めぐり逢ひて 4




 放課後の生徒会室の窓から彼女の姿が見えた。

長谷部は思わす頬を緩める。

彼女は女子生徒2人と一緒に歩いていた。友人ができたのかもしれない。

(よかった)

昔みたいに自分が傍にいて支え続けることができない。

だから、友人というものがあれば良いと思っていた。彼女はとても優しくていい子だから、それがわかれば友人もすぐできるだろうが、自分を表現するのは苦手のままのようで、だから少し心配でもあった。

「長谷部ー」

「ああ」

声を掛けられて返事をする。

明後日にあるオリエンテーションの準備を始めなくてはならない。



◆◇



ちゃんってチャリ通なんだねー」

クラスメイトの郷田結衣がいう。

「うん、ちょっと距離あるから」

「雨の日は大変そうね。根性で自転車通学するの?」

そう言ったのはもう一人のクラスメイト、邑地雲雀だった。

「分からない。バスは凄くこむって聞いてるから、出来れば自転車で通いたいなって思ってる」

彼女たちは同じ中学出身で外部入学者だ。

よって、同じく外部入学をしているに声を掛けたいと思っていたらしい。

昼食に誘おうと思ったらダッシュで教室を出て行ったので、放課後の帰宅を誘ってみた。

(友達ができた!)

は心の中で歓喜していた。

報告したいと思ったが、誰にしていいのかわからない。友達が出来そうにないという相談を誰かにしたわけではないので、相手がいない。

「部活決めた?」

明後日のオリエンテーションで各部がアピールをするというのだ。

その後、仮入部などの手続きが始まるという。

実質、すでに入部している者も居るらしいが、それでもまだ仮入部という扱いらしい。

「体を動かす系が良いなって思ってるです」

「何、敬語とかいらないでしょ」

笑って郷田が言う。

は困ったように笑って「うん」と頷いた。

これまで他人には敬語でしか接したことがないので、正直慣れない。

「まっすぐ帰る?」

邑地に言われては少し悩んだ。

「そういえば、大学の方のカフェテラスって、学生限定じゃないらしいよ」

郷田が言う。

「行っちゃう?」

と邑地の顔を交互に見やりながら郷田が言った。

「いいけど」

と邑地。

も頷いた。

自転車が置けるかどうかわからないから、と自転車は高等部に置いたまま大学のキャンパスに向かった。


当然のことながら、制服姿なのは自分たちだけだった。

「あー、そうだよね」

大学に制服はない。だから、凄く目立つ。高校生が大学に遊びに来ているのがすぐにわかる。

高校生と言っても、つい先日まで中学生だった子供だ。

違和感しかない。

「どうしよう。やっぱりやめる?」

言い出しっぺの郷田が弱腰になった。

「そうする?」

動じる様子を見せない邑地がに視線を向ける。

はつい先日まで大人たちの中に居たのでそんなに違和感がない。

実際は先日ではないという事になるかもしれないが、自分にとっては先日だ。

?」

声を掛けられて振り返ると歌仙がいた。

「歌仙さん」

「どうかしたのかい?」

そう言っての背に隠れた女子高生たちもちらと見た。

友人なのかもしれない。「知り合い?」と小声で彼女に声を掛けている。

「うん、昔凄くお世話になった人」と彼女は背後の友人らしき女子たちに声を掛けて「こんにちは」と歌仙に挨拶をした。

「うん、こんにちは。それで、大学に何か用かい?」

歌仙が問うと「冒険しに来てます」と彼女が言う。

「冒険?」

首を傾げる歌仙に「大学のカフェテラスって、外部の人も使えるって聞いたので、さっそく寄り道を」と彼女が言うと歌仙は苦笑して「案内しよう」と頷いた。

「ありがとうございます」と言った彼女は振り返り、「案内してくれるって」と友人たちに声を掛けた。


カフェテラスには大学生がたくさんいた。

「放課後なのに、人が多いですね」

「院生は、夜まで残ったりするからね。そのための腹ごしらえとかじゃないかな。あと、バイトまでの時間を潰すとかね」

そう言いながら歌仙は店内を見渡した。

思いのほかこんでいる。

「外のテラスだと少し肌寒いかな」

「大丈夫です」と郷田が言う。

歌仙はを見下ろした。

「大丈夫だと思います。あったかい飲み物買う予定ですし」

彼女の言葉に歌仙は頷き、テラスの席を取った。

カウンターで注文をし、「僕が持っていくから座っていなさい」と歌仙が言う。

「はーい」と彼女たちは返事をして先ほど取っておいた席に向かった。

「ねえねえ、歌仙さんって苗字?」

そう聞かれては困った。

フルネームを聞くのを忘れていた。たぶん、兼定というのは刀派だから、苗字になっているのではないかと思う。

賭けだ、と思って彼女は口を開けた。

「名前だ」

頭に体重がかかってきた。

「重いです」

「はっはっは。驚いたか、

「重いです」

同じ言葉を繰り返す。

「国永ー」

「おー、ちょい待て」

背後から名を呼ばれて振り返った鶴丸は軽く手を挙げて返している。

「どうした、俺に会いたくてここに来たか」

「カフェテラスに寄り道をしようと思て来てみました。さすがに高校生だけで来るのは場違いだと察したところ、歌仙さんに会ったので、連れてきてもらいました」

頭上の鶴丸に彼女が解説をする。

「ほー、あいつは相変わらず...それで、こちらの御嬢さんたちは、の友人という事なのかな?」

未だの頭に上半身の体重を少し掛けたままの鶴丸が問う。

「こんにちは」と2人は口々に挨拶をした。

「ああ、こんにちは。俺はの知り合いで国永鶴丸という。んで、先ほど話題に上っていた歌仙は、野定歌仙だ。かなり昔になるが、と共に過ごした時期があってな、久々の再会をしたばかりなんだ」

状況を説明しつつ、今後、彼女が困らないように色々と曖昧ではあるが、設定を付けてくれた。別の者と再会した時もこの説明である程度納得してもらえるかもしれない。

曖昧の方が色々と動きやすいというのもある。

「国永」

再び呼ばれて「ああ、今行く」と友人に返し、「では、。またな」と頭を撫でてその場を離れて行った。

何だかんだで色々と世話を焼いてくれていた彼らしい行動だ。

「はい」と離れていく背にも返事をする。

「お待たせ。鶴丸に絡まれていたのかい?」

「いいえ、絡まれていません」

「そう。嫌だったらちゃんというんだよ」

歌仙はそう言いながら皆の前に注文の品を置く。

「はい」と頷いたを見て満足そうに歌仙も頷いた。









桜風
15.7.7


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