| 秀麗たちが休養日となった日、は朝から家を留守にしていた。 全員が揃うので夕飯の買い物を今のうちから揃えておきたいと思ったのだ。 「ね、寝すぎちゃった...」 午過ぎに秀麗たちは起きてきた。 「ごめんなさい、姉様。ご飯作れなくて」 「いいのよ。私たちは先に頂いちゃったから2人とも、お食べなさい。あ、その前に顔を洗ってしゃきっとして」 にそう言われた秀麗たちは口々に返事をして一度室を後にした。 「お父様。私、この後少し出かけることになります。夕飯までには戻ります」 「分かったよ。丁度お客様が来る予定でね。二人だけで話をしたいと思っていたところなんだ」 「...お茶、用意しておくから。それをお出ししてくださいね。決して自分で入れてみようとか思わないでくださいね」 はそう言って手早くお茶の用意をする。 秀麗たちが戻ってきたところで、彼女たちの食事の世話をしてそのまま家を後にした。 「親分」 「ああ、招待しておいたぜ」 この酒楼は親分衆のひとりの持ち物だ。 店の入り口から中の様子を伺う。男が一人、食事をしていた。多少おっかなびっくりと言った感じだがこちらの考えには気づいていないようだ。 は昨日楸瑛から借りてきた巻物を抱えなおす。絳攸宛に送られた見合いの似姿絵だ。父親にそっくりだから、それを見せて裏を取ろうと思って借りた。 「では、お願いします」 「おう」 はそのまま親分と共にその男の下へと足を向けた。 用事を終えて帰宅すると珍しい客人の姿があった。 「玖狼様。お久しぶりです」 は庭先で父と茶を飲んでいる叔父に向かって頭を下げた。 「ああ、か。久しいな。元気そうで何よりだ」 「今、お茶のお替りを淹れますね。少しお待ちください」 そう言って家の中に入っていった。 「大きくなった」 玖狼がの背を見送りながら言う。 「うん、そうだね。昔からしっかりしていてくれたから、少しくらい気を抜いてもいいと思うんだけどね。家の中で誰よりも気を張っているから」 邵可は玖狼の言葉に応える。 「それは、兄上がしっかりなさらないからが仕方なくそうなってしまったんです」 不機嫌に玖狼はそう返した。 暫くしてはお替りのお茶を持ってきた。 「玖狼様。貴陽にはどれくらい滞在されるおつもりですか?」 「もう少し、居るつもりだ」 「室を用意いたしましょうか?」 の問いには首を振る。 「いや、明日また来る予定だ。気にしなくて良い。...お前には悪いと思っている」 何を、とは聞き返さずには穏やかな笑みを浮かべて首を振った。 「いいえ。玖狼様、お気になさらずに」 そう言って控えていたに 「、書き物があるんじゃないかい?」 と邵可が促す。此処は良いから、と。 「では、失礼してもよろしいですか?」 「ああ、構わない。これを持っていきなさい。も、あまり無茶をするなよ」 そう言って玖狼はに柑子を持たせる。 「頂きます」と言ってはその場を後にしたが、「あ、玖狼様」と振り返る。 玖狼は視線で言葉を促した。 「此処ひと月、この邸を守ってくださってありがとうございます」 静かに頭を下げては今度こそその場を後にした。 「まったく、兄上を見ていてどうやったらあんなふうに育つのやら」 溜息交じりに玖狼はそう呟いた。 自室に戻っては今日の顛末の報告書を作成する。 そこまでしなくても良いと言われたが、証拠がそろってしまったためついでだと思ったのだ。 やりすぎだといわれることもないと踏んでいる。 そういえば、秀麗はどこに行ったのだろうか。 夜も更けたころ、静蘭が戻ってきた。 「あら、どうしたの?」 「邵可様は?」 「お城よ。ちょっと用事があるって」 の言葉に静蘭は目を丸くした。 「大丈夫、だろうか...」 「玖狼様が先ほどまでいらっしゃったから大丈夫でしょう。というか、何事?家の周りが騒がしいんだけど」 時々悲鳴のようなものが聞こえたりする。 「実は...」と静蘭が説明する。 はその話を聞いて目をぱちくりとした。 「やっぱり、馬鹿っているのね」 「まあ、今回のはさらに『小物』っていう言葉を付け加えた方が良いだろうが。敵が何者か理解していない」 きっぱりと静蘭が言う。 「そうね」とは苦笑しながら頷く。 「じゃあ、静蘭はまた姮娥楼に戻るのよね?」 が念を押す。 「ああ。...大丈夫か?」 一人で大丈夫か、と心配そうな表情を向けてくる。 は面食らって笑う。 「何言ってんの。ひと月近く放ったらかしで今更?大丈夫よ。黎深様が影をつけてくださっているし、玖狼様も気を配ってくださっているんだから。最強でしょ?じゃあ、静蘭、ちょっと秀麗に持っていって欲しいものがあるんだけど」 の言葉に静蘭は首をかしげて彼女を待った。 すぐに戻ってきたが手にしているものを見て少し驚いた表情を見せる。 「お願いね」と言って渡されたそれを大事そうに持って静蘭は頷いた。 |
ヒロインは玖狼の暗躍(?)を知っていました。
そりゃそうだ。
あのあばら家に居てこうやって無事に居るのだから。
紅家の事は秀麗よりも知っているということですしね。
桜風
08.8.10
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