| 悲しいことがあるとわたしは隣の家に駆け込み、幼馴染の前で泣いていた。 けれど、そういうのは年を重ねていくと出来なくなるのもだ。 相手が『他人』になってしまうからか。それとも、大人は泣くことが恥ずかしくなるからか... 彼も察してくれているようでわたしがキツイとき、泣きたいときには距離を置いてくれる。 意外と、察しの良いヤツなのだ。 「ディア」 久しぶりの帰省。 学校に通うために家を出たわたしは幼馴染の顔をそれこそ1年ぶりくらいに見たことになる。 「おー。久しぶりじゃん、」 彼は変わらない、ちょっと軽い笑顔で手を上げた。 「元気そうね」 「ま、お互いな」 肩を竦めてそういう。 「お袋、喜ぶと思うけど?」 そう言われた。ディアの家に招かれたということだ。 「じゃあ、ちょっとだけ」 そう言うと「おう」とディアが笑う。 「おばさん!」 家に入って声をかけた。 振り返ったディアのお母さんは目を丸くしてそして歓迎してくれた。 「お袋、が潰れる」 「ああ、女の子が家にいるって良いわ。華やかだわ!」 今来たばかりなのにそういわれた。 「ウチにはむさいのしかいないから」 「そんなむさい息子はモテモテだけどな」 ちょっとムキになって言い返す彼に苦笑を漏らす。 「いつまでこっちに居られるんだい?」 「3日後には戻りますよ」 「ああん、寂しい...代わりにディアッカ、あんたが行きな」 「俺で良いなら行くけどね」 そう適当に返したディアッカは「んじゃ、ごゆっくり」と言って家を出て行く。 ああ、そうか。さっきディアは家の外にのだから出かけるところだったのかもしれない... ちょっと寂しいなと思いながら「いってらっしゃーい」と声をかけておいた。 暫くしてこの家に来客があった。 おばさんが出て対応したのだけど、慌てて戻ってきて「病院に行くわよ」とわたしの腕を引いていくのだ。 「な、何?!」 「ちゃんのご両親が事故に遭ったのよ」 一瞬何を言われたのか分からなかった。 だって、さっき話をしたもの。 「ちょっと2人で出かけてくるから」って言われて「はいはーい」って適当に返して... 待合室に座ってドクターを待つ。 隣に座るおばさんが「大丈夫だからね」と何度も声をかけてくれたけど、それに対してわたしはきちんと言葉を返せない。 どうしよう...どうしよう... 膝の上に手を載せて俯いているとその手に別の手が重なった。褐色の、見慣れた手。 「呼吸、忘れてるぞ」 顔を向けると苦笑しているディアの顔。 言われて気が付いた。息を吐いて、吸う。 「あれ?」 「ん?」 出かけていったはずなのに...どうして... ディアはまた苦笑してわたしの頭の上に手をポンと置いた。 「大丈夫だから」という。 「怖くて泣きたかったら泣いて良いぞ」 ビックリすることを言われた。 わたしが泣くとディアも居なくなるのに... 「今日は、がどんなに恥ずかしいとか思っても離れてやんないから。だから、安心しろよ」 「...変なセリフ」 そう呟くと「だな」とディアは苦笑した。 |
桜風
10.11.1