薄紅色の花咲く頃 3




は父から借りた本を返しに府庫に向かう。

桜を見上げながら歩くを見つけた静蘭が静かに近づく。

お嬢様」

久しぶりの声には笑顔で振り返った。

貴妃の護衛で朝廷に入った静蘭とは中々会えない。

「久しぶり、静蘭。元気そうね、よかった」

お嬢様こそ、お元気そうで。しかし、仕事の方が無いとか」

苦笑をしながら静蘭が言う。

「そう。御飯を運ぶくらいだけど、その時間すらも主上がいらっしゃらないのよね。暇よ。だから、コレ。ああ、あとお饅頭も作ってきたわ」

そう言って父から借りた本と包みを掲げる。

静蘭はそれを見て再び苦笑をした。

「なるほど。旦那様もお嬢様にお会いできて嬉しいのではありませんか?」

「あのさ。秀麗が居るときはまあ、仕方が無いけど。居ないときは呼び捨てをして、って言ってるでしょう?私は貴方と同じなんだから」

は困ったようにそう言った。

「しかし、...分かった。は、これからまっすぐ府庫に行くのか?」

「ありがとう。うん、そ。お父様、今度はどんな本を薦めてくれるのかしら?」

そう言いながら2人は府庫に向かった。


府庫に入っては驚く。

先日一緒に歩いた李絳攸が居た。

「あら、絳攸様。先日はお世話になりました」

は礼を言う。

「あ、いや。別に大した事はしていない」

「そうだよな。絳攸の方が道に迷っていたから助かったのは絳攸の方だよな」

後ろからひょいと顔を出した美形がそう言った。

「先日は私の親友の絳攸がお世話になりました。私は藍楸瑛と言います。しかし、先日目にしたときから思っておりましたが、何となく、貴妃に似ていらっしゃいますね」

、と申します」

楸瑛の言葉にどう反応していいか分からないは取り敢えず名乗るだけに留まった。

「やあ、来たのかい。今日は静蘭も一緒か。そうそう。紹介が遅れたね。こちらが、李絳攸殿。吏部侍郎殿だ。で、こちらが藍楸瑛殿。左羽林軍の将軍でいらっしゃるよ。お二人に紹介します。娘の、です」

「お父様!?」

「この方たちは秀麗のこともご存知だし、大丈夫だよ。信頼の置ける方たちだ」

父にそう言い切られては仕方ないと諦めて再び自己紹介をする。

「紅です。いつも父がお世話になってます。そして、妹がお世話になります」

しかし、目の前の青年たちは突然の衝撃の事実に反応が出来ない。特に絳攸は血の繋がらない親戚だったとは露知らず、驚きは楸瑛よりもさらに大きい。

「えーと。そうか。だからお二人は似ていらしたんですね。これで納得しましたよ」

絳攸よりも衝撃の少なかった楸瑛が何とか反応を返した。

「何故か、よく言われるんですよ」

楸瑛の返事には困った顔をしてそう返した。

そんなの反応に絳攸と楸瑛は首を傾げる。

姉妹なのだから、似ていて当然だろう。

それなのに、何故『困ったような』反応をするのか。

絳攸と楸瑛の反応に気付いてか気付かないでか邵可がに本を差し出す。

、今度はこの本なんてどうかな?」

「ありがとうございます、お父様」

父が薦める本をは手に取りぱらぱらと捲る。

殿は読書をされるんですか?」

「ええ、時間があれば。今は、ご存知のように、やることがありませんから」

肩を竦めてが答える。

「お父様、お饅頭を作って参りました。絳攸様も藍将軍も宜しければご一緒に如何ですか?お口に合えば宜しいのですが...」

茶器を用意しながらは2人を誘った。


「絳攸様と藍将軍のお噂はかねがね伺っていますよ。しかし、今は...」

殿と一緒でやる事がないんですよ。私はともかく、絳攸は霄太師直々に引き抜かれてしまって。それなのに、実情は窓際官吏状態で。結構イライラしているんですよ」

「楸瑛!!」

楸瑛の言い草に絳攸は抗議の声を上げるが、当の楸瑛には何処吹く風。

全く動じない。

「お二人とも仲がよろしいのですね」

2人の様子を見ていたが声を掛ける。

その言葉に絳攸は顔を顰め、楸瑛は

「そうですね。会試の時からの親友ですよ」

「腐れ縁だ!」

対照的な2人には笑った。




ヒロインの秘密、ちょっと垣間見たり...
双花菖蒲、揃ってヒロインにご対面vvv


桜風
06.2.21


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