11. 跳ね上がった心で気付いた





あれ?

は首を傾げた。

そして、そのまま駆け出す。

「星月くん?!」

振り返った彼は間違いなく、星月琥太郎だった。

思わず指折り数えながら立ち止まった彼の元へと向かう。

..だよな?」

覗うように彼が確認してきた。

「わー、名前を覚えられているとは思わなかった」

笑いながら彼女が言うと少しばつが悪そうに彼は視線を外す。

「元気そう。今何やってるの?」

パタパタと手で扇ぎながらが問うと「教員」と返された。

「え、先生?!」

「保健医だよ」

保健医って教員なのだろうか...

「そっか。あ、今更だけど、久しぶり」

「久しぶりだな」


と星月は高校時代の同級生だ。

同じ委員にもなったことがあるので、他のクラスメイトよりは多少仲が良いと思う。

日差しの強い午後に立ち話は少し避けたほうが良いと思ったらしい星月の提案により、最寄のカフェへと入った。

は何をしてるんだ?」

「美人教師」

「その形容詞は必要か?」

真顔で指摘されては拗ねる。

「あはは、嘘だよ。別に付いていても悪くない」

「星月くん。時には心にもない褒め言葉は必要だよ?」

「俺は嘘が苦手なんだよ」

「そうかもね」とはクスリと笑った。

高校を卒業して以来だから、もう10年。

10年ぶりに見た後姿で星月だと解った自分が少々怖い。

?」

「ん?何??」

「人の話を聞かないところも相変わらずか」

「うるさいなー。で、何だっけ?」

「教師って言ってたけど、何の教科だ?」

「ああ、高校数学」

の返事を聞いて星月は高校時代を思い出す。確か、数学だけは彼女に勝てなかった。

意地の悪い問題ほど、燃えると彼女は良く笑いながら言っていた。

「意地悪い問題、出してるのか?」

からかいながら言うと「まあねー」と弾んだ声が返ってくる。

って、地学も好きじゃなかったか?」

「天文はね。地学って、天文以外もあるでしょ?地層がうんたらって」

ああ、そうか。

「だから、パス。それに、趣味は趣味で終わらせたいタイプなの」

高校時代、何度か一緒にプラネタリウムに足を運んだことがある。上映が終わって外に出たとき、彼女はいつも満足そうに笑っていて、その後、1時間はその上映内容について話をしていた。彼女が一方的に。

。今から時間あるか?」

「ん?あるよ」

時計を見て彼女は頷いた。

「近くに、新しくプラネタリウムが出来たんだ」

「行こうよ」

すぐさま彼女が反応した。

カフェを後にして、徒歩数十分のところにある新築のプラネタリウムに向かった。


「うわっ、最新設備」

憎憎しげに彼女が言う。

「何がいけないんだ?」

「あまりテクノロジーが好きじゃないだけ」

矛盾の多い...

2人分のチケットを購入して席についた。

今の上映はこれから訪れる秋の星空についてのことらしい。

秋の星空は静かで好きだ。

人工的な星空を眺めながらふと、隣に座っているに目を向けると目を輝かせていた。高校を卒業して10年経った。10年もたてば表情は変わってくるだろうと思っていたが、何ひとつ変わっていない。

テクノロジーが好きではないと言ったのに、そんな表情をするんだな、と星月は苦笑する。

上映が終了し、プラネタリウムから外に出ると残暑の日差しが目に刺さった。

「痛いー」

同じように思ったらしいが呟いている。

今度はファミレスに入って先ほど見たプラネタリウムについて語る。

くるくると表情が変わるは見ていて飽きない。

「悪い」と断ってポケットに入れておいた携帯を取り出しながら席を外した。バイブ機能にしていたのだが、電話が掛かってきたようだ。

応じると呼び出しだった。

「悪い、

席に戻って彼女に謝罪する。

「うん、わかった」

頷いた彼女は少しだけ寂しそうな表情を浮かべている。

「すまないな」ともう一度謝ると「良いって」と彼女は笑顔を浮かべる。

「今日はありがとう。久々に星について語れる時間が取れて嬉しかったよ」

そう言って微笑んだ彼女の笑顔に思わずどきりとした。

「あ、」と声が漏れる。

「星月くん?」

「あ、いや。今度はホンモノの星空を見に行こう」

「ホント?!」と彼女の目が輝く。

「ああ。今度連絡する」

そう言って星月はその場を後にした。

「まったく...」

逃げるように出てきてしまった自分に呆れていた。

しかし、「悪くない」と呟いた星月は穏やかな表情を浮かべていた。









桜風
11.8.1