| 先日から何とも不思議な気配があった。 は何度も筆をおく。 「小姫様?」 白い子供達の一人がの様子に気がつき、声を掛ける。それが合図のように室内の子供達がを取り囲んだ。 「ちょっと、気分転換に散歩してくるわ」 そう言って立ち上がるに「わたしもいっしょに」と皆が口に出す。 「ごめん、ちょっと一人で考えたいことがあるの」 そう断ってその場から姿を消す。 残された子供たちは少し落ち込んだが、が居ない間も言われた手伝いをゆっくりと自分のできる速度で進めていった。 今は冬で、もう随分と寒くなっている。 雪はチラチラと降っている。この神域は力が安定していたらそういう気候の変化についてもある程度調整できるが、冬なのだから雪が降っても良いではないかと困らない程度にが降らせるようにしている。 縹家は駆け込み寺のようなものだ。弱い者が逃げ込む場所。 しかし、逃げ込むにしてもその受付けは、相手が人間の場合は縹家縁の寺社となる。万里大山脈を訪ねて助けを求めることはまずない。尤も、物の怪などだとその方が都合が良いのだろう、この万里大山脈に直接来る方が多い。 は先日から感じていた違和感の場所へと移動した。 違和感、それは自分と同じ気配を感じるのだ。 自分は縹家の中でも相当の異端だし、同じ気配と言うものを持つものは居ないはずだ。 だったら、何故同じ気配があるのか... 「たしか、ここら...」 同じ気配と言ってもそれは微弱だ。それでも、自分の意識を邪魔する、気を散らす程度の強さではある。 雪を降らせているからもう埋まっちゃったかなー... そんなことをのんびり考えていたら人の手が見えた。木陰に隠れているので顔が見えないが、その手は何かを握っている。 足を進めては息が止まった。 「絳攸..様?」 何で迷子の達人がこんなところに居るのか。迷子になった末に此処まで辿り着いたのだろうか...? 気になりつつも感じていた自分と同じ気配は2、3日放置していた。 と、いうことは... は慌てて一度縹家本家に戻り、迅をつれて現場に戻った。 「これは、吏部侍郎じゃねぇか」 「これはまた、面白いことになってるね」と呼んでもないのに一緒に来た朔が愉快そうに言う。 「朔!迅、ちょっと運ぶの手伝って」 にそういわれて迅は絳攸の体を肩に担いだ。 絳攸の手荷物らしきものをが持ってそのまま本家に戻る。 絳攸を客室に寝かせてはその傍に椅子を持ってきて様子を見ていた。 体温も戻ったし、脈の乱れもない。たぶん、大丈夫。 しかし、何だってあんなところまで迷子になったのだろう。楸瑛は何をしていた。迷子になる前に止めないと... しかし、先ほどから気になることがある。 絳攸が頑なまでに右手を握り締めてその手を緩めないのだ。こうやって寝ているのに、その間も手の力は緩まない。 「...ん、」と絳攸が身じろいだ。 「絳攸様?」 が腰を浮かせて顔を覗き込む。 薄く目を開いた絳攸は微笑む。 「...ああ、やっとだ」と呟き、の肩から滑り落ちている髪をひと房掴んだ。 そしてまた寝息を立てる。 髪を掴まれたままのはその姿勢のまま固まった。 さて、これはどうしたら良いのかしら? 目を覚ましたので、一安心と言っても良いだろう。 ふと、絳攸の右手を見た。今目を覚ましたからか、緩んでいる。 気になってその手をそっと開いたの表情がくしゃりと歪む。 絳攸の手にずっと握られていたのは、が彼に返した腕輪だった。 が長い間身に着けていたからの気配が移ったのだろう。もしかしたら、この赤い石に自分の神力が宿ったのかもしれない。 「そっか...」 納得して、ほっとして、泣きそうになった。 絳攸が何のためにここにやって来たのか、その理由は聞かなければきっと分からない。 たぶん、うっかり迷子になったと言うわけではないだろう。 自分に、会いに来たのだろうと推測できる。 貴陽においてきた未練のひとつだと言うのに、そっちから来られたらどうして良いのか分からないではないか... はそっと溜息を吐いた。 |
絳攸とヒロインの再会。
というか、絳攸は意外と早くヒロインに会いに来ることができました。
そして、朔。
わたしの中でその存在がすっかり忘れられていました(笑)
桜風
10.11.14
ブラウザバックでお戻りください