| 年に数回、は貴陽の紅邸へ招かれる。 と、言ってもそう仰々しいものではなく、ただ、お茶にでもいらっしゃい、そういう文が紅黎深の妻の百合から送られてくる。 断る理由もなく、は紅家へ行っていた。 黎深が叔父と名乗れていないために、秀麗は紅家の邸に行った事はないが、は母が生きていたときから何度も訪問している。 あの王権争いのときは流石に訪ねていなかったが、その後生活が安定してからはまた訪れるようになった。 ただ、邵可が紅家が自分たちの家族に介入することを許していなかったため、特別何かをするでなく、ただ話をして一緒にお茶を飲むだけだった。 今でもそれは変わりなく、紅家に招かれても百合と共に菓子を作り、庭で花を愛でながら話をする。 その会話の中では教養を身につけ、貴族としての振る舞いも更に身につけた。 今回もそういう旨の文が届き、紅家を訪ねた。 一緒に庖厨で饅頭を作ったり、庭で花を愛でながらお茶を飲んだりと、昔と変わらないそういう時間を過ごす。 そんな中で、百合が、ポロリと零した言葉が気になった。 「絳攸様が、ですか?」 「ええ、そうよ。もう少ししたらあの子を旦那様が拾ってきた時期だわ」 「いつ、ということまでは、分かりませんか?」 「そうねぇ。日記でも見たら分かるのかしら?ちょっと待ってなさい」 そう言って百合は席を外した。 別に知らなくてもいい事だが、は知りたかった。何だか、その日は特別の日のような気がしたのだ。 「あったわ。これよ」 「見せていただいてもよろしいですか?」 「勿論よ。どうぞ」 そう言って差し出した百合の日記を目にする。 そこには、当時突然子供を拾って帰った自身の夫、つまり黎深とその拾われ子の絳攸のことが事細かに記されていた。 「あの子は本当に聡い子でね。教えたことは一度で覚えたわ。反抗期も無かったし」 正しくは『反抗できなかった』ではなかろうか? そう思いつつも百合のしたためた日記を読み進んでいく。 「黎深叔父様はスモモがお好きなのですか?」 「ええ、そうみたいね。旦那様は花も実も李がお好きのようよ」 「だから、絳攸様は『李』姓なんですね」 「旦那様は素直でないから、あの子にそれが伝わっているかは分からないけれど」 そう言って百合は苦笑し、は思わず噴出した。 黎深の愛情は非常に伝わりにくい。たぶん、伝わりきっていない... はふと、以前読んだ本を思い出す。 そして、それを考えるとなんだかワクワクしてきた。 「どうしたの?何だか楽しそうな顔をしてるわよ」 「いえ、何でもないです」 「そう。でも、貴女が今考えていること。私の手伝いが必要なら声を掛けなさい。力になるわ」 「ありがとうございます」 の返事に、百合は優しく微笑み、優雅にお茶を一口飲んだ。 |
李の花の色は白いとか。
まあ、赤は他のキャラクターで使ったので、李の色で。
正月で年を取るようなので、それに合わせました。
桜風
07.1.1
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