薄紅色の花咲く頃 9





結局、秀麗の毒は劉輝の持って来た解毒薬で全て中和することが出来た。

静蘭もどこかで大怪我を負い、さらに毒性の強い香を吸っていたため、寝込んでいた。

は一度だけ見舞いに行った。

そのとき薬湯を持って行って2人に飲ませた。

思いっきり苦いのを作ってやったから飲み終わった2人の顔は形容しがたいものとなった。

「心配させたバツよ!」

というの言葉に2人は抗議しようと口を開いたが、それでも、本当に心配させてしまったことに気付き、口を噤む。


ひと月近く秀麗と静蘭は療養のために部屋で大人しくしているように命じられていた。

秀麗は解毒薬を飲んで2・3日眠ると回復した。

静蘭よりも早く部屋から出ることが出来た秀麗は府庫に向かう。

「父様、姉様。私、近々家に帰ろうと思っているの。静蘭が元気になったら」

府庫に居た父と姉にそう告げる。

「そうか。分かったよ」

「じゃあ、私は秀麗よりも早く此処を辞させてただきましょう。家の方が気になって仕方が無いし」

秀麗の言葉に邵可とはそう答えた。


言葉のとおりには秀麗にそう言われた3日後に女官を辞した。

朝廷の門を見上げて感慨に耽る。

劉輝には、昨日別れの挨拶をした。

秀麗が帰ることは自分の口から言うべきではないと思ってそれを伏せて挨拶をした。

『寂しくなるな』

そう一言言われた。

『主上の政事に期待しております。大変お世話になりました。ありがとうございました』

そう言って挨拶を済ませた。

門に来る途中に楸瑛にも会った。

「今度遊びに行っても良いかな?」

「はい。歓迎しますよ」

楸瑛は仕事が忙しいらしく、その場で別れた。




名前を呼ばれて振り返るとそこには絳攸が居た。

「絳攸様。お世話になりました。あ、これを。あの時は、ありがとうございました。お返しするのが遅くなって申し訳ありません」

そう言って手ぬぐいを差し出す。

「ああ、俺はすっかり忘れていた」

苦笑をしてそして、懐に入れる手を止める。

手ぬぐいはもう1枚あった。

広げてみると見事な刺繍が施されている。

「これは、李の花?」

「はい。お礼です。こちらでは大変お世話になりましたし。あ、でもそれは黎深様には内緒ですよ?」

クスクスと笑いながらがそう言った。

殿は、黎深様を知っているのか?」

の言葉に驚いて絳攸が聞いた。

「ええ。秀麗は黎深様の存在を知らないみたいですけど。私は何度かお会いさせていただいております。お邸にも何度かご招待いただいたこともありますし」

「...初耳だ」

「そうですね。絳攸様にはお会いしたことありませんでしたよね」

恐らく、あの養い親のことだから教えてくれなかったのだろう。が来る日には遣いに出していたとか、そんなところだろう。

「じゃあ、また来るのか?」

「たぶん、またそのうちお邪魔すると思いますよ」

の返事に絳攸は満足そうに微笑んで、

「そのときは、茶ぐらい淹れてやる」

「それは、楽しみです。絳攸様も宜しければうちにいらしてくださいね。では」

優雅に礼をしては自分の住む町に向かって足を進めた。




ヒロインの刺繍した手ぬぐいは黎深に見つかると、即没収。
絶対そうですよね(笑)


桜風
06.4.29


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