| 朝餉の支度をしながら歌仙はため息を吐いた。現在、厨には自分一人だ。約束をしているわけではないので、がここにいる必要はない。主だし。 だが、現状2人しかいない中、食事を摂るのも2人だ。協力して作ってもいいのではないかと思う。 昨晩遅くまで主の部屋が明るかった。夜中まで何か作業をしていたのだろう。それゆえの寝坊。 (まったく。……諫言も家臣としての務めか) ふと、けたたましい足音が聞こえた。 (これも注意しておかなければね……) 彼女は洋装だ。だから走ることができるのだろうが、もう少し淑やかに過ごすことはできないのかと思うのだ。 「歌仙さん!」 「主、廊下を走ってはいけない」 「はい!」 反射で返事をしたとしか思えない間合いでが頷く。 そして駆け足のまま歌仙の元にやってきた。 「歌仙さん、あたしが勉強不足でした」 そう言って深々と頭を下げる。 「……どういうことだい?」 首を傾げて歌仙が問うと「“刀装”ってのを作ってもらう必要があったみたいです」と言う。 「刀装?なんだい、それは」 「刀剣男士が出陣の時に装備するものって書いてありました。それを作れるのは神様だけだって」 「昨日の出陣の折には、ちゃんと武装して出たのだけれど、違う者なのかい?」 「そうみたい。敵の攻撃を軽減させる力があるって。ただ、消耗品だから一度作っておしまいってわけじゃないって書いてありました」 「なるほど、興味深いね。でも、まずは身だしなみを整えておいで。そして、朝餉を済ませよう。難しい話はそれからだ」 ぴょんぴょんとの髪がはねている。起き抜けでやってきたようだ。 「はい!」 返事をして彼女は駆けだした。 「廊下を駆けてはいけないと言ったばかりだよ」 歌仙が声を掛けると少し速度が落ちた。早歩きという言い訳ができる程度の速さだ。 歌仙は本日何度目かのため息を吐いた。 「しょうがない主だね」 朝餉を済ませて改めての話を聞き、祭壇のある部屋に向かった。 はまだ城の中を把握していないが、歌仙がすでに城の中を全て見て回っていたため、すぐに向かうことができた。 資源も必要になると聞いて蔵に向かった歌仙は首を傾げる。 初めてこの城に来たとき、政府から用意されていた資源が置いてあった。 しかし、この減りようは何だ。 毎日彼女が鍛刀しているといっても、減りが早すぎる。 取り敢えず、全種類を持てるだけ持って祭壇のある部屋に向かった。 方法としては、祭壇に資源を置いて刀剣男士が手順を踏めば出来上がると書いてあるとが言う。 「では、やってみようか」 「え、それだけですか?もっとたくさん資源使っても……」 「作り方の把握のためだから、これでいくよ」 歌仙はそう返し、先ほど彼女から聞かされた方法を試してみた。 何かが出来上がった。 「できましたね」 「そうだね。なるほど、うん。作り方は把握した。これを人数分作っていくようにすればいいんだね」 「刀の種類によっては、装備できないものがあるらしいので、いろんな種類のものがあればいいみたいです」 「心得たよ。時に主。先ほど蔵にあった資源が随分と減っているように思えたんだけど、心当たりはあるかい?」 先ほど刀装を作るのに使用した最低限の資源の量を考える。彼女は鍛刀を毎日行っているので、それに使用しているのだろうが、それにしたって減り方が早い。 「心当たり。毎日鍛刀に使ってますよ」 「量は?」 問われては毎日使用する資源の量を諳んじた。 「そんなに使うのかい?」 「えっと、はい。歌仙さんくらいの大きな刀ならこれくらい要るようです」 「僕くらい。打刀ということかな?短刀や脇差を呼ぶことはないのかい?」 刀が小さければ使用する資源も少ないだろうと思って歌仙が問うと「あるみたいですけど、小さいですよ?」とが首を傾げて返した。 「大きな刀がいいのかい?」 「強そうだなって」 彼女の言葉に歌仙は頷いた。 「なるほど。だけどね、主。打刀には打刀の、太刀には太刀の、そして短刀には短刀の間合いというものがある。短刀は確かに僕に比べれば小さい。けれどね、懐に潜り込むことができれば彼らの間合いだ。もちろん、懐に潜り込むのに胆力と機動力が必要だね。それと、短刀は主の矜持と命を守る役割がある」 「矜持?」 が首を傾げた。 彼女の時代ではそんな言葉を使わないのかと悩み、「誇り、と言い換えたらわかるかな?」と歌仙が問うてみた。 「あ、はい。わかります」 「うん。武士は己の矜持のために命を捨てることがある。その時、主の命を奪うのが短刀だ。反面、肌に離さず持っているから何かあったときの反撃に使い、命を救うことがある。僕たち刀にはそれぞれの役割がある。だから、大きいから強いとか小さいから弱いとかそういうことはないんだ。要は戦い方だね」 が頷いた。 「というわけで、主。当分は短刀を呼ぶようにしよう。資源がなくなってしまっては困るしね。そうだね、短刀だけで部隊を組めるまでは少ない資源を使って呼んでみよう。それと、それは1日3回まで。少ない資源でもたくさん挑戦したら同じだからね。僕の方も、刀装は3回までにしておくよ」 彼女は「わかりました」と素直に頷いた。 「では、この取り決めは今日からということで」 「はい」 頷いたは3回分の資源を準備して鍛刀に向かう。 「さて」 短く息を吐いて歌仙は祭壇に置く資源を準備する。 「まずは誰が来るのだろうね」 縁のあるものと言ってもそんなに多くない。というか、記憶があいまいではっきりしない。 目の前に現れたら思い出すだろうか。 もう少し主と2人で苦労しながら本丸を動かしていくのも悪くなかったなとにわかに寂しさを覚えて苦笑を零す。 「まるで人間のようだね」 そんな自分も悪くないと思っているのだから、呆れてしまう。 |
桜風
16.3.14
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