| 午前の講義が終わった歌仙は学内のカフェテラスでサンドウィッチとコーヒー、そしてデザートのプリンを購入した。 正門前で待っていると鶴丸が駆けてきた。 「すまん、長引いた」 「いいけど。どうやって主を探すんだい?」 「俺に任せろ」 そう言って鶴丸がずんずんと進み、高等部の門をくぐっていく。 歌仙はあまり期待せずに彼の後をついて歩く。 鶴丸が足を止めたのは、生徒会室前だった。 「驚け。俺は元生徒会長だったんだ!」 「あー、びっくり」 棒読みで応えながらこの学校は大丈夫だったのだろうか、と歌仙は思う。 ガラッと鶴丸がドアを開けて、そっと閉めた。 「何で閉めるんだい?」 歌仙が呆れたように問う。 「...お前、開けてみろ。俺が閉めた理由がわかるから」 振り返って言う。 歌仙はため息を吐き、一応ドアをノックして「失礼するよ」とドアを開けた。 そして、中にいる人物と目が合い、そっと閉める。 「な?閉めるだろう?閉めて正解だよな」 「別の方法はないのかい?というか、生徒会室に行ったら何があるんだい?」 「何か用か」 ドアが開き、不機嫌な顔をした長谷部が出てきた。 「おいおい、長谷部。その人、俺らの先輩だぞ。敬語敬語」 会計が声を掛けてきた。 「は?」 「しかも生徒会長。兄貴のアルバムに載ってた。ガッツリお前の先輩だ」 「その当時の学校、生徒会運営は大丈夫だったのか?」 「イベントがやたら多かったらしい」 「ほう?」 後ろ手にドアを閉めた長谷部が改めて鶴丸と歌仙を見た。 「何の用だ?」 「敬語敬語」 鶴丸が言う。 「五月蠅い。貴様に向ける敬意などない。何しに来た」 「主はどこにいるんだい?」 歌仙が問う。 長谷部は歌仙をじっと見た。歌仙も視線を返す。 「主は中庭だ」 ふいに声を掛けてきたのは岩融だった。 「おまっ!?あ、センセー」 鶴丸が思い出した。彼は岩融の授業を受けたことがある。 「はっはっは。懐かしいなー。道理で、お前の行動が読めたわけだ」 岩融が豪快に笑いながらそう言った。 何となく、鶴丸の行動が先読みできた。慣れていたというか、付き合いの長さゆえにわかる何かという感じだった。 「主は中庭なのかい?ありがとう、行ってみるよ」 歌仙はそう言って歩き出した。 「歌仙、今は何という?」 岩融が問う。 彼は振り返って「そう呼ばれても不都合がない名だよ」と返してそのまま足早に中庭に向かった。 「俺は」 「お前は知っているからいい」 「あいつは野定歌仙って名前らしいぞ。さて、俺も主に会って来よう」 そう言って鶴丸が歌仙を追いかける。 「すまんな」と岩融が長谷部を見下ろして言う。 「何がだ」 「いや、まあ...ひとまずせっかくこの時代に居るんだ。会うまでは良いだろう」 「だから、何がだ」 そう返した長谷部は生徒会室に戻って行った。 岩融はため息を吐く。ガシガシと頭を掻いてそして英語科準備室へと戻って行った。 ◆◇ 「ご馳走様でした」 と2人が仲良く手を合わせていう。 「主」 弁当箱を包みなおしていると声を掛けられて彼女は顔を上げる。 「歌仙さん」 「久しぶりだね、と言っても昨日見たけどね」 「ですね」 彼女は立ち上がって歌仙と言葉を交わす。 「食事は終わったのかな?」 「今終わりましたよ」 足元に座ったままの今剣が言う。 「君は、今剣かい?」 「はい。こちらでは岩融の甥ですよー」 「...だから、岩融が主の居場所を知っていたんだね」 頷いた歌仙は彼女に腰を下ろすように言い、彼女はそのまま腰を下ろした。 「これをあげるよ」 そう言って先ほどカフェテラスで購入したプリンを彼女に渡した。 「わー、デザート!」 素直に貰って彼女の動きは止まった。 「あの、今お金持ち歩いていません」 「あげると言ったよ。同じ学部の女の子たちが噂していたからね、美味しいと思うよ」 甘い物の誘惑に勝てず、「ありがとうございます」と彼女は礼を言ってふたを開けた。 歌仙は彼女の前に座り、昼食を摂り始める。 「おいおい、待っててくれてもよかったんじゃないのか」 遅れて追いついてきた鶴丸が抗議する。 「鶴丸さん」 「主、久しいな。元気そうで何よりだ」 「鶴丸さんも。鶴丸さんは隣の大学だと聞いていますよ」 「僕もだよ」 歌仙が一応報告した。 「お2人は、何歳ですか?」 が問う。 「僕は今年で22だよ。大学4年だ」 「俺は歌仙のひとつ下だな。主と今剣は?」 「わたしは、昨日この学校に入学したばかりです」 「ぼくは、昨日隣の中等部に入学したばかりです」 と今剣が返した。 「主の名を聞いてもいいか?」 鶴丸が言う。 「と言います」 彼女が名を明かした。 「動くなよ、」 鶴丸がそう言い、彼女は首を傾げる。 歌仙が鶴丸の胸ぐらをつかんだ。 「貴様、何を考えた」 「いや、ちょっと試してみたかっただけだって」 何故歌仙がこんなに怒っているのか彼女はわからなかった。今剣を見ると彼は呆れた表情を浮かべている。 「何ですか?」 「名で相手を縛ることができるというのは、君も知っているよね。こいつはそれを試そうとしたんだ」 「歌仙さん、考え過ぎですよ。だって、前の時も燭台切さんはわたしの名前を知っていても何もしませんでしたよ」 「...え?」 彼女の爆弾発言に歌仙は顔色を変えた。 「君は、何て危なっかしいことを...」 額に手を当てて嘆くように言われてはオロオロする。 「ちなみに、。今の名と燭台切に教えた名は同じなのかい?」 鶴丸が問う。 「いいえ、違います」 「ほう。あいつは主の特別だったのかな?」 ポツリと呟いた言葉は彼女の耳には届いていなかったが、歌仙の耳に届いた。 鶴丸の発言に舌打ちをして歌仙はコーヒーに手を伸ばした。 「剣さん、半分食べます?」 そう言って彼女が声を掛けた。 「たべます」と彼は頷き、彼女が半分食べ終わった食べ終わったプリンを受け取り、鶴丸も遅れて昼食を摂り始める。 予鈴が鳴り、解散となった。 皆と連絡先を交換し、彼女は校舎に向かう。 見送った歌仙は、ため息を吐いた。 「もしかしたら、全員揃っているかもしれないな」 鶴丸が呟く。 「そうだな」 歌仙は投げやりな相槌を打った。 |
桜風
15.6.23
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