薄紅色の花咲く頃19





只事でない雰囲気に、皆で門まで出てみる。

「このたびはうちの馬鹿晋がとんだご迷惑をお掛けして、本当に申し訳ねえです!」

「そういえば、何で秀麗は風邪なんて引いたの?」

家に帰ってバタバタしていたために初めてその原因が気になった。

小声でに聞かれた静蘭は、今までの過程を話す。

なるほど、と納得していると柳おじさんの顔色が悪くなってくる。

昼すぎに山の方へ行くと言って家を出たきり戻っていないらしい。

おじさんとしてはこの紅家に居ると思ったらしいのだが、此処に居ないことを知って心配が増す。

窓の外を見れば空から白いものがちらついてきている。

慌てて探しに出ようとした柳おじさんを邵可が引き留めて諭す。

柳晋の向かった山は昼過ぎに行って帰ってこれるところにあるはず。

「奥様のお墓のある龍山ですね。運が良ければ足跡が残っているかもしれません」

静蘭の言葉を受けて

「龍山なら馬でも回れるね。じゃ、今から藍家に戻って駿馬を三頭見繕ってこよう」

「じゃあ俺はその間に紅邸から防寒具一式と松明を用意してくる......と、い、いいですよね、黎深様」

楸瑛、絳攸が提案する。

黎深はたいして感心もなさそうにパタパタ扇を煽って騒ぎを見ていたが、養い子の言葉にやはり適当に手を振った。

それに対して絳攸はいつものことながら少しだけ凹んだが、そんなやりとりを見ていた邵可が溜息を吐いて弟の扇子を取り上げ、掌を返してぺしっと黎深の頭を軽く叩いた。

その行為に紅黎深という人物を知らない柳おじさん以外の、全員が凍りついた。

周囲の止まった時間を全く気にすることもなく、邵可は黎深を窘め、頭をはたかれた黎深は仏頂面を装いながらそこを擦りながらもどことなく嬉しそうにしていた。

邵可は次々に指示を飛ばす。

静蘭は絳攸と訪韓具一式と松明を運ぶ手伝い、そして、藍家に戻ると言っていた楸瑛にも時間が惜しいため紅邸の馬を借りるように指示を出して、柳おじさんには家で待機するように強い口調で釘を刺しておいた。

常にはない邵可の強い口調には有無を言わせない強い力があり、絳攸と楸瑛も驚いたように目を瞠ったが我に返ると慌てて頷いた。

「......龍山なら私の邸が近い」

そう仮面越しにややくぐもった声で言ったのは黄奇人で、

「もし、龍山で発見したら私の邸に運び込むといい。子供の体なら尚更限界が来ているはずだ。家人に申し付けておく」

邵可の言葉を継いで言う。

「あの、黄尚書」

が見上げて声を掛ける

「何だ?」

「私も黄邸へお邪魔してもよろしいでしょうか?一応、多少なりとも医療の心得はありますし」

「葉医師に来ていただこうと思っていたのだが?」

「それまでに柳晋くんが黄尚書の家に運ばれたら、葉先生がいらっしゃるまでの応急処置をしておくことが出来ます」

の言葉に一理有ると思った黄尚書は一度邵可を見た。

邵可は頷く。

「分かった。では、一度私の邸に戻ろう。色々と手配をしなければな」

そう言われては強く頷いた。


暫くして葉医師も黄邸にやって来た。

「おお。も来ておったのか」

の姿を目にした葉医師が声を掛けた。

「葉先生。あの、まだ患者は運び込まれていないんです」

「ああ、わかっとる。大丈夫。わしに任せておきなさい。はいつもどおりにわしの助手をしてくれたらわしも心強いってもんじゃ」

そう言って安心させるように笑った。

そして、漸く運び込まれた柳晋は剥き出しの手足に凍傷になりかけていたが、葉医師は名医の呼び名に恥じぬ腕前の持ち主で切り落とすことはないだろうと保証した。

黄尚書に「命に別状は無いが、今日一日は絶対安静」と念を押して一度帰っていった。

「良かったわね、柳晋くん」

「ねえ、姉ちゃん」

「何?」

「秀麗師に会いに行きたい!」

まっすぐ自分の目を見てそう言う柳晋には困って部屋に居た黄尚書に視線で助けを求めた。

「駄目だ」

の視線を受けて仮面の黄尚書は短くそう言うが

「お願いだよ!秀麗師にどうしても謝りたいんだ。秀麗師が風邪を引いたのは俺のせいなんだ。だから、だから、お願いします!!」

柳晋は引き下がることなく、深く頭を下げた。

困ったなぁ、と思いながらは黄尚書を見ていたが、仮面の向こうから溜息が聞こえ、

「謝ったらすぐに帰るんだ。いいな?」

そう言って許可が下りた。

「どうせを紅家へ送るついでだ」

溜息混じりにそう言った。




会話部分かなり端折りました。
葉先生はいつもで往診してくれるご様子。
いつかヒロインもそれを手伝いそう...


桜風
07.3.21


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