| 特別な理由があったわけじゃない。 ただ、気付けば目で追うようになっていた。 そして、気付けば恋に落ちていた。 ただ、それだけ・・・・。 「宮田、何番だった?」 「16。」 「窓側の一番後ろ?凄ぇ強運の持ち主だな。オレなんか廊下側の一番前、最悪だぜ。」 今日は数ヶ月に一度の席替えの日。 くじを引いた人から順に席を移動していたのだが、宮田は荷物を持ったままふと・・ある女生徒に目を向けた。 「・・変わってやろうか?」 宮田の席を羨ましがっていたクラスメートに声をかける。 「マジ!?」 宮田からの願ってもない申し出に大喜びで席を交換する。 誰もが羨む窓側一番後ろの席を棒に振るのは少々惜しいが、宮田にとって一番の特等席、それは彼女の隣。 「・・あ、隣、宮田君なんだ?よろしくね。」 宮田に気付いたはにっこり笑って言った。 「・・ああ。」 あくまで偶然を装い、宮田はぶっきらぼうに返した。 「私、くじ運悪いのかなぁ。一番前なんて最悪だよー。宮田君も不運だね。」 「そうでもないよ。」 「どうして?」 ここで『君の隣になれたから』とでも言えれば少しは進展するのだろうか? しかし宮田がそんな事を言えるはずもなく・・。 「・・・・黒板が見やすい。」 「プッ・・宮田君って、変わってるって言われない?」 に吹き出され、宮田は少しだけ頬を染めて 「・・・・たまに。」 とりあえず、仲良くなるきっかけにはなったようだ。 「・・・・というわけで二人とも頼んだぞ。」 有無を言わさぬ勢いで勝手に決定した、中庭の花壇の手入れ。 花の世話当番は今月は宮田のクラスが担当で、担任が一番前の席同士、宮田とを今日の担当に決めた。 放課後になり、宮田ははやる気持ちを抑えつつに声をかける。 「・・もう行く?」 「うん。」 教科書を鞄に入れ終えたは立ち上がった。 すると隣のクラスからの友人らしき人物がやって来て、 「、帰ろ〜。」 の手を引き、連れて行こうとする。 そんなのありか?と宮田が見ていると、 「ごめん、今日は花当番なんだ。」 友人にちゃんと断りを入れる。しかし 「一人じゃないでしょ?他の人、誰?」 「宮田君。」 「ね、宮田君、お願い!いなくても平気でしょ?今日、二人で行くトコあるんだ。」 と手を合わせて頼み込まれる。 手入れがどうだとか人手だとか、そんな問題ではない。 と二人でいられる絶好のチャンスを逃すわけにはいかない。 宮田はチラッとを見た。 は心配そうな顔で宮田を見上げている。 「・・・・いいよ別に、一人でも。」 気持ちとは裏腹に素っ気なく言うと、一人で中庭に向かった。 「はぁ・・何やってるんだオレは・・。」 雑草を引っこ抜きながら一人落ち込む宮田。 「・・にしても雑草ばっかりだな。前のクラスのヤツ、本当に世話したのか?」 ブチブチとひたすら雑草を抜いていると、宮田の横から白い手が伸びた。 それは友人と帰った筈のだった。 「・・戻って来ちゃった。」 にこっと笑うに一瞬目が釘付けになり、そして雑草に手を伸ばすを見て 「・・しなくていい。」 咄嗟に口をついた言葉がこれだった。 が驚いて手を引っ込めると、 「・・・・水、やって。」 と、じょうろを渡した。 言われた通りに水を汲み、花に水をやる。 『草取りなんかさせられるかよ、折角の綺麗な手が汚れる・・。』 花壇の手入れが終わる頃、が言った。 「さっきは有難う。一人でいいって、行かせてくれて・・。」 「・・一人の方が気楽だから。」 照れ臭いのか、どうしても素直になれない宮田。 「手が汚れないようにって、草取り全部してくれて。」 「・・・・水汲みに行くのが面倒だったし・・草取り・・好きだし・・・・。」 我ながら苦しい言い訳をしているものだと呆れる。 そんな宮田に対し、はクスクスと笑う。 「宮田君、やっぱり変わってるよ。」 に笑われ、宮田は頬を掻いた。 「あ、土・・。」 土まみれの手で掻いたものだから、宮田の頬には当然土がつく。 はハンカチを出し、宮田の顔を拭ってやった。 間近で見るの顔、そして優しさに心臓の鼓動が早くなる。 「それ・・汚れたから洗って返す。」 「いいよ、これくらい。」 「良くない。」 「・・・・じゃあ・・お願いします。」 宮田の熱意に負け、はハンカチを渡した。 「じゃあな。」 「また明日。」 校門の前で別れ、別方向に歩き出す二人。 少し歩き、宮田は振り返った。 目に映るのはの後ろ姿・・のはずだった。 「・・あ・・・・。」 なぜはじっとしているのだろう。 なぜこちらを見て、微笑んでいるのだろう。 「宮田君。」 は笑顔のまま言った。 「・・私、宮田君のそういう不器用なトコ、好きだよ。」 の顔が赤く見えたのは、夕陽のせいなのか、それとも・・・・。 「じゃあ、また明日!」 バイバイ、と手を振り、今度こそ本当には帰っていった。 宮田の顔が赤いのは、きっと夕陽のせいではない。 帰宅すると宮田はいの一番にハンカチを洗った。 『明日、これを返して、その後・・・・。』 ちゃんと自分の気持ちを伝えよう。 教室の席だけじゃなく、いつでも隣にいたいから。 不器用なりに精一杯頑張れば、きっと気持ちは伝わるはずだから。 願わくばこのハンカチのように、自分の想いをが柔らかく包み込んでくれますように・・・・。 |
相互記念として、『白昼夢』の秋月紅葉さんから頂きました宮田夢。
リクエストさせていただけるということで、
『一郎さんで、同級生ヒロイン。不器用にも一生懸命恋愛している一郎さん』
とさせていただきました。
頂いたとき、青くさい一郎さんに身悶えたのは言うまでもない(笑)
秋月さん、どうもありがとうございました!!
06.2.18
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