暑気払い
| 古来より神様は宴会好きだ。神話にも書いてあるので、おそらくそうなのだろう。 少し離れたところでその“神様”達がどんちゃん騒ぎをしているのを眺めながら彼女はチロリと酒を舐める。 先日、政府から中元が届いた。政府としても“神様は宴会好き”という認識でいるらしく、酒を送ってきたのだ。 これはいわゆる賄賂となるのではないだろうかと思ったが、酒をもらったからと言って彼らが政府に便宜を図ることなどないため、気にしないことにした。 そして、自分もお相伴にあずかることにしたのだ。 誰の発案だったか、宴会をしようという話になり、現状に至る。いつだったか、自分たちの時代では“暑気払い”という名目で宴会をするという話をしたため、それが発端になったのかもしれない。 この城で宴会なんてそれこそ日常茶飯事だが、城の主である彼女が参加することは多くないので、そのための名目だったのだろう。 それを察した彼女は大人しく参加はしたが、惨事を察知して早々に避難したのがこの状況である。 「あれ?今日は進んでないね」 頭上から声がして視線だけ向けると燭台切光忠が首を傾げた。 「うん、まあ。失敗したというか...」 苦笑いを浮かべて彼女は言う。 「ん?」 「これ、辛口だった」 彼女は側に置いている『美青年』と書いてある酒瓶を少し持ち上げた。 「何でそれを選んだの?辛口って知らなかったとか?」 「まあ、知らなかったってのはあるけど。ほら、名前が美味しそうじゃない?」 そんなことを返す彼女に彼は肩を竦め、「甘口、持ってこようか」と提案した。 「ああ、良いよ。甘口ってついつい飲み過ぎて酔っちゃうから」 彼女が手を軽く左右に振る。 「銘柄にこだわりはないよね」 そう言ってすでに収拾がつかなくなっていそうな宴会の中心部に向かって行こうとする彼に 「あたしを酔わせてどうすんの?」 とからかいを含んだ言葉を投げると彼は振り返り、「さあ、どうすると思う?」と艶っぽく返す。 彼女は「あらあら」と零して「さあ?どうすんの?」と挑発的な笑みを浮かべて彼を見上た。 |
桜風
(15.8提出)
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