| クラスにひとりくらいいる。 いや、ひとりいたら充分だ。 仙道を見ながらはそっと溜息をついた。 成績..そこまで良い訳でもない。 素行..これまた微妙。 だが、学校でもしかしたら一番の人気者。それが自分のクラスにいる仙道彰だ。 中学までは東京に居たと言う。だが、高校に上がるに当たって、我が陵南高校がバスケット部員として獲得した特待生..らしい。 特待生制度がウチの学校にあったのは知らなかった。 まあ、自分に全く関係のない制度だから知らなかっただけなのかもしれない。 そして、ことはこのクラスの委員長という面倒くさい役を皆様の意思で欠席中に押し付けられた。 全く、迷惑な話である。 しかし、望む望まざるとに拘わらず『クラス委員』になってしまったのだからそれを全うしなくてはならない。 「仙道!宿題!!」 「えー、忘れた」 「仙道!授業中に寝ない!!」 「えー、寝ちゃったもんはしかないじゃん」 意外と真面目なは結構不真面目な仙道に構わずにはいられない。 「適当なところで妥協しちゃいなよ」と友人達は言うのだが、それが出来ない性格のは仙道に散々振り回されている。 「仙道!」 屋上に上がってが叫ぶ。 「なに?」 ゴロリと寝転んでいる仙道が振り返った。 「またサボったなー!」 「まあまあ、いいじゃん。の成績が下がるわけじゃないんだし」 そう言いながら体を起こした。 「当たり前でしょう。何故わたしの成績が仙道のサボリに左右されなきゃならないの?」 真顔で返されて仙道は苦笑した。 「だよねー」 「...仙道は、さ。何でサボるの?」 「お?学校の先生みたい」 からかう仙道をキッと睨んで答えを促す。 「さあ?なんだろうね」 そう言って立ち上がる。戻らなかったら懇々と説教されそうだし。 仙道が教室に戻るそぶりを見せたのでは安心したように息を吐く。 いつも怒った表情を見せているは、自分が彼女の言うことを聞くと表情が緩む。その瞬間を目にするたびに仙道は次は何をしようかな、と思うようになったことを思い出す。 いつもキツイ表情をしている彼女が優しい表情を見せるその瞬間が実は好きなのだ。 その表情を見たかったらまずは彼女に怒られることをしなくてはならない。 「あ、そうか」 ポツリと仙道が呟いた。 「...仙道?」 が声をかける。 「や、うん...」 自分の考えを自覚して、胸に手を当てるとドキドキと鼓動が少し早い。 「どっか悪い?」 心臓を押さえているように見えてが慌てて声をかけた。 「や、うん...」 先ほどと同じ反応には眉間に皺を寄せる。 「どうしたのよ、気分が悪いの?」 「俺、が好きみたい」 真正面切っての告白。 だが... 「『みたい』ってなによ、『みたい』って...」 どうにも告白された感じが半減する。 相手が仙道ってことも加わって、からかわれているとしか思えない。 の言葉に苦笑した仙道は彼女の手を取って自分の胸に当ててみた。 「ほら、ドキドキしてるだろう?」 突然手を取られてそれを仙道の胸に当てられたは目を丸くしてやがて顔を赤く染める。 「それ、反則でしょう」 「今のの表情ほどじゃない」 そう返されては顔を背ける。 何とかして顔の温度を下げようと思うのだが、掴まれた腕の、自分以外の体温を意識してしまってどうにも出来ない。 「、めちゃくちゃ可愛いんだけど」 「ばっ!...気のせいよ。そう、気の迷い。それだ!気の迷い!!よーし、気の迷いだー」 暗示をかけるかのごとく『気の迷い』と何度も口にする。 「けどさ、こんだけドキドキしてんだから。やっぱり、心臓は、体は正直だよ。口は、意地を張れるけどさ」 仙道はそう言って困ったように笑う。 仙道のその表情は今まで見たことがないそれで、『気の迷い』と言う単語がどこかに吹っ飛んでしまった。 ドキドキが感染した。 それでも、それを気づかれたくなくて仙道に背を向ける。 「教室に戻るよ」 「そうだね。ところで、は。俺のことどう思ってるの?」 仙道の言葉には足を止めた。 「クラゲ!」 勢いよく振り返ってそういった。 言われた仙道は目を丸くしたけど、やがて苦笑した。 「えー、哺乳類で喩えてよー」 笑いながら返す仙道に「考えとく」とは振り返らずにそう返した。 |
桜風
10.12.1