芸術の秋
| 白い布に綿を詰めてきゅっと縛る。 「何を作っているんだい?」 ひょいと顔を覗かせてきたのは蜂須賀虎徹で、彼は固まった。 「ねえ、主」 「はい?」 「それは何の呪いだい?」 「ノロイだなんて失礼な!」 彼女は抗議のために立ち上がる。 「これは「てるてる坊主」という立派なおまじないです」 「呪いではなくて?」 再度確認されて彼女はむっとむくれた。 秋雨前線が停滞しているのか、ここ最近ずっと雨だ。 雨だろうと出陣や遠征、内番は休みにならない。だから、雨に打たれた彼らはきっと寒いだろうと思って雨が上がるようにおまじないをすることにしたのだ。昔懐かしのてるてる坊主。 効くか効かないかわからないが、試してみる価値はあるだろうと思って鋭意制作中なのである。 それを、近侍に「ノロイ」などと言われて心外甚だしい。 「それで、そのてるてる坊主とやらは何の効果があるまじないなんだい?」 蜂須賀は百歩譲ってそれを『まじない』と認めることにした。 「雨が上がるの」 「へー……」 そう言って1体手に取る。 「ねえ、主」 「ん?」 「これは、何の呪いだい?」 引き攣った表情の蜂須賀が再度問うた。 「は?!さっき説明したでしょ。あと、ノロイじゃない」 「じゃあ、これは?!」 そう言って彼女の目の前に出したのは今手にしたてるてる坊主だ。 「照子さん」 「誰の話なのかな?」 「そのてるてる坊主。顔がないと可愛くないかなって。その人は照子さん」 「顔があるから余計に気持ち悪いんじゃないかな」 「何を言うか!照子さん可愛いでしょ。ほら、睫毛だってバシバシだし長い。はっちー芸術に造詣が深いと思ってたけど、案外そうでもないのね」 「だから、その呼び方は辞めてもらいたい。というか、これを芸術と主は言うのか?!主、前から思っていたけど、主の口から零れる『芸術』という単語は、芸術に失礼だからやめたらどうかな?」 「なにをー?!」 主の執務室から漏れ聞こえる口論を耳にした者たちは「またか」と零し「おーい、誰か芸術家先生、歌仙兼定が何処にいるか知らないか」と彼の行先を知る者を探す。 「歌仙さん、今日は遠征です」 「あー、そうか。だったら、誰がアレを止める?」 「放っておいていいんじゃないですかね」 毎度の事だから周囲も馴れっこだ。 「そうだな」と数時間後に遠征から帰ってくる歌仙に丸投げをすることが満場一致で決定したのだった。 |
桜風
(15.10提出)
ブラウザバックでお戻りください