| イザークには3歳年上の従姉が居た。 彼女の名前は、・。 決して親戚づきあいが盛んというわけではないジュール家だが、はエザリアのお気に入りのために結構ジュール家に遊びに来ていた。 イザークの好きな日本で言うところの『立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花』という優雅さと凛とした聡明さを兼ね備えた存在が、だ。 しかし、イザークはしばしば思う。『3歳』というのは意外と近いようで遠い... 彼はいつも必死に彼女の後を追いかけていた。それなのに、イザークの必死さに比べて楽そうに軽やかに歩み、そして、イザークを近づけさせない。 ある日、イザークが自室から出て階下に向かうと聞きなれた声が耳に届く。 「!?」 そこには家の者と話をしているの姿があった。 「ああ、イザーク」 振り返って微笑む。 何だ?今日来ると言っていたか?? そんなことがぐるぐる回るが、対するはいつもどおりだ。 「叔母様に会いに来たんだけど...」 「ああ、さっき評議会の非常招集が掛かったからな」 「みたいね」 家の者から聞いたのだろう。は苦笑いを浮かべて頷いた。 折角来たのだから、少しエザリアを待つというに付き合ってテラスで紅茶を飲む。 「何でまた、今日は?」 「うん..特に理由はないの。このコロニーに来る機会があったから。だから、叔母様とは約束をしていたわけではないのよ」 やはり困ったように笑う。 「そうか」とイザークは気にしないフリをしてそのままカップに口を付けた。 しかし、態々非常召集を掛けるくらいの問題が生じたということは、逆を言えばそんな簡単な問題ではないということだ。 実際、は2時間近くジュール家に滞在したが、エザリアが帰宅する気配が一向に無い。 イザークはその間、自慢の庭園を一緒に散歩したり、またお茶をしたりとイザーク的には中々良い時間が過ごせたが、結局は帰ることにした。 「泊まっていけば良いだろう?知らない仲でもないんだし」 イザークが勧めてみるが、 「明日、学会があるの。このコロニーからは時間までに会場へはいけないわ」 も残念そうに首を振る。 「じゃあ、送ろう」 そう言ってイザークは一旦部屋に戻りエレカのキーを取ってきた。 車の中で話をしているとあっという間にステーションへと到着した。 「じゃあね、イザーク。ありがとう」 「ああ、気をつけて帰れよ」 あっさりと去っていくにそれ以上何も言えずにイザークは溜息を吐いた。 ステーションへと向かう途中、何だか話を盛り上げる事ができなかった。 の前ではどうしても上手く行かない。 「これだから、お子様は」 ハンドルに腕を乗せ、それに顎を置いて自嘲気味に呟いた。 「案外そうでもないよ」 不意に窓の外から聞こえた声にイザークは驚いて顔を上げる。 そこにはさっきステーションに入ったはずのが顔を覗かせていた。 「!?」 「ごめん、忘れ物。シートにキー落ちてない?」 何でもないことのようにはそう言う。 「え!?あ、ああ...これか?」 慌てて助手席を探すとが言ったとおり鍵が落ちていた。 「良かった、シャトルに乗る前に気付いて。野宿するところだったわ」 笑いながらは受け取り、 「じゃ、イザーク。また...」 気のせいか少しだけ名残惜しそうに笑うに 「今度、会いに行っても良いか?」 咄嗟に出た言葉でイザークが聞くと 「歓迎しますわ」 と満面の笑みでが応える。 イザークは驚いて眉を上げ、すぐに微笑む。 「じゃあ、連絡する」 「待ってるわ」 は軽く手を挙げて応え、今度こそステーションの人ごみの中に姿を消した。 |
桜風
08.5.1
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