16. 人気者の君に妬く





星月学園、唯一の女子が西洋占星術科にいる。名前はという。

元々男子校だったこの学校が女子の受け入れを始めてからまだ歴史は浅いが、そんな歴史の中で最初の女子だ。

男子校と覚悟して入った男どもには一筋の光。

容姿は、中の上もしくは上の下。まあ、見る人によって評価は違うが概ね良い。

頭は勿論、この学園に入れたのである程度のレベルはあるし、性格もさっぱりしていて付き合いやすい。

と、いうわけで彼女は学園で人気者だったりする。そう、たとえ彼女に恋人がいてもお構いなしだ。

それを目にするたびに彼氏の不知火一樹は面白くない。

勿論、彼女の交友関係に口を出したくない。出したくないが...

「限度ってもんがあるだろうがぁ...」

唸るようにそう言って不知火は彼女の元へと足を向けた。

今回は少し困った様子の彼女だ。

」と心地よい、自分の一番好きな声に呼ばれて笑顔で振り返った彼女は固まった。

「ちょっと来い」

「え?あれ??一樹?どうしたの???」

突然の強引なこの行動には困惑していた。ちょっと怒ってるっぽいし。

「ははっ、一樹ったら仕方ないな」

金久保の爽やかな笑顔を背に受けながら、は不知火に引きずられていった。


生徒会長である不知火がが向かう先といえば生徒会室。

部屋に入り、鍵を閉める。

「あ、あのー。一樹??」

「まったく...」と不機嫌に呟いた不知火がやっと手を離してくれた。

「痛かったんですけどー?」と文句を言ってもそれに対する謝罪は無い。

「かーずきさん?」

不知火の腕にぶら下がるように絡まってその顔を見上げる。

「一樹でも拗ねるんだー」

くすくすと笑いながらが言う。

「うるせぇ」とそっぽを向いた不知火が何だか可愛い。

いつでもどこでもゴーイングマイウェイなオレ様の不知火が拗ねているのだ。

「一樹、可愛い」と笑っていると、唇を不知火のそれで塞がれた。

目を丸くして驚いた様子のに対して不知火は少し気が晴れたのか「へっ」と笑う。

「不意打ち」

と文句を口にすれば

「良いんだよ」

と何がいいのか分からないが彼が自信満々にそう言う。

「しかし...ったく」

と先ほどのことを思い出したのか不知火はまた少し不機嫌になった。

「どうしたの、一樹」

「どいつもこいつもに...」

ブツブツと呟く。

「けど、これって『珍獣を見つけましたー。珍しいから餌でも与えとけ!』ってレベルだと思う」

「大抵のヤツはそうだけど、そうじゃないヤツもいるんだ!」

『珍獣』とか『餌でも与えとけ』って箇所は否定してもらえると思ったんだけど...

そう思いながらもは肩をすくめる。

「まあ、夢くらい見せてあげても良いでしょう」

「おまえなぁ...」と唸って溜息を吐く。

「何で本人がそんな暢気なんだ?」

「そりゃ..わたしには一樹がいるから??」

しれっとそう言うに不知火は肩を落とした。

「あのなぁ...このタイミングでそんなかわいいことを言うほうがよっぽど不意打ちってもんだぞ」

心底困ったように笑う不知火にはずいと顔を近づけ、驚いた彼は体を仰け反らした。

「あのね、一樹。わたしだって一樹が人気者だから面白くないって思うときあるんだからね!」

「俺が、人気者?」

「そうでしょう?まったく、自覚ナシですか。あーそーですかー」

突然目の前でが拗ね始めて不知火は少し困ったが、腕を伸ばして彼女を抱き寄せる。

「だから、そんな可愛いこと言うなよ」

の額に唇を落とす。

「俺にはお前だけだって」

「それ、浮気した男が言うセリフナンバーワンらしいよ?」

「へ?え?いや、違うぞ?!これは俺の本心だ」

突然慌てる不知火には笑ってその背に腕を回してギュッと抱きつき、「わたしのイメージの中だけど」と付け足す

その言葉に「お前なぁ...」と呆れた不知火は苦笑を漏らし少し強く抱きしめ返した。









桜風
11.4.1