小春日和






 ちらちらと気まぐれのように小雪がちらつく季節を迎えた。

ここ最近の冷え込みに比べて今日は少しだけその厳しい寒さが緩んでいる。

ここぞとばかりに洗濯に勤しむ者たちの姿を目にした三日月は彼らに感謝の念を送り、廊下を歩きながら主の姿を探した。


「寒い寒い」と口癖のように、特にここ最近は毎日その単語を口にしている彼女の姿をやっと見つけた三日月は足を向ける。

「主。隣良いか?」

彼女は振り返って「はい、空いてますよ」と頷いた。

「では」と頷き、三日月は彼女の隣に腰を下ろす。

最近入手したと聞いた袍を着込んでいる彼女はぷらぷらと足を揺らして何をするでもなくそこにいる。

「それで?」とふいに問われて三日月は視線を向けた。

「何がだ?」

首を傾げて彼女に視線を向ければ「何か用があって隣に座ったのでは?」と問い返される。

「ああ、なるほど」と納得した三日月は「暖かい場所を分けてもらおうと思ってな」と返した。

「暖かい場所?」

「主は陽だまりを見つけるのが上手いと聞いている」

「まあ、そうですね。日がな一日この城で過ごしてれば、あったかい場所のひとつやふたつ見つけられますって」

彼女は笑った。



「……茶がほしいな」

2人は並んでしばらく無言で縁側に腰を下ろして何をするでもなく庭を眺めていたが、先に口を開いたのは三日月だった。

「あー、欲しいですねぇ。ついでに甘いものも」

彼女の言葉に三日月は「そうだな」と同意する。

しかし、今は立ち上がりたくない。せっかく暖かくなったのだ。

だから彼女は提案した。

「次の小春日和に持ち寄りましょう。私がお茶を、三日月さんはお茶請けを」

三日月は頷き、そして首を傾げる。

「小春日和?」

「今の時期の春のような日差しのある日のことです。今日みたいなぽかぽか陽気の日」

彼女の言葉に三日月は再び頷く。

「では、次の小春日和のために茶菓子でも見繕っておくとするか」

「私、栗羊羹が好きです。もしくは生和菓子!」

すかさず手を挙げて主張する彼女に三日月は頷き、「あいわかった。では、芋羊羹としよう」などと返す。

「ちょっと、三日月さん?」

不満そうな表情を見せる彼女に三日月はにこりと微笑み「冗談だ」と返した。









桜風
(15.11提出)


ブラウザバックでお戻りください