白 3





と並んで進んでいた軒は黄尚書の軒だった。

「お久しぶりです、黄尚書。先日は秀麗のお見舞いに来てくださってありがとうございます」

ポツポツと雨粒が降りてくる。

「いや、大したことはしていない。どうした?がこんなところにいるのは珍しいことだろう。...これでは話しにくい。軒に乗れ。今度はが風邪を引くぞ」

仮面越しの圧力には思わず頷き、言われるとおり黄尚書の軒に同乗した。

「すみません」

「構わん。それで、何故こんなところに居たんだ?」

「欲しいものがありまして。ちょっと見てみたのですが、無理でした...」

「欲しいもの?」

「スモモの糖蜜漬けです。でも、無理なので別のものを探します」

「糖蜜漬け?誰かまた風邪でも引いたのか?」

少し心配そうな声に聞こえたは慌てて手を振り

「いえ。そんなんじゃないんです。みんな元気です」

と否定した。

の口調や様子から、それが何のために欲しいと思ったのか聞いても答えないだろうと黄尚書は思った。

そして、決して自分が贅沢をしたくてそれを欲しているわけでもないということも。

「では、近々丸1日手の空いている日はあるか?」

そう言われては首を傾げた。何故そんなことを聞くのだろう。

「ないのか?」

答えを促されて自分の予定を思い出す。

「4日後、が空いています。あ、でも。夕飯までには帰らないといけないのですが...」

「糖蜜漬けが要るのは?」

「7日後の朝には...」

「そうか。では、4日後私の邸に来い」

黄尚書の思いもよらないその言葉には言葉を失う。

「え、あの。どういうことでしょうか?」

「賃仕事をしに私の邸に来いと言っているのだ。報酬は、スモモの糖蜜漬けだ。どうする?」

黄尚書のこの申し出の真意が分かったは彼を見つめた。

「どうする?」

もう1度答えを促されて

「やります!やらせてください!ありがとうございます!!」

と言って頭を下げた。


4日後。

は朝早く家を出た。

秀麗たちはそんなを訝しく思いながらも見送った。

夏に世話になった黄邸へ向かう。

入り口を見て、一瞬怯む。

やはり変な邸だ。

が、そう思っては失礼だ。とても親切な人が邸の主人なんだ。

フルフルと頭を振って改めて門番に声を掛け、中に入れてもらった。

何だか以前来たときよりも家の中に人が少ない。不思議に思いつつも黄尚書の部屋に通される。

「よく来たな」

家の中でも仮面着用の黄尚書に、は「よろしくおねがいします」と礼をした。

「それで、私はいったい何をすればよろしいのでしょうか?」

がそう言うと

「家の中のことをしてもらう。丁度いい機会だったから半数以上の家人には休暇を与えた。夕方には戻るからお前は夕飯に間に合って帰ればいい」

なるほど、それで家の中の人数が少ないのか...

は納得し、早速仕事に取り掛かった。

昼食を準備しているときにふと気になる。

今日は公休日だったか?

「黄尚書。あの、今日は公休日でしたでしょうか?」

昼食をとっている黄尚書に先ほどの疑問を口にする。

「いや。違う。邵可殿は出仕されただろう?」

「ええ、その支度をしていました。じゃあ、黄尚書は...」

「柚梨、戸部侍郎が少しは休めと煩いからな。今日は休んだ」

なるほど、と思う反面、そんなことして戸部は大丈夫なのかと少々不安になる。また誰か倒れてしまわないか?

「大丈夫だ。仕事はあらかた持って帰っている」

顔に出ていたのか、黄尚書はそう声を掛けてきた。

「そういえば。家の事は済んだのか?」

「はい、黄尚書のお部屋以外は掃除も終わりました。他に何かやることがあるかお聞きしようと思っていたんです」

この黄家の広さは邵可の邸に比べて少し狭い上、元々掃除が行き届いている。

家事が得意で掃除をし慣れているは午前中だけでそれらを済ませてしまったのだ。

庭は手入れが行き届いているし、家庭菜園があるわけでもないから世話をする必要がない。

屋根だって立派な瓦が綺麗に並んでいるし、壁も綺麗で色が剥げているわけでもない。

「では、午後は私の手伝いをしてもらおう」

黄尚書の言葉には固まった。


これは鳳珠夢ではありません。
あくまで絳攸夢!
説得力がありませんけど(笑)


桜風
07.1.8


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