「ほらほら、。愛しの王子様が教室の前、歩いてるよ。」
友達にそう言われて思わずそちらを見ると、宮田くんがいた。
「だから、何で宮田くんが私の『愛しの王子様』なわけ?」
いい加減面倒くさくて聞いてみると、
「あの宮田くんに身を挺して守られたら彼を好きにならない女はいない。もし、そんな子がいるならそれはきっと女じゃないのよ、うん。」
何やら、もの凄ぉーく勝手なことを言い切っているような気もするけど、いちいち返していたらまだ話が続きそうだからそのまま大人しくしていた。
つい、数週間前、彼女が言うように私は宮田くんに守ってもらった。
私が渡り廊下を歩いていたら、外でサッカーをしていた団体の誰かが蹴ったボールが飛んできた。
咄嗟の出来事で体を強張らせて固まっていたらそのままフッて目の前が暗くなって、あったかい体温を感じた。
ゴッ!ってちょっと痛そうな音がしたけど私はどこも痛くない。
あったかいのが離れて
「ちゃんとまっすぐ蹴ろよな、サッカー部!」
そう言いながらボールを投げて返す。
さ、サッカー部の人が蹴ったボールが当たるところだったんだ...
そう考えていると、
「大丈夫か?」
顔を覗きこんで声を掛けてきたのが宮田くん。
「あ、はい。ありがとう...」
「ああ。」
短く返事をして宮田くんはそのまま歩いていった。
そのあと、一部始終を見ていた私の友達が『宮田王子』って騒ぎ出し、いつの間にか私の『愛しの王子様』にまでなってしまった。
宮田くんにとってもかなりのいい迷惑だと思うんだけど...
だからいつも私は彼女たちに言う。
「私は宮田くんのこと、好きじゃない。」
宮田くんは小学校のときから知っている。
でも、私の通っていた小学校はクラスが多くて同じクラスになったことはない。運動会でも一緒になったことがなかった。
中学に上がって、やっぱりクラスが多いから同じクラスになったことがなければ、一緒に授業を受けたことがない。
そして、高校。
やっぱり同じクラスになったことはないし、体育や芸術、すべて一緒になったことがない。
そんな私でも宮田くんのことは知っている。
勿論、人が噂をしているのを耳にするくらいだから本当はどうなのか分からないけど、でも、あの目立つ容姿と実は成績がいいっていうのとかで存在感がある。
今日は友達皆が食堂。私はお弁当で皆に食堂で食べないかと誘われたけど、食堂は席が少ない。お弁当の私は食堂利用者の誰かに席を譲ることにして、天気もいいから屋上に出た。
この校舎の屋上。実はドアノブが壊れていてドアを開けるのにちょっとしたコツがいる。私はそれを部活の先輩に教わったから知っているけどそれを知っている人は少ないから、高い確率でその屋上のスペースを独り占め。
ドアを開けると真っ青な空が広がっていた。
日陰に入ってお弁当を広げて、
「いただきます。」
独りで食べると味気ないときもあるけど、今日はとてもお弁当が美味しい。
「美味そうだな。」
ふと上から声がして仰ぎ見ると、彼も体を起こして降りてきた。
「宮田、くん...えっと、食べる?」
「いや、いいよ。珍しいな、独りだなんて。」
「何で、名前...」
「俺だって、11年学校が同じだった奴の名前くらい覚えてるさ。例え、一度も同じクラスにならなくてもな。」
意外な宮田くんの一言に私は驚く。私は宮田くんみたいに目立つわけでもなく、可もなく、不可もなくといった平凡で群集に埋もれているタイプだと思う。
それなのに、私の名前を知っていることにも驚く。
「...百面相してるぜ。」
そう言って宮田くんが楽しそうに笑う。
そんな宮田くんの表情なんて見たことがなかったからどうしていいか分からなくなる。
そんな私を気にすることなく宮田くんは私の隣に腰をおろした。
当然、今まで一度も隣に座ったことなんてないし、きっとこれからも無かったはず。
それなのに、今私の隣には宮田くんが不自然なことなく座っている。
「箸が止まってるぜ?」
宮田くんに言われて慌てて、手を動かす。
私は緊張していて、そして、動揺していた。
ふと、唇に温かいものが触れる。
頭の中が真っ白になって、思考が停止する。
「さっきの続き。そして、俺はずっとが好きだったんだよ。」
そう言って宮田くんはすくっと立ち上がって屋上から出て行った。
残された私の耳にはさっきの宮田くんの言葉が繰り返される。心臓の音が大きくなって、顔が熱くなる。
私も、宮田くんと同じだった。
私は慌てて彼を追いかけた。この秘めてきた想いを伝えるために。
好きじゃない、なんて言っても本当は言葉では言い表せないほど、...好き。
お前は誰だぁ!!
声を大にして叫びたい程の、ニセ一郎。
同じクラスの人の名前ですら、覚えてなさそうなのに...(笑)
桜風
05.12.24
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