| 門をくぐったらそこの空気は張り詰めていた。 肩を竦めて歩き出したにドンと誰かがぶつかる。 「すまない」と謝罪されて、「いえ」と返す。 見上げると綺麗な顔をした男の子だった。 「イザーク!」と別の男の子が声をかけている。彼の名前はイザークというらしい。 アカデミーへ入学する人たちは大体同じくらいの年代だから、きっと彼も自分と同年代なのだろうと思っては教室に向かった。 入学して数日経ってあのイザークと呼ばれた少年がエザリア・ジュールのご子息だと言うことを知り、彼の名を呼んでいた友人もまた、親が最高評議会委員らしい。 たしか、エザリア・ジュールは急進派だから息子が戦場に出ることに抵抗はないかもしれない。取っている立場上。 しかし、母親の心情としてはどうなのだろうか... ある日、のクラスとイザークのクラスが合同演習を行うことになった。 はメカニッククラスで、パイロットクラスのイザークたちが乗る機体の整備を行うことになる。 演習場で何日かのキャンプを張っての演習だ。 班分けをされてはイザークと同じクラスになった。 彼はきっと覚えていないだろうな、と思いつつ他の班員と同じように「初めまして」と挨拶をした。 彼もまた「初めまして」の挨拶で返した。 作戦行動の時間は決められている。 それ以外は、手が空けば休憩時間だ。 は気になった箇所があるので、パイロット達のMSの整備にその時間を使った。 「」と声を掛けられて振り返るとイザークが立っていた。 「休まないのか」と声を掛けられる。 「気になるところがあるから」と返すと「そうか」と言ってイザークはその場にストンと座った。 「これ」と言ってドリンクボトルを差し出してくる。 「くれるの?」 「ああ。集中力が途切れた中で整備をされても心配だ」 と言われてちょっとカチンと来た。 「ご心配なく」 素っ気無く返すとどうしたことか、「あ、いや。言葉が悪かったか」とイザークが少し慌てている。 仕方ないので、少しの時間だけ休憩することにした。イザークが差し出しているボトルを受け取って口をつける。 「初めまして、じゃない」 「はい?」 突然のイザークの言葉には聞き返した。 「アカデミーの入学式の日、俺とは出会っている」 「何だ、覚えてたの?」 少し驚いてが返す。 の反応にイザークも驚いたようで「覚えて..っても覚えていたのか?!」と声を漏らす。 「うん。けど、そっちが覚えていなかったらただの変な人になりかねないから」 肩を竦めていうに「そうか」とイザークはちょっとだけしょんぼりした。 そういえば、とは思い出す。 今回の演習で同じ班になったときからイザークが何かもの言いたげにに視線を送っていた。 それは、つまり... 「もしかして、ずっと訂正したかった?」 とが指摘する。 「う..うるさい!」 ツンとそっぽを向いたイザークの耳が少し赤くては思わず笑う。 「笑うな」とイザークが抗議をするが、一々反応するイザークが更に可愛くての笑いは止まらない。 急に腕を引かれて唇を塞がれる。 暫くしてほんのわずかな時間、イザークの唇から解放された。 「好きだ」と囁くようなイザークの声は、の唇を塞いで消える。 順番が逆だろう、とはどこか冷静に思った。 次に唇が離れたときにはそれを指摘し、説教をしなくてはならないだろう。 だが、とりあえず今は大人しくイザークの行動を伴っている告白を静かに受け入れることにした。 |
桜風
11.8.1