あまくてにがい 5








 その日、軍部に衝撃が走った。城ケ崎が体調不良のため欠勤したのだ。
 すわ鬼のかく乱かという噂が耳に入った鳥居は溜息を吐く。城ケ崎はあの外見で鬼のような将官なのだ。
 多くの下士官たちは彼を恐れている。「中佐はさすがであります」と尊敬の念を向けられることもしばしばだ。
 勿論、鳥居にとっては上官というよりも友人という色の方が濃いためあの厳しさも気にならない。それを補って余りある失態を目にしているからだ。
 これはチャンスなどを浮き足立っている者たちにけん制をした鳥居は、仕方なく城ケ崎の見舞いに行くことにした。



「ごめんください」
 門の外から声を掛けると「はい」と応じたのは立香だった。
「鳥居様」
「こんにちは。城ケ崎少将のお見舞いに参りました」
「どうぞ」と門を開けて中に入るよう促す。
「ベディヴィエールは?」
「お部屋です」
「千恵さんは?」
 玄関を入ってから問う。屋敷の中が静かだ。
「お買い物です。わたしは重要な任務として留守役を仰せつかりました」
 クスクスと笑いながら立香が応じた。
「こんなか弱き女性だけを置いて。そういえば、徳三さんは?」
「か弱き女性の千恵さんのお手伝いで一緒にお買い物に行かれました」
 なるほど、と納得する。
「ということは、今はあなただけがお留守番を?」
「城ケ崎様も居ますけど」
「あれは数に入りません。では、こちらをお預けしますね。お見舞いの品です」
 鳥居から受け取った風呂敷には林檎と蜜柑が入っていた。
「じゃあ、今から頂いた林檎を切っちゃいましょう。鳥居様、お茶をお淹れします」
「では、頂いてからベディヴィエールの顔を見に行くことにしましょう」
 そう言った鳥居の顔を立香がじっと見た。
「何か?」
「いえ。城ケ崎様のお名前って言いにくいのに鳥居様は難しそうではないなと思って」
「ああ」と彼は苦笑する。
「厳男と呼べば面倒くさい拗ね方をしますからね」
「……は?」
「は?」
 ぽかんと見上げる立香に鳥居は首を傾げ、そして思い至る。
「まさかと思いますが。あの男はあなたに自分の名を告げていないのですか?」
「えっと、このお屋敷でお世話になるって話をしたときお尋ねしたのですが、誤魔化されたと言いますか……屋敷の中では「ベディさん」とお呼びして外では「城ケ崎様」とお呼びするので困らないし、ご本人が言いたくないことを追及するのも気が引けたので」
 どうしてか鳥居の視線が痛い。
「いいですか、立香さん。まともな人間なら名を名乗ります。たまたまベディヴィエールがあなたに危害を加える気がない者だったから良かったものの、本来、名を名乗れないような者を信頼してはいけませんよ」
 あまりの正論に立香はグッと詰まる。
「お返事は?」
 促された立香は「はい」と神妙に頷いた。
「よろしい」


