薄紅色の花咲く頃 64






食事が出来上がる前に秀麗は作戦を思いついた。

可能なら、今すぐに行動に移してほしいと燕青に言う。

話を聞いた燕青はすぐに行動に移すことを選んだ。

「あー、もう。本当に誰も来ないでよー...」

とっぷりと日が暮れた森の中で、秀麗はシュウランとリオウを両脇に抱えてそう呟いた。

「自分で言ったじゃない。運だ、って。大丈夫。私って結構運がいいし、秀麗だって私以上に運がいいはずよ。自信を持って自分の運にすがりつきなさい」

笑いながらがなべをかき混ぜつつそう言う。

「姉様、怖くないの?」

びくびくとしたその表情で秀麗が言う。

は秀麗をちらりと見た。

「うん。まあ..何とかなるって思ってる」

「根拠は?」

「勘。というか、さっき言ったでしょ?強運の持ち主だって」

自信たっぷりにが言うものだから、秀麗も少し肩の力が抜けてきた。

「そ..そうよね。燕青が人も獣も引っかかる罠を仕掛けてくれたものね」

「燕青は、あの当時の茶州府で生き残った人なんだから。危険察知能力は長けていると思うのよね」

の言葉に納得したのか秀麗は溜息を吐いた。

「けど、ごめんね...」

そう言って自分の傍らに居る少女に声をかける。

「結局危険な目にあわせることになってしまって...」

心から反省している。

しかし、そう声をかけられたシュウランは首を傾げて心底不思議そうな表情を浮かべる。

言いだしっぺは自分だというのだ。

たしかに。

2人の仲睦まじい会話を聞きながらは不意に鋭い視線を森の方へと向けた。

その方角は石榮村ではなく虎林城の方だ。誰かが来る。

リオウも同じく気配を察したらしく振り返って気配をうかがっている。

「天幕の中に入ってなさい」

静かにが言った。

その言葉に反応して秀麗はシュウランとリオウを天幕の中に放り込む。

「姉様も!」

「ああ、私は大丈夫。えーと、1年?2年前??の姮娥楼を思い出してね」

の言葉に秀麗はそれ以上いえなかった。

確かに、なんと言うか隙のない人だった気がする。

ガサリと音がして森の中からこちらにやってきた人物の姿がやっと判別できるようになった。

「龍蓮!?」

馬上の彼は普通の格好をしている。いつもの妙に目立つ妙ちきりんな衣装ではない。

そして、その表情もいつものものとは違った。

馬から降りた龍蓮は影月の所在を問う。

「榮山に捕まってて..でも、明日。明日迎えに行くの」

秀麗の言葉に龍蓮は短く息を吸い、秀麗の肩に額を乗せた。

は静かにその場を離れて天幕に入る。

「誰が来たの?」

「秀麗と、影月君のお友達。心配で駆けつけてくれたみたい」

の返事にシュウランは安心したように微笑んだ。


「あなたが来るとは思わなかったわ」

火の番は龍蓮が請け負ってくれた。

龍蓮がなぜか強いのは秀麗も知っていたし、何より彼女の中ではかなりの変人だが、信頼できる人物としている彼なので、申し訳なく思いつつもお願いしたのだ。

パチリと焚き火の火が爆ぜる。

「...私は、影月に謝らなければならない」

「そう」

は短く応えて龍蓮の隣に座り、そのまま焚き火を眺めた。

「まだ、時期ではない」

不意に龍蓮がそう呟いた。

何について、とは言っていないがは「でしょうね」と応える。

「動かなくてもいいことだ思うが?」

「いいえ。たぶん、動かなくてはならない時期はやってくる。まあ、そうは言っても。私の場合は優先順位の話だけどね」

肩を竦めて言う。

「案外、あっという間に来るかも」

の言葉に「そうか」と龍蓮は答えた。

「ねえ、藍龍蓮」

立ち上がってが声をかける。

「間違いってのは誰にでもあるわ。人間ですもの。それを繰り返さないことが大切。天つ才に恵まれていてもね、そういう人に限ってあさっての方向を向いてしまう分野があるのよ。完璧な人間なんて人間じゃないわ。だって、そうでしょ?生きてるものは全て成長するのよ」

はそう言って、「燕青が戻ってくるまでヨロシク」と言い置き、天幕へと向かった。




龍蓮でも悩む。
天才さんだからヒロインのこと、知っているというか分かっているようですねぇ...
というか龍蓮はどのような口調だったらしっくり来るかわからない。
難しい...(汗)


桜風
09.8.11


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