| 屋上に座って遠くを眺める。 頬を撫ぜる風が冷たくなってきた。 それでも・にとってそこは特等席で、鼻の頭が赤くなっているが気にしない。 ガチャリとドアが開いた。 「ー?」 は深く溜息を吐いた。 またか、と。 あたしはいませーん、と心の中で呟きながらこっそり、身を隠すように物陰に身を潜めた。 しかし、「みーっけ!」とひょっこり顔を覗かしてきた彼がにへらと笑う。 「...あたしはいませーん」 遠い目をしてそう言う。 何だってこんなに執拗に追い掛け回してくるのか... ひょっこり顔を覗かせたラスティ・マッケンジーと、はこのアカデミーに入ってから知り合った。 昔からの知り合いで、何かのドラマのようにこのアカデミーで再会したとかそういう間柄ではない。 現在知り合って1ヶ月も経っていない。なのに、こんなに懐かれてしまった。 何故だろう... 「ねえ、なんでだと思う?」 真顔で以前からの知り合いで、ただ今クラスメイトに聞いてみた。 「お前が猫派だからだろう...」 確かに、ラスティは猫っぽい。いやいや、関係ないでしょう。 思わず突っ込んだ。 「あのさー...あれ、本当に何??」 「ラスティはしつこいぞ。...頑張れ」 「無責任に励ますな!」 反射で突っ込んだ。 第一、自分が猫派なら、ラスティのこと可愛いとか思うはずだ。 残念ながら今のところその真逆の感想である。 は諦めたようにはぁ、と溜息を吐いた。 「ねえ」 ニコニコとやってきた。いつもどおりのことだ。 「オレ、好きだなー」 「へー...」 似たような言葉なら彼に出会ったときから毎日のように聞かされているので、既に真実味に欠けている言葉だ。何と言うか、心が籠もっているようには思えない。 「じゃあ、キスして良い?」 「は?!」 「その沈黙は、『Yes』ってことだよね?」 そう言ってラスティはにキスをした。 聞き返しただろう!沈黙じゃない!! 心の中で盛大に突っ込む。 気を取り直したは、ラスティをキッと睨んだ。 とりあえず今回のは、猫に舐められたと思うことにした。 「...ちょっと、そこに正座しなさい」 「えー、『そこ』ってコンクリートの上だよ?痛いよ」 「とっとと正座!!」 鬼の形相で言うにラスティは肩を竦め「はーい」と返事をして大人しく正座をした。 そこから小一時間、はラスティに恋愛のイロハを説明する。 それはつまり、彼女の恋愛に対する理想を口にしたことになり、お陰で今後のラスティのアプローチが少し変わった。 少しだけ、控えめになった。 本当に『少し』だけだが... |
桜風
11.2.1