「鳥居様は本当に城ケ崎様と仲が良いんですね」
 彼の前に湯呑を置きながら立香が感心した。
「不本意な評価です」
「そうですか? わざわざお見舞いにいらっしゃってるのに説得力ないですよ」
 立香の言葉に鳥居は沈黙して茶を一口飲んだ。
「城ケ崎少将は軍部一の色男ですから、上官たちののご息女がお見舞いに来られたいと揉めかねないので、場を収めるために仕方なくです」
 俄かに立香が複雑そうな表情を浮かべたような気がした。色々と面倒を掛けられている身としては少しくらいの意趣返しがしたい。
「鳥居様も人気がありそうですよ」
「私の場合、身分も立場も城ケ崎少将に比べると劣りますからね。もちろん、多くの女性に声を掛けられていますよ」
 ぱちんとウィンクをする鳥居に立香は面食らった。
「そういえは、ベディヴィエールはそんなに悪いのですか? どうせただの風邪だろうと思って来たのですが」
 わざわざ休むということに違和感はあった。
「ただの風邪だとお医者さまから言われました。お休みになられたのは、わたしがちょっとおせっかいを焼いたと言いますか……」
 包丁を取り出しながら立香が返す。鳥居からもらったばかりの林檎を切る準備を始めた。
「おせっかい?」
「はい。父は、診療所に来る病気の方には厳しかったんです。「体を休めなくて病気が治るものか」と。今朝、体調の悪そうな城ケ崎様を目にしてふとそれを思い出したのでお休みするように強く言ってしまって……でも、休んだことで城ケ崎様に何か不都合があったのではないかと今更ながらに反省しているところです」
 立香の言葉に鳥居は半眼になる。どうせ心配されたことを喜んで休むことを決めたのだろう。浮かれている様子が目に浮かぶ。
「藤丸先生の診療所には町の方がいらっしゃるのが殆どだったでしょうから、先生は厳しく休むように仰ったんでしょうね。しかし、ベディヴィエールは曲がりなりにもあの容姿で軍人ですから、多少の無理は利きますよ。パッと見優男ですが、鍛えていますからね」
 鳥居の言葉に立香は頷いて「城ケ崎様は着痩せされますよね」と同意した。
「まさかとは思いますが、あの男は裸で屋敷の中をうろついているのですか?」
「いいえ! それはありません」
 立香は驚いて手を振る。握っている包丁をぶんぶんと振られ、少し距離があるとはいえ鳥居は警戒した。
「では、どうして? あと、包丁は振らない方が良いと思いますよ」
「あ、ごめんなさい」と一度包丁を置いて「鳥居様はご存知でしょうか。わたしが一度城ケ崎様を起こしたことを」と続けた。
「あー、災難だったアレですね」
 鳥居の言葉に立香は苦笑する。
「どうやら、城ケ崎様は寝るときは服を脱がれるみたいで。元々わたしが目にすることはないのが前提だと思うので城ケ崎様は悪くないです」
「……そうですか」
 そういう癖があったような気もする。
「でも、鳥居様は士官学校時代によく城ケ崎様を起こされていたと聞きました。そして、時折あの寝起きの……」
「時折ではなく、ほとんど毎回ですよ」と訂正したかったがそれはなんとなく大人げない気がした。意趣返しは先ほどしたし。
「まあ、そうですね。慣れればなんてことない、といえなくもありませんが」
 出来れば避けたい。
「そ、そうなんですよね。みなさん、誰でもって聞いてびっくりしました。わたしだけなのかなって勘違いしてしまったのが恥ずかしいくらいで」
 再び林檎を切るために鳥居に背を向けて少し早口になって言う立香に「そうですね」と同意をしたが、少しだけその反応に違和感を覚える。
 思い付く事象はあるが、それは一旦保留にすべきことだろうと思いながら、鳥居は湯呑に手を伸ばした。
「声をお掛けしたら突然抱きしめられてしまって。思わず押し退けて逃げてしまいました」
 ブッと音がして立香が振り返ると鳥居が咽ていた。
「大丈夫ですか?!」
 慌てて手ぬぐいを彼に渡してテーブルの上は布巾で拭う。
「いえ、失礼。そうですか。ですが、それは殴ってもいいですよ。正当防衛でしょう。さすがに私でも殴ります」
 鳥居の言葉に立香は首を傾げた。
「士官学校時代にはその癖はなかったのですか?」
「……あー、あったかもしれません。遠い昔なので忘れていました」
 そんな癖はなかった。城ケ崎は、理性の働いていない寝起きにやらかしていたようだ。
 湯呑に残った茶を飲み干して「ベディヴィエールの顔を見てきます」と声を掛けて席を立った。
「すぐに林檎をお持ちします」
「わかりました」


