薄紅色の花咲く頃11






が家に帰ると賑やかなことになっていた。

知らない人が居た。

「...ただいま、秀麗。こんばんは、秀麗の姉のと申します」

よく分からないが自己紹介をしてみる。

「お。姫さん、姉さんもいたのか。俺はさっき姫さんに拾ってもらった燕青ってんだ。静蘭との昔からのダチ。よろしくな」

「静蘭の昔からの友達、ですか?...友達、居たの?」

の疑問に無言を通す静蘭の代わりに燕青が

「そ。俺らすっごい仲の良かったマブダチだったんだよ」

とおどけて言う。

「そうですか。まあ、とにかくゆっくりしてください。秀麗、何手伝えばいい?遅くなってごめんね」

まあ、良く分からないが害はなさそうだ。静蘭が大人しくしているということはそういうことだ。

は燕青のことは深く考えずに秀麗とご馳走を作り始めた。


邵可が帰ってきて夕飯を皆で食べる。

燕青は茶州の人間らしいが内密の用事があって貴陽に来たらしい。内密なので内容は伏せられるが、言い方が軽いために全然内密に聞こえない。

そんな中、楸瑛から静蘭に話しがあった。

どうやら、最近茶州から山賊が流れ込んでいるらしい。

それを今度羽林軍が取り締まりに出るそうだ。

本来、羽林軍は朝廷内の警備に当たる部署だが、この猛暑で官吏がバタバタ倒れていき、警備縮小となってしまったため人があぶれているという。

元々羽林軍は体力のある人が多く、夏バテで倒れない。倒れたらそれこそ上司に鍛えられてしまうので死んでも倒れられないとか。

軍人も大変である。

それはともかく。その賊討伐に是非とも静蘭をと楸瑛の上司たちが要請しているそうだ。

静蘭は『夏』ということで渋っていたが、どうやってもこの要請から逃げ切れると思えず結局承諾してしまった。

報酬は日額『金五両』で。

楸瑛の表情を見るといきなり今、静蘭の口から大幅に増額したらしい。

楸瑛は上と掛け合ってみると言っていたが、一瞬秀麗の方を見た。

秀麗はお金のこととなると多少理性が吹っ飛ぶが、この破格の報酬にも何の反応も見せない。寧ろ、表情が暗い。

「私の代わりに燕青を置いていきますから」

静蘭は安心させるように秀麗に言った。しかも、『燕青の滞在費は楸瑛持ちで』とまで言う。

それに抗議をしようとした楸瑛に秀麗が畳み掛けるように礼を述べるので結局何も言えずに引き下がった。

しかし、何にしても秀麗の元気が無い。絳攸と楸瑛は訝しく思う。

を見てみると窓の外を眺めている。こちらも浮かない顔だ。

秀麗に用事があって来た絳攸は、そんな様子を見て今度にしようかと思っていたが、急を要するためその用事を口にする。

「ひと月ほど朝廷で働く気はないか?後宮じゃない―――外朝で」

絳攸の申し出に報酬を聞くまでもなく秀麗は承諾をした。

そして、絳攸の視線がに向く。

ぼーっと窓の外を見ていたはその視線に気付くと慌てて姿勢を正して笑顔を作る。

「何でしょう、絳攸様?」

「いや、やっぱりいい」

いつもはっきりものを言う絳攸が言葉を飲む。

「承諾は出来ないかもしれませんけど、一応、伺うだけ伺いますよ?」

「一応、着てみないか?侍僮の服」

言いにくそうにそう告げた絳攸には間抜けにも

「...は?」

と一言返すのがやっとだった。


別室で着替えているときには秀麗に言った。

「ねえ、私。そんなに童顔?」

「ううん。そうは思わないけど...ぎりぎりいけそうよ?」

着替え終わった姉に向かって秀麗は難しそうな顔をしてそう言った。

「秀麗は、違和感無くて羨ましいわ...」

「えー?それはそれで嬉しくないんだけど?」

「だって、考えてもみなさいよ。バレた時、私と秀麗、どちらがより恥ずかしいと思うの?!」

「...姉様」

「その通り。はぁー、何だって絳攸様はこんな変なことを仰るのかしら?」

「姉様が居るほうが安心だから?」

「どういう意味よ。それに、あなたが官吏になったとき、私は一緒に居ないのよ?いないことに慣れておきなさいよ」

「姉様。でも、女は官吏にはなれないのよ」

「今は、ね。でも、もし、奇跡的にそんなことが起こったらどうするの?今、あなたはその奇跡に備えてずっと絳攸様の鬼のような宿題もこなしているのでしょう?だったら、全て準備を整えないと。やっぱり、私の方はお断りしようかしら?」

結局、はこの話を断った。

しかし、後日別の仕事で結局外朝へ出仕することになった。




ヒロインまで侍僮の格好をさせようだなんて!
なんてチャレンジャー、李絳攸!!
って、それを書いてるのは私(笑)


桜風
06.6.24


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