私と一郎は幼馴染。
家もお隣で部屋も向かいあっている。
だから、玄関から出入りすることが少ない。
今日も時間が空いたから一郎の部屋の窓を『一郎窓専用』の長い棒でコンコンと叩く。
「何だよ。」
ガラリと窓を開けて出てきたのは無愛想面の一郎。
「ねえ、そっち行ってもいい?」
「...ああ、別にいいぜ。今時間あるから。」
そう言うとはいそいそと『屋根用』のサンダルを出して窓を越えて屋根の上に立つ。あんまりスペースがないから助走をつけようにもあまり上手くいかないけど、それでも一応助走をつけて、
「とうっ!!」
と言いながら飛ぶ。
本当は屋根伝いの行き来は親たちから禁止されている。
小学生のときには屋根の間から落ちている。幸い家の境は生垣だから打撲で済んだけど、でもそれ以来おばさんが凄く心配している。
そんな経験があったのに、当のはトラウマになることなく、楽しそうに屋根越えをしてくる。
屋根を越えて、窓から体を乗り出して手を伸ばしてくれている一郎の手を掴む。
「よ、」
と言いながら私の手を引く。
サンダルは窓の外できちんと揃えて脱いで。
「おっ邪魔、しまーす。」
「はいはい。」
ざっと部屋を見渡しても相変わらず殺風景。この部屋の娯楽と言えば読書だけ。色んなジャンルの本があって、更に何故か洋書まであったりする。
...本棚の半分は私の部屋に入りきらなかったのを預かってもらってるだけなんだけどね。
並んで本をパラパラ。
ふと、目に入った一郎の手。その手に触れると
「何だよ。」
眉間に皺を寄せて聞いてくる。
一郎の手は、安心する。
本当はちょっと屋根越えは怖いんだけど、越えたあと、一郎の手を掴んだときに握り返してくれるその強さが好き。
「何でもないよ。」
そう言っては再び本に視線を落とす。
ぱさりと耳に掛けていた髪が落ちてきて、また、がそれを耳に掛ける。
「なに?」
「...いや、何でもない。」
思わずその髪に触れていた。
が怪訝な顔をして聞いてきたからちょっと慌てて何でもないような素振りをした。
「そ?」
そう言ってが本を読み始め、俺も自分の持っている本に視線を落とす。
手を伸ばせば、すぐにあなたに届く距離で。
手を伸ばせば、すぐにおまえに届く距離で。
――― それが一番心地いい ―――
短い〜。
でも、こういう幼馴染以上恋人未満でお互いを想ってる関係って好きですvvv
しかし、怖いなら玄関からお邪魔したらいいのに...
きっと両家の親たちはこの2人の屋根越え、気付いてるでしょう。
その上で、仕方なく黙認。いい親だ(笑)
桜風
05.7.18
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