 ドアをノックすると部屋の中から弾んだ声が聞こえる。
「お加減は如何ですか」と入ってきた鳥居を見てあからさまに落胆した友人に彼はこれ見よがしの溜息を吐いた。
「君という人は」
「何かあったんですか?」
「上官の令嬢たちによる君の見舞い争奪戦が始まりそうだったから立候補してきたんだ。君が寝込みを襲われるのはもうどうでもよくなってきているのだけど、この屋敷にあの女性たちが来るなら千恵さんと立香さんは不愉快な思いをするかもしれないからな」
「それは、助かりました」
「君はいい加減、自分が使える札とその最も有効な切り方を把握しておくべきだと思うが?」
「私に札など……」
 首を振る城ケ崎に鳥居が溜息を吐いた。
「今は私が手を貸すことが出来ているが、私が手を出せないことが相手となった場合、君は自分で何とかしなくてはならなくなる。その場合、君はどうやって戦うつもりだ?」
「それは……」
 言いよどむ友人にため息をついているとドアがノックされた。
「どうぞ」と城ケ崎が応じると遠慮がちにドアを開いて覗いてきたのは立香だった。
「お仕事のお話をされていましたか?」
 ドアの前に立つと部屋の中の声が漏れ聞こえた。途切れ途切れなので全容は把握できなかったが「戦う」などの単語も聞こえてきて少し迷った。
「いいえ、大丈夫ですよ」
「鳥居様からお見舞いの品として林檎を頂きましたので剥いてきました」
 皿を二つ乗せた盆を持っている様子を目にした鳥居が部屋のテーブルをベッドのそばまで運んだ。
「ありがとうございます」
 礼を口にして立香がそれに盆を置いた。
「ああ、ウサギさんですね」
 鳥居が半眼になる。「ウサギさん」とは……
「はい。前にウサギさんを作ったらお喜びになったのを思い出したので。では、また時間を見て下げに来ますね」
「立香さんも一緒にどうですか?」
「ベディヴィエール。君は風邪を引いているのだろう? 立香さんに移してしまったらどうするつもりだ。君みたいに体力が有り余っているならまだしも」
 正論に反駁することができず城ケ崎はしゅんと項垂れる。
「また今度お付き合いさせてください」
 立香の言葉に城ケ崎は「ええ」と少し力なく頷いた。
 ドアが閉まるのを確認して鳥居が城ケ崎に視線を向ける。
「君は意外と隠しきれていないから自重した方が良いぞ」
 何の事か理解できず言葉の続きを待っていたが、鳥居は親切に教えてくれる気はないらしく、シャクシャクと林檎を咀嚼している。
「よくわかりませんが、わかりました」
「それと、見込みはあると思う。だが、君の間の悪さが遠回りをさせているような気がしないでもないが……」
 これまた主語のない話だが、それについても「わかりました」とわからないままに承知してみた。




「おはようございます」
 朝食の支度を手伝っている立香が振り返ると顔色の良くなった城ケ崎が立っていた。
「おはようございます。お加減は如何ですか?」
「ええ、良くなりました。今日は出勤してもよろしいですか?」
おどけて言う城ケ崎に立香はクスリと笑って「はい、いいですよ」と許可した。


 出勤すると色々と声を掛けられた。体調不良のための欠勤といういつもと違うことをしたのだから当然ではあるが鬱陶しい。
 昨日は心穏やかに過ごすことができた分、この落差にため息が零れた。




