薄紅色の花咲く頃 72





英姫の承諾を貰ったは一度邸に戻って葉医師を訪ねた。

本来、当主は克洵だから、茶家に話を通すなら彼に話を通すのが筋だろう。

だが、今回はそんな単純な話ではなく、縹家が絡んできそうな話だったからあの家のことを知っている英姫に話をつけた。


「来ると思っておった」

訪ねていくと開口一番にそういわれた。

「では...」

用件を省いて答えを促す。

「いいぞ。わしがここにおっても特に何かあるわけじゃないし。じゃが、機を間違えると...」

葉医師の忠告には頷く。

「ま、のことじゃからわしが言うまでもないじゃろうがの」

そう言って笑う。

「笑い事じゃないんですけど...」

「紅では、いかんのか?」

「あの耄碌しそこなったじいさんが大人しくしてくれてたらそれでも良かったんですけどね」

「じいさんよりも問題なのはばあさんじゃろうが。影月には、気をつけろ」

「...縹家の力が通じない、ということですよね?」

敵ではないという確認を思わずしてしまう。

その様子に葉医師は笑う。

「当たり前じゃ。あの体はちと違うからの。消えるときは説得するなりなんなりしてからにしておけ。でないと、気の毒じゃ」

葉医師の言葉には肩を竦めて「そうですね」と応えた。

「で、はどこまで知っとるんじゃ?」

今更ながらの態度が気になって聞いてみた。

「先ほど、英姫様とお会いしてきました」

はぐらかすかのようなの言葉だったが葉医師は興味を示す。

「ほう、あの女傑に」

「滞在の許可を得に」

「それは、手順が間違っておらんか?」

当主は克洵だ、と。

「あの家が絡んできますから、私の場合」

まあ、そうだなと納得した。

しかし、何故彼女の話を突然口にしたのか。

「何人、喰ったかと聞かれました。いや、聞くのを躊躇われて結局聞かれなかったので答えませんでしたが...」

「何人じゃ?」

「両手では足りません」

の言葉に葉医師は目を見開く。

「よく、生きておるな」

感心して口にする。先日のニセ邪仙教は自分が友人に代わって始末したが、自分gな手を出さなかったらもしかしたら彼女が始末していたかもしれない。

「だから、現当主を屠る存在だといわれているんでしょうけど」

「...食あたりには気をつけろ。それは治す術がないぞ」

葉医師の心配しているような声音には驚く。

「人でなしと誹られると思っていました。医師として進むべき道とは真逆の行為です」

「仕方なかろう。生きるために人は命を奪い、その命を背負っている。お前さんのその異能の力は、特にそうじゃ」

「詳しいんですね。葉医師は、一介の医師なのに」

「長生きしとるからの」

ほっほっほと笑う葉医師にも苦笑して応える。

「貴陽に戻ったら、秀麗のことお願いします」

「知るか。気になるならお前が帰れ」

「別に、ずっと守っててくださいなんていいませんよ。あの子も子供じゃないし。それに、命を守るのは紅邵可とし静蘭だと思います。ただ、体を守ってあげてください。いや、それもムリだ。気に掛けていてください。きっと間に合わせます」

の言葉に葉医師の眉間に皺が寄る。

「体、じゃと...?」

「今度、あの子の健康診断してみてください。たぶん、分かりますから」

不審そうな表情を浮かべつつ、慎重に頷いた葉医師には続けた。

「あと、寺子屋もお願いしますね」

「な!?わしは人が嫌いじゃ!!」

「言うほど嫌いじゃないでしょう。後進を育ててくださいねー」

しれっというに葉医師は言い返すが、彼女は既にどこ吹く風で相手にしていない。

「後悔しても知らんぞ」

「しませんよ」

にこりと微笑んでいうに葉医師は苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。

「そうそう。あの鞠」

葉医師の言う『あの鞠』が何を指しているかにあたりをつけては頷く。

「いいのか?」

「秀麗には害はありません。寧ろ、居た方がいいでしょう。この先の縹家のじいさんばあさん対策として」

肩を竦めて言うに葉医師も肩を竦めた。

「ホントに人というのは...」

「完璧な絶望ができないから、結構苦しいでしょ?」

「うるさいわい!」

葉医師の返答に満足したのか、は声を上げて笑った。




葉医師の許可ももらいました。
というか、原作では彼は貴陽に戻ってきていないんでしたっけ?
いつの間にか..というか。
原作を読んだら貴陽以外に滞在するのもいいかとか何とか言ってましたよね。
居ないのかな??


桜風
09.12.13


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