| 秀麗が慌てて酒楼を飛び出した影月を追いかけたが、すぐに影月を見つけることが出来た。 その間にも秀麗に追いつく。 影月の前に体格の良い男たちが立ちはだかっていた。 「あれが、青巾党ね」 腰に青い布を付けている。 青巾党のひとりが影月に向かって自分の仲間を可愛がった挙句に金を取っていったという。 秀麗ももまさかと思ったが、当の本人はぴょんと飛び上がってぺこぺこと頭を下げ始めるため、たちは驚いた。 「ええ!?僕そんなことをしたんですか?!すみません、すみません」 影月は本気のようだったが、青巾党の男たちはバカにされたようにしか思わない。 彼らは口々にすごむ。 そして、その言葉から彼らは間接的に昨晩のことを知っているようだ。 それに気付いた影月は顔を上げて 「あの―――もしかして僕、昨日これっくらいの札を落としませんでしたか?!表と裏に字が書いてあってちょっと汚い」 指でその大きさを示しながら聞いてみる。 影月の言うそれをは見たことがある。秀麗に至っては持っている。 より少し遅れて追いついた秀麗が慌てて 「ちょ、影月くん、今そんなことを言っている場合?!」 というが、 「ででででも、大切なものなんです!」 と影月は秀麗に言う。 子供2人によって完全に無視される形となった青巾党のごろつきたちは怒りに震え始めた。 そんな様子を見ては嘆息吐く。 どうしよう... 「札ぁ?おおあるぜ。今頭目の命令で集めているところだ」 と指を鳴らしながらごろつきが言い、続けて 「何なら来てみるか?!もちろん、死体でなぁ!!」 と言ったところで秀麗は慌てて影月の腕を引っつかんで走り出す。もそれに倣って一緒に逃げることにした。 「わわわわ秀麗さん、ちょっと待」 「待たない!ああいう手合いには話し合いなんて通用しないんだから」 は振り返ってみる。闘鶏のごとき雄叫びはやはり先ほどのごろつきの口から発せられているもので、確かに、秀麗の言うとおりだ。というか、鶏の方が可愛げがある。 影月も秀麗の言葉に納得しかけたが「でも」と言って反論しようとしたが秀麗に 「でもじゃない!きりきり走る!!」 と言われて慌てて従う。 いい組み合わせだと思う。 足がもつれて走りにくい。秀麗は衣の裾を片手でたくし上げて走る。振り返ったときに見えた姉は裾をおろしたままだというのに軽やかに走っている。 それはともかく。 「影月君、さっきの話本当なの?」 走りながら確認する。 「え」と聞き返す影月に 「ごろつきのお金を盗んだって話!心当たりあるわけ?!」 「ないけどあります!」 秀麗の問いに影月はそう返す。 どっちなんだろう...? は首を傾げながらも走り続けた。 そうこうするうちに、今度は前方にも青巾党の姿が現れる。 昨日の今日で絵姿でも配られたのか、影月の姿を目にすると猛突進してくる。 「あら、挟み撃ち」 「ぎゃーー!!姉さま、何そんなのんびりと!!」 影月は秀麗の手を振りほどき突然走る方向を変える。 「狙ってるのは僕だけみたいですから、秀麗さんたちは逃げてください」 「馬鹿!あなたこの街不案内なのにそんなことできるもんですか!」 そんな感じに2人がもめている間にごろつきのひとりが前の秀麗と影月に、後方からのごろつきがに襲い掛かってきた。 秀麗は反射的に手にしていた算盤の巾着袋を振り回した。 重い算盤の入った巾着袋を顔面に受けた男は「ぷぎゃ」と奇妙な声を出す。秀麗は巾着から算盤を取り出し、もう一度、男の顔に体重を乗せて叩きつける。おまけとばかりに股間の急所を蹴り上げた。 うーわー... 妹のそんな姿になんとも言えない感想を抱いただったが、こちらも変わらない。 人間も動物も取り敢えず鼻っ柱を殴っておけば痛いし当分動けないはずなどと思って、襲い掛かってきた男の鼻っ柱に思いっきり全力で拳を叩きつけてみた。 案外うまくいくものだと感心してしまう。 「い、行くわよ影月くん!姉さま!」 「す、凄い...」 足元で悶絶している男の様子に影月が思わず呟く。自分が蹴られたわけでもないのにとても痛そうな表情をしていた。 「ヘンな男には最初面食らわせて、あとは股間を蹴飛ばせって静蘭が―――」 「......言いましたけど、お見事です」 追いかけてきたらしい静蘭の苦笑に秀麗は飛び上がる。 「い、今の見てたの!?」 「......お陰で出番がありませんでした」 静蘭が出張ったらごろつきが可愛そうだ... そんなことを思いながらも走る。の心境を察した静蘭はニヤリと笑う。秀麗に微笑みかけるあの笑顔じゃなくて、結構ドス黒い感じの笑顔。 「このままだとお邸まで追いかけてきそうですね。影月君、何処に行きたいんですか?」 静蘭の問い掛けに秀麗は青くなった。花街―――しかも妓楼で賃仕事をしていると知られた日には過保護で心配性の静蘭はどんなことになるか... 「あわわ静蘭、もういいから。先に帰って」 そのとき、背後の人ごみからからぬっと大きな人影が現れた。 「秀麗お嬢さん、お嬢さん。ここにおられましたか」 振り返った秀麗とはその青年を知っている。 姮娥楼で働く若い男衆の一人で真面目で言葉少ない人物だと思っていたが、何だか今日は様子が違う。 「胡蝶姐さんから言いつかって参りました。そちらの坊と......迷惑でなければ静蘭殿もご一緒に?娥楼にお越しください。うるさい青巾党の奴らは下の者にシメさせますから」 「え、え?シメ、って?」 混乱する秀麗の代わりにが頷く。 「いい案ですね。あそこなら格式あるからちんぴらも入れないし。暗くなる前に、さ、いきましょう」 混乱する秀麗を促して影月と共に先に走らせる。 「ところで、静蘭」 並んで走る静蘭にが声を掛ける。 「なんですか?」 「姮娥楼、通ってるの?」 の投げかけた疑問に静蘭はにっこりと微笑む。背後になんだかドス黒いものを背負いながら。 「そんなわけないでしょう?」 「だよね。ウチにそんな余裕ないもんね」 「あっても行きません」 そんな会話をしながら姮娥楼の豪奢な門を目指して走った。 |
端折れるところは端折ります。
が、ヒロインも結構豪胆な性格してますよね。
この姉にしてあの妹って感じでしょうか?
秀麗の場合は静蘭の教育の賜物ですが、ヒロインの場合は天然ですね。
桜風
07.9.24
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