| 「trick or treat!」 学校の靴箱で突然そういわれた。 「はぁ?!いきなり何言ってるの、仙道」 私より遙か上にある顔を見上げるとヘラヘラと笑顔を浮かべている。 「や、今日は何日か知ってる?」 「まあ、一応」 私はそう答えて正門へと向かう。 のろりくらりとついてきて彼は 「で、はお菓子くれないの?じゃあ、いたずらしていい??」 と話を続ける。 「部活は?」 取り敢えず、サクッとスルーしてやろうと思って聞き返してみる。 「ああ、今日は休み」 さらりと言う。 まあ、確かに。今日、これから部活があるならきっと越野が猛ダッシュで仙道を連れにやってくるだろうし。 「で、くれないの?」 またしても催促。 仕方ないから、鞄の中を漁る。 塾の帰りにお腹が空くから取り敢えずいつも何かしら忍ばせている。 「じゃあ、これ」 今日は、キャラメル。 仙道の大きな手にちょこんと薄茶色の立方体を乗せる。 けど、仙道はどうも納得いかなかったように首を傾げながら眉間に皺を寄せている。 「キャラメル嫌い?」 聞いてみると 「いや、結構好き」 と言いながらポイ、と口の中にそれを放り込んでコロコロと音を立てながら口の中でそれを転がす。 今日も塾があるからそこに向かって歩いていると 「あれ、ってそっちだったけ?」 と仙道が足を止めて聞く。 「うん、今日は塾だからこっち」 そう答えると仙道はへぇ、と頷く。 「で、さ。は言わないの?」 仙道が何を言いたいのかちょっとだけ考えて 「あー、言わない。お菓子持ってるし。仙道の口の中に入ってるのと同じ物がまだ何個か」 と答えた。 仙道が態々催促してくるというコトは、どうせ碌な事じゃないと思う。 「え、言おうよ」 「言わない」 そんなやり取りをしつつ、いつの間にか私の塾の前までやってきた。 「何でついて来たの?」 仙道は背が高くて、色んな意味で目立つから一緒に歩きたくないってのが正直なところで。 学校近くならもう有名人だから諦めきれるけど、此処は学校からそれなりに離れているから、仙道はもの珍しい目で見られる。 本人は慣れっこだろうけど、私は慣れていない。 「言ってくれたら帰る」 意味わかんない... 塾の始まる時間も迫ってきてたからもう、置いていくのも何だか気になるから 「じゃあ...とりっくおあとりーと」 適当に言ってみる。 仙道は待ってましたとばかりににっこりと微笑む。 「お菓子持ってないから、こっちをあげる」 そう言って仙道の顔が近付いてくる。 嫌な予感がしつつも、金縛りにあったように動けない。 そして、仙道の顔が離れたら私も動けるようになり、そして唇に残る感触は本物で。 「サイテーーー!!」 思わず、鞄を振り回して仙道にぶつけてやろうと思ったけど、華麗なステップワークで避けられた。 く、悔しいッ!! 振り返れば、塾で同じクラスの友人たちが呆然と立っている。 「あ、ありえない!!」 目の前の仙道は相変わらずニコニコしている。 「じゃあ、塾頑張れよ」 悠々と帰る仙道の背中がやけに楽しそうで余計にムカついた。 |
桜風
07.10.29
07.11.25(再掲)
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