| あの秀麗たちが企画した宴は大成功に終わった。 秀麗たちが元々気さくな州牧だったし、何より、この茶州への貢献したその働きは人々が身をもって体験している。 だから、彼女たちが州牧をやめ、そして秀麗が貴陽に帰るという噂を聞きつけて皆が集まったのだ。 も忙しく大量に食事を作った。 こんなに大量に食事を作ったのは久しぶりだと思ったが、意外とそうでもない。 この茶州に来る前に、大量に出来上がった食材を捌くのに宮廷の庖厨に立ったことがる。そのときも、かなり大量に食事を作った気がした。 でも、あの時と違って、今回のは楽しかった。絶望から立ち直り、皆が笑顔を浮かべている。 は瞑目した。 「姉様、どうかしたの?」 目を瞑って手を止めた姉に秀麗は心配そうに声を掛けた。 「これが、貴方たちの行動の結果なのよね」 そう言って庭にたくさん集まった民たちの表情を見渡した。 「うん。あ、姉様。ちょっと休憩してよ。私、挨拶とか一通り終わったから。それに、身に着けて帰らなきゃいけないの。約束したから」 誰と、とは言わない。 だが、言わなくとも分かる。 「そ?じゃあ、此処ちょっとお願い」 そう言っては秀麗にその場を預けて少し離れた。 邸から出て行き、そして、驚いた。 城で一度ちらっと見たことがある人物が居たのだ。 は駆けて彼の元へと向かった。 「櫂州牧!」 案内されていた彼はゆっくり振り返る。 「おや、これは...紅州牧の姉君ですね?」 「はい。お初にお目にかかります。紅と申します」 そう言って礼をとる。 「紅州牧と杜州牧を呼んで参りましょうか?」 の言葉に櫂州牧は首を横に振った。 「今日は、宴が開かれていると聞きました。若き州牧たちとの別れの宴だそうですね」 結果、そうなっている。 は頷いた。 「では、私が顔を出すのは場違いです。鄭官吏にもそのようにお伝えしておりますからどうかお気になさらないように」 柔らかな物腰。やさしげな表情。 あの秀麗が頬を染めて「とても素敵なおじいちゃんなの!!」と訴えてきたことがあるが、とは思い出してそして凝視しすぎていることに気が付いて「失礼しました」と慌てる。 「いいえ。ところで、何故殿はこちらに?」 「あ、はい。妹が少し代わってくれるといったので散歩していたのです。いらっしゃいますか?人が多いから今櫂州牧がいらっしゃっても誰も気づかないと思いますよ。って、これは失礼でしょうか」 の言葉に櫂瑜は目じりの皺を深く刻んだ。 「では、少し覗かせていただきましょうか。軒は、目立ちますね」 「はい。徒歩でも、よろしいでしょうか?」 「こう見えて体力自慢です。お気遣い、ありがとうございます」 んー...秀麗が頬を染めるのが良く分かる。 そんなことを思いながらは櫂瑜と共に州牧邸へと向かった。 「今、此処でお願い申し上げるのは失礼だと思いますし、後で正式に申し込ませていただこうと思うのですが」と前置きをしては続けた。 「もう少し茶州に留まりたいと思っております。今、私は主上からの派遣という形ですので、それのケジメをつけてからになるとは思いますが、そこは難しくはないでしょう。ただ、茶州側で受け入れていただかないといけないのではないかと考えています。私の医療は少々常識から外れているところがあると思いますので...」 「人体切開、ですか?」 「むやみやたらと切開することはありませんが、必要とあらば行います。その場合、茶州府のお墨付きがないとちょっとまずいかな、と」 の言葉に櫂瑜は「そうですね」と頷く。 「紅州牧と杜州牧は何と?」 「既に、櫂州牧が後任に決まっているので、次の州牧に相談してもらいたいということでした。実際、秀麗が州牧である間は『お願い』って任されております」 なるほど、と櫂瑜は頷く。 「まずは、中央の解任からですね。今の州牧は中央から派遣されてきた医師の身柄の保証という形でしょうから。要請は?」 「櫂州牧がダメだと仰るかもしれないと考えておりましたので、まだ」 「では、そのようにしていただけますか。他の医師たちは...」 「彼らは全商連の人だったり、元々官吏としての医師なのでその派遣という形が継続されるだけだと思います。私だけ、臨時でしたので。このまま臨時とは言え、官吏と同じに考えられると色々と問題があるはずです」 の説明に櫂瑜は納得したようだ。 「今から文を出せば、紅州牧たちが戻られるまでにはお返事がいただけるでしょう」 櫂瑜の言葉には静かに頷いた。 |
櫂州牧のかっこ良さ。
あの秀麗が頬を染めて『カッコイイ』というくらいなのですよね。
あの、秀麗が!
物腰柔らかなステキなおじいちゃんって感じはありましたが...
頬を染めるほどではないのは、わたしが櫂州牧と直接お話したことがないからでしょうか?
桜風
10.1.10
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