36. それは反則





チラチラと雪が降ってきた。

足を止めて空を見上げて手を広げ、その雪を受け止める。

すぐに消えるそれを少し寂しく思う。

?」

声を掛けられて、少し先を歩く村越に駆け寄った。



日本のプロフットボールリーグの1部のチーム、ETU。

そのチームのキャプテンである村越は、本日オフのため買い物に出ていた。

自分の買い物ではなく、今自分に向かって駆けてきている彼女に付き合っての買い物だ。

普段、余り時間が取れないので出かけるときは基本的に彼女の行きたい場所に行くことにしている。

しかし、彼女がリクエストする場所は意外なことに村越の行きたい場所に近かったり、行きたい場所そのものだったりする。どうして分かるのだろうかと驚かされることがしばしばだ。

今日だって、自分が行きたいと思っていた場所を彼女が口にした。

だから、そこに向かっているところなのだが、彼女が突然足を止めたので驚いた。数歩先に進んでしまった。

背が高めの自分に対して、背が低めの彼女では歩幅が随分と違う。なるべく合わせてはいるが、たまに気が付いたら彼女は後方にいる。


が駆け寄ってくるのを待って「どうかしたのか?」と声をかけると、彼女は両手を広げて嬉しそうに空を見上げた。

「ね、雪が降ってきたよ」

言われて村越は空を見上げた。

「ああ、本当だな...」

呟いてを見下ろすと、広げた彼女の手が目に入る。

彼女は手袋をしない。

以前、「手袋って何でこう..大きいのかな?」と呟いていた。

彼女は手のサイズに合うもの、少なくとも自分が納得する大きさのものがないので、買わないのだと言う。

少し大きめのものが多く、結局手袋を外して色々することになるからそれが面倒くさいのだとか...

そういうものだろうか、と思うのだが彼女のその拘りは幼い頃からのものだと言っていた。

「寒いか?」

そう言って隣を歩くの手を取って自分のコートのポケットに突っ込んだ。

驚いた表情を見せただが、「あったかいね」と村越を見上げたはニコリと微笑む。

「...お前、それは反則だろう」

肩を落としたようにそういう村越を見上げたはきょとんと首を傾げる。

その表情に村越は「お前はそのままでいいよ」と苦笑した。


「村越くんはいつも手があったかいね」

の手が冷たいだろう」

「じゃあ、村越くんの手があったかいから丁度バランスが取れて良いね」

そう返す彼女に「そうだな」と村越は返し、ポケットの中で繋いだ彼女の手を少し強く握った。









桜風
11.2.1