七夕






 鼻歌を歌いながら主が何かを準備している。

近侍の山姥切国広は不思議そうに彼女を見ていた。

人間の風習を彼女はこの城の行事にしばしば取り入れる。そのため、おそらく彼女が何か準備をしているこれもそれなのだろうと辺りを付け、そろそろ何か言われるだろうと注視していた。

「ねえ、まんばちゃん」

「……なんだ」

その呼び名をやめろと何度言っても聞かない。「はいはい」と返事はするのだが、それはだたの記号のようなものでどうも了承の意ではないと気づいたのはつい最近の事だった。

道理で改める気配がないわけだ。

「笹ってここら辺に自生してるのかな?」

「笹?何をするんだ?食べるのか?」

「いや、パンダじゃないし」

笑いながら返されたが、そもそも“ぱんだ”なるものを知らない彼は首を傾げるしかない。

「笹団子というものがあるだろう」

「おおう、食べたい」

返された言葉に深いため息を吐く。今度買って帰ろうなどと思ったがひとまず気分を切り替えて「何に使うんだ?」と先ほどの問いを繰り返した。

「七夕」

短く返ってきた言葉。その単語に首を傾げ「何をするんだ?」と問い直した。

「えっとね、願い事を書いた短冊を吊るすの」

彼女は七夕について説明をした。ひとまず、彼もその伝説については理解したが、笹が必要なのかとため息を吐く。

「裏の山にはあるかもしれない。少し探しておこう」

「勝手に取ってもいいのかな?」

「知らん」

「庭にはなかったよね」

「なかったな」

頷く彼にため息を吐いて、「やめとこうか」と彼女は呟く。

「どうした?」

「いや、よくよく考えたら1年に1回しかないデートなのに、さらに地上からお願いされてそれを叶えようとしなきゃいけないなんて。時間がないじゃない?」

“でーと”という単語は耳にしたことがなかったが、先ほどの彼女の説明から言って逢引きの事だと判断した彼はため息を吐いて「自業自得だろう」と返す。

「ん?」

「自分たちが仕事をさぼったからこんなことになった。付けを払っているだけだ」

「あ、耳が痛い」

「自覚があるならいい」

しかと頷き、彼は立ち上がる。

「どこ行くの?」

「笹が必要なんだろう?」

「でも、」

「付けを払わせればいい」

そう言って彼は部屋を出ていく。

なんだかんだで彼女に甘い自分に呆れつつ、彼女の行事にはしっかりと付き合うのだった。









桜風
16.6.18


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