| 食事の準備が整い、皆が食卓を囲む。 「―――まったく、本当になんなんだ。貴様の弟は!」 「さすが、藍将軍の弟さんですよね。進士式をすっぽかすなんて後にも先にもないでしょう」 絳攸が怒髪天を突く勢いで怒れば、静蘭が静かにちくりとさす一言を笑顔で口にする。 さしもの楸瑛も今回ばかりは反論の余地はない。 彼曰く。 あの藍龍蓮に関しては把握範囲外らしい。元々、楸瑛の兄たちが無理やりとっ捕まえて国試に放り込んだようなもので、いつか逃げるなーと思っていたら本当に逃げたとこのこと。流石に早いとは思ったらしい。 「だったら落ちろ!」 絳攸の正論ともいえる言葉に楸瑛は首振った。 大概やる気のない人物だが、やるからには全力を尽くす、というのが彼の信条らしい。双でなければとっくに試験を受ける前にトンズラしていただろうと言う。 しかし、その楸瑛の言葉を聞いて「アレで全力...」と秀麗の顔は引きつった。 彼は受験期間中宿舎ではぐーすか寝ていたし、起きるときと言えば食事時。しかも、その後、笛を吹いて怪音を響かせていたあの態度、行動が全力と言うのか... 「兄が兄なら弟も弟だな!まったく、兄弟揃ってふざけた奴らだ!!」 未だに怒り心頭という状態の絳攸が言う。 そんな様子を笑顔で見守っていた邵可が残念だと口を開いた。 せっかく久しぶりに藍家直系の子が文官として朝廷に入ると思ったのに、と。 その言葉に楸瑛と絳攸の視線が鋭くなる。 以前楸瑛が国試第二位で及第したときもやっと藍家の直系が中央に戻ってきたと騒がれた。 王位継承の騒乱後でまだ政治が落ち着いていないこの状況を藍家が何とかしてくれると多くの官吏が期待していた。 しかし、そんな期待をよそに楸瑛は数年であっさりと武官に転向した。 ひとところに優秀な人材が固まるのは勿体無いだろう、と。文官は絳攸で武官は自分だと。 絳攸は、朝廷の嘆きを気にも留めずにそう言った楸瑛を馬鹿だと思った。 だが、未だに藍家の意向が読めないのも事実だ。 「前代未聞といえば、影月君だってそうだろう?受かるかもしれないとは思っていたけど、まさか状元及第とはね。絳攸の記録をあっさり更新してしまったじゃないか」 自分に向けられる厳しい視線をひとつ笑って流し、話題を変えた。 突然話題を向けられた影月は驚いたが、「いいえ」と俯く。 「確かに。年齢制限がないといっても...しかも貴族の後ろ盾なしですからね」 「そうよ、本当に凄いことよ。それなのに、自分で報告をしないなんて」 「影月君、渡しておくわね」 そう言って少し席を外していたは料紙を持って戻ってきて影月にそれを渡す。 「硯と筆それと墨はあとで室に持っていくから」 「あ、持ってます。けど、そんな...」 まだ断ろうとした影月に向かってずい、と秀麗が迫る。 「か・き・な・さ・い!」 「明日、街に出たときにでも早馬に預けるわ。今回は影月君の合格祝いでうちで出すから心配しないで。顔見知りだから特別価格に値引きもしてもらえるの」 が秀麗の言葉に続けてそういう。 「いい?お金の安全のためにも絶対に書かなきゃダメよ」 念を押すように秀麗が言う。 「お、お金...?」 影月は困惑したように秀麗の言葉を繰り返した。 その言葉を受けて秀麗は勢いよくまくし立てる。 銀80両一度に送るなんて抜け作だと言う。送るとしてもちまちまと、盗むのも馬鹿らしいくらいの小額で送るべきだと主張した。 「まあ、みんな清く正しいとは限らないからね」 盗まれるものだと思っていない様子の影月にがやんわりと秀麗の言葉を補足する。 「え、あ..あ。そうだったんですか」 影月の反応に秀麗は溜息をつく。 死にかけていたところを道寺で介抱されてそのままそこで成長していった影月は秀麗たちと並ぶくらいのド貧乏で玄人な麦飯生活を送っていたはずなのに、お金に頓着しない。 しかし一方で、秀麗は頓着しすぎではないだろうか? は2人を思って小さく笑う。 似ているけど、真反対。でも、やはり似ている。 「何、姉様?」 笑う姉に向かって秀麗は首を傾げた。 「何でもない」 首を振るに「そ?」と返して秀麗は影月に再び視線を向ける。 「いい?故郷の方たちにちゃんと確認の書状を書きなさい。ついでに、合格の連絡もしたほうがいいわ。今日中に書くのよ」 影月は嬉しそうに微笑んで頷いた。どちらがついでだろう、と面々も小さく笑う。 「そうだね。いくら礼部から早馬が出ているからと言っても、影月君本人から文が届くと郷里の方たちは嬉しいだろうしね」 邵可がそう続けた。 |
確か小説番外編で龍蓮は邵可邸に来ましたよね。鳥鳥しい鳥なべを食べに。
だったら、ヒロインも会ってるはずですよ。
もう、それについての龍蓮エピソードは書かないと思います。
本編に出てくれば話は別ですが、中々ヒロインとの接点は出て来そうにないですよね。
桜風
08.4.13
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