事があってこっちに来てるから」 「楓が寂しがるよ」 叔母がそう言いながら笑う。 「ああ、楓って今高校生だっけ?」 出された茶菓子に手を伸ばしながら問う。 「そうだよ。ああ、そうか。ちゃんは随分と楓とは会ってないよね。大きくなったんだから。この間は全国大会にも行ったんだよ」 は自分の記憶にある流川楓の姿を思い浮かべた。 「大きくなった...?」 「そう。あの梁に何度も頭をぶつけてるんだよ。いい加減、学習すれば良いのにね」 叔母の言い様に思わず笑い、彼があの梁におでこをぶつけている様子を思い浮かべようとしたが、全く無理な話だった。 「で、その楓は?」 「ああ、公園に居ると思うけどね。今日は部活がなかったから」 は「公園...」と呟きながらお茶をすすった。 暫くして玄関の開く音がしては出迎えに出た。 目が合って暫くお互いはその目を逸らさずにさらに無言で見詰め合った。見詰め合ったというか、にらみ合った。 「何でがうちに居るんだ?」 先に口を開いたのは帰ってきた楓の方だった。 「でか...!」 楓の疑問に応えることなくは思わずそう呟く。 「おめーが縮んだんだろう」 そう言って靴を脱いだ楓はの傍を素通りして家の中へと向かった。 その日の食卓はのためにだろうか、日本食の基本と呼べるおかずが並んだ。 海外生活が長かったは時差を調整できず、朝早く目が覚めてしまった。 部屋から出て縁側にとりあえず腰掛ける。 「何してんだ」 不意に聞こえた声に驚き、肩を揺らした。振り返って見上げるとジャージ姿の楓が立っていた。 「おはよ」 「おー」 そう返事をして楓はスタスタと去っていこうとした。 が、がその足首を掴んだために思わずつんのめる。 眉間に皺を寄せて振り返る楓に「どこ行くの?」と笑顔で彼女は問うた。 「バスケ」 「着いて行く」 「...好きにしろ」 玄関先まで出ると楓が自転車にまたがる。 「え、チャリ?」 が聞くと顎で後ろを差す。2人乗りをするということだろうか。 「今度荷台つけてよ」 マウンテンバイクなので後ろに乗るは立ったままだ。それに文句を言うと 「あんまり乗らないんだからいいだろうが」 と愛想なく言葉が返ってきた。 は肩を竦めて「そうですねー」と返した。 「どこまで行くの?」とが聞くと「公園」と楓が短く言葉を返す。 「ふーん」 暫く走っていると上り坂に差し掛かる。 「降りようか」 「楽勝」 にそう返した楓は言ったとおり軽々と自転車でその上り坂を登りきる。 そんな楓に対しては戸惑いにも似た感覚を覚えた。 「どうした?」 何となくの気配に違和感を感じた楓は問う。 「んー、いや。ほら、わたしの知ってる楓ってこーんなだったじゃない?」 そう言いながらは楓の前に手を差し出して、人差し指と親指の間を3センチくらい開けた。 「いつの話だ」 「けど、何か。ちょっと会わなかったらこんなになっちゃうんだなって思って...」 少しだけ寂しさを覚えた。 「も、変わってんぞ」 不意に聞こえた声に顔を上げる。 「そう、かな...?」 「変わった。から、なんかヤだった」 楓の言葉にはぽかんとする。嫌だった...? 「何で?」 の言葉に暫く楓は黙り込み、 「何か、俺の知らない人みたいだったから」 ポツリと呟く楓の口調が何だか可愛くては小さく笑う。 「笑うな」 「同じじゃん」 なーんだ、という感覚でが返す。 機嫌の直ったに対して楓はまだ少し機嫌が悪かった。 が、すぐに溜息を吐く。諦めたように。 それに気づいては微笑む。 何だ、変わってない。 昔からと行動をしていて楓は諦めたように溜息を吐くことが多かった。しかも、今のようにこれ見よがしに。 それを見て安心した自分に多少疑問はあるけど、それでも嬉しくて後ろから楓に抱きついた。 「くっつくな、。重い」 「照れないの!」 2人はそんな会話をしながら公園へと向かっていった。 |
桜風
08.5.1
08.7.1(再掲)
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