19. 指折り待つ日





キュキュッとカレンダーの日付に『×』を書いていく。

そして、次に『×』がつくのは、来月。

つまり、本日は月末と言うことだ。


「おお〜!」

『毎日キュキュッと×印』をこつこつと繰り返していたは感嘆の声を上げた。

いやはや、感慨深いものだ。

「何してんだ?」

「今日の『キュキュッと』よ、紳一くん。そろそろ時間ね」

振り返って答えると『紳一くん』こと、牧紳一の眉間に皺がよる。

「はいはい」と呟きながら玄関に向かった。

「というか、もう今更な気もするがな」

「いいから!これはわたしのケジメです」

ニコニコと笑って彼女が言う。

肩を竦ませて「じゃ、おやすみ」と挨拶をして彼女の頬にキスをする。

なれたものだ、と自分で思った。

ドアを閉めてエレベーターホールに向かった。


彼女は自分の高校の卒業生で、既に社会人と呼ばれる立場の人だ。

出会った時にたぶん、今思えば一目ぼれで、話をしていくうちにどんどん好きになって...

いやはや、彼女を口説いていたときの自分の必死さと言ったら...

思い出して苦笑が漏れる。

付き合うことに、一応は頷いてくれたが、彼女としては自分が高校を卒業するまでは、と何だか分からないボーダーラインというものを持っているらしい。

今年のカレンダーを購入した途端

「卒業式はいつ?」

と目を輝かせて聞いてきた。

3月の頭、と答えると「むむむ、」と彼女は唸ったのだ。

理由を問うと

「あと2ヶ月もある...」

と言うのだ。

「もう卒業は決まってるし、進路も決まってるんだがな...」

そう呟いても

「君はまだ高校生!」

とビシッと指差していわれた。

以前、試合中に「君、高校生?」と聞かれたこともあるくらいだから、もう適当なところで大人としてみてもらいたい。

まあ、あの時の一言は多少へこみもしたが...


ふと、空を見上げる。

意外と星が見えるものだな...

少し前までの刺すような寒さが段々柔らかくなってきている。

春に近付いている証拠だ。

早く卒業して彼女のボーダーラインとやらを超えてみたい。けれども、充実した高校生活のお陰で何となくもの寂しさも覚えているのがここ数日だ。

にそう話せば

「それが『青春』ってやつよ!」

と得意げに言われそうなので、口にしようとは思わないが、彼女もそんな寂しさを抱いていたのだろうかとちょっとだけ気になった。

「しかし、高校を卒業してもたしか3月いっぱいは高校生って括りじゃないのか?」

昔聞きかじった知識だから正しいかは分からないが...

まあ、彼女が気づいていないのだ。態々言う必要も無いだろう。

「あと...」

卒業式までの日数を指折り数える。

きっとこの気持ちも今だからあるんだろう。だったら、それなりに楽しんでしまおう。









桜風
11.3.1