鳴狐VS信濃藤四郎
| 大阪城の地下に潜伏する歴史修正主義者の手に信濃藤四郎を介することができる刀剣が在るとの情報が入った。 すぐさま出撃部隊を編成し、その救出に向かった。 粟田口派が率先して。というか勝手に。 気づいた時には出陣しており、思い出したころに帰ってきた。 そして、彼の加入により、少しだけ本丸内の空気がぎくしゃくするようになった。 「どうしよう」 ポツリと呟く審神者に鳴狐は「ごめん」と小さく謝罪の言葉を口にした。 同じ粟田口派の起こしている問題だ。他人事と割り切りづらい。 「ああ、うん。仕方ないこと、なんだよね?」 問題というのは、信濃藤四郎が遠慮なく審神者の懐に入りたいと言っていることを指す。 それだけならいいのだが、これまで主に迷惑をかけてはいけないだとか、我儘なんてもってのほかなどと我慢をしていた短刀たちの不満が表面化してしまったのだ。 かといって、短刀全員を懐にさして歩くわけにはいかないので全て断っているのが今の状況だ。 ここで信濃が「仕方ない」と引き下がれば大きな問題にはならなかっただろうと大きな刀たちは思っている。 そんなわけで、彼女は顔を合わせるたびに一期一振に謝罪をされ太刀にからかわれているのだ。 「どうしました、鳴狐」 自室でため息を吐く鳴狐にお付の狐が声を掛ける。 「うん……」 曖昧な返事に彼が何を考えているのかを察した狐は「わかりました!では、このわたくしめが何とかしましょう!」と宣言をして素早く部屋を出て行った。 首を傾げて見送った鳴狐だったが、鍛錬に付き合えと道場に連れて行かれ、狐の後を追うことができなかった。 日が傾き、そろそろ夕餉の時刻となるというのに狐が帰ってこない。 どこに行ったのだろうかと考え、確か自分のため息を耳にして部屋を出て行ったと思い出す。 殆ど一緒に行動をしているため、鳴狐が何に悩まされているのかは彼も把握しているだろう。 そう予想した鳴狐は審神者の部屋に向かった。 「なりませぬ!」 「なんでだよー!」 「あるじどのの懐は、この狐がお守り致します」 「だって狐じゃん」 「ただの狐ではございません。鳴狐の相棒、お付をしている狐です!」 「えーと、暑い」 障子戸を挟んで向こう側の声が聞こえ「主」と声を掛けると「やや!鳴狐!」「鳴狐さん!」「鳴狐ー」と三者三様の声がある。 「開けるよ」 「どうぞ」 ひと声かけて障子戸を開けると鳴狐の視界に入ったのは審神者と信濃と狐。 そして、狐はなぜか主の胸に張り付いている。 「どうです、鳴狐!このわたくしめがきちんとあるじどのの懐を守っていますぞ」 「だーかーらー。狐じゃ大将を守れないんだって!」 鳴狐は静かに審神者に近づき、慎重に彼女の肌に手が触れないように狐を鷲掴みにして引きはがした。 「鳴狐?!」 何が意外だったのか、狐が頓狂な声音で鳴狐の行動の意図を問う。 「ちょっと、話がある」 「じゃあ、その間に大将の懐は俺が」 「信濃も」 有無を言わせない声音で告げられて信濃は固まった。 「ちょっと、二人と話してくるから。そろそろ夕餉」 「え、もうそんな時間?!」 「二人が仕事の邪魔して、ごめん」 「あー、いいのよ。急ぎのものはないし。うん……」 「じゃあ」 挨拶をして鳴狐は審神者の部屋を後にする。 それからというもの、信濃が審神者の懐を狙うことはなくなったという。 |
桜風
(16.7.24初出)
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