◇◆





 ガタガタと窓枠が振えて鳴る。
 外はごうごうと風が吹いており、鋭い稲光の後に木を割くような雷鳴。

 春の嵐がやってきた。
 そろそろ暖かくなるのだろう。
 読書をしようにも音がうるさいし、外の木々の影が動いて気が散る。
 溜息を吐いた城ケ崎は読書を諦めて就寝することにした。
 喉の渇きを覚えて台所に向かう途中、ガタタという物音を耳にする。
 風で何かが倒れた音かもしれないと思ったが、それが立香の部屋の方から聞こえたもので、念のため足を向けてみた。
「立香さん?」
 眠っているかもしれないと思い、声を落として小さくノックをする。
 返事がなく、そっと扉を開けて隙間から部屋の中の様子を窺ってみたが何者かが侵入した様子もない。
 やはり外で何かが倒れたのだろうと思い、ドアを閉めようとすると丁度落雷があった。
 ガタタと先ほどよりもはっきり聞こえる物音は立香の部屋の中からだった。
「立香さん、入りますよ」
 声を掛けてドアを開けた。
 部屋に入り、ベッドに視線を向けるが立香の姿がない。
「立香さん?」
 緊張した声音で彼女の名を呼ぶ。少し掠れた声が情けない。
 視線をめぐらせるとクローゼットが少し開いており、人の気配がある。
「立香さん?」
 クローゼットのドアを開けて中を見ると黒い塊が隅っこで丸くなっている。
 立香だ。
 耳を塞ぎ、揃えて立てている膝に額を付けている姿に、何をしているのだろうと城ケ崎は首を傾げる。
 ドン、と屋敷が震えるほどの落雷の音に彼女はこれ以上にないくらい丸くなった。
(ああ……)
 やっとわかった。彼女は雷が怖いのだ。
 どうして今まで気づかなかったのだろうか。彼女がこの屋敷にやってきて半年以上経っている。秋も夜中に雷鳴が轟く嵐の日が何度かあった。
 それでも朝起きて目にした彼女はいつもどおりと変わらなかった。
 もしかしたら気づけたかもしれない。気づかせまいと彼女は努力をしていたとは思う。だが、碌に眠れていなければ顔に出ていただろう。
 彼女の顔を見ることができるというだけで浮かれていた自分が幼稚で恥かしい。
「立香さん、大丈夫ですよ」
 声を掛けてみたが反応がない。
 少し思案した城ケ崎は彼女をひょいと抱えた。
 耳を塞いでいた手を離した彼女は目を丸くして城ケ崎を見上げている。
「クローゼットの中は、私には狭いですから」
 にこりと微笑み、彼女を抱えたまま城ケ崎は部屋を出た。
 向かったのは客間だ。
 ソファに彼女を下ろして暖炉に火を入れる。
「少しお待ちくださいね」
 立香に声を掛けて部屋を出ようとすると寝間着の袖を掴まれた。
「どこに?」
 不安そうに声を掛けられる。
「毛布を取ってきます」
「……ついて行ったらだめですか?」
 震える声で問う立香に「いいえ、構いませんよ」と城ケ崎は頷いた。
 袖を掴んでついてくる彼女の手を取る。
「大丈夫ですよ」と言ってそのまま城ケ崎の寝室に向かった。
 ベッドの上の毛布を持って客間に戻る。
「座ってください」
 ソファに腰かけるように立香を促して隣に城ケ崎も腰を下ろす。
 立香と自分をまとめて一枚の毛布を掛けた。
「立香さんは雷が苦手なのですか?」
「子供みたいで……」
 恥かしそうに俯く立香に「いいえ」と城ケ崎が柔らかい声を掛ける。
「他には何が苦手ですか? あなたの「怖い」を教えてください」
 不思議そうに見上げる彼女に城ケ崎は微笑んだ。
「あなたが怖いと思うものからあなたを守りたいのです。どうか、ひとりで我慢しないでください」
 ぽかんと見上げる立香に城ケ崎は首を傾げた。何か変な事を言っただろうか。
「城ケ崎様って」
「ベディです」
「ベディさんって、物語に出てくる騎士様みたい」
 目を細めて笑う彼女に視線が、心が奪われる。
「あ、でもそうなると守られるのはお姫様だからそれは図々しいか」という立香の独り言は彼の耳に入っていない。
 背を曲げ、彼女に顔を寄せる。
「それは」と声を発したのは立香に触れるかどうかというすぐ傍で、彼女は思わず体を引いた。
「光栄です」
 立香の手を取ってその甲に唇を当てた。
 外で瞬いた光で彼女の顔がはっきりと見えた。目を丸くして赤く染まっている。
「騎士とは、こういうことをするのでしょう?」
「よ、よく知りませんけど」
 城ケ崎から顔を逸らして言う立香はその場から逃れようとせず、大人しく座ったままだ。
 城ケ崎はほっと息を吐く。
(危なかった……)
 こんなところで手を出してしまっては今まで築き上げてきた信頼と信用が崩れ去ってしまう。
 紳士的に振る舞うは理性のなせる業とはよく言ったものだ。

 雷鳴と風が窓を叩く音、そして時々薪の爆ぜる音。その中に微かに人の歌声が混じっていた。
「お上手ですね」
 視線を向けて「そうですか?」と城ケ崎が問い返す。
「ええ、とても。何という歌ですか?」
「さあ。はっきりと覚えているものではないのです。父が言うには子守唄ではないかと。今となっては私の出生地の言語を離すことは難しくなっていますので。歌詞も何となく覚えている近い音を出しているだけですよ」
 無意識に口ずさんでいた歌声を褒められて城ケ崎は面映ゆい。
「続きを歌ってください」とねだられ、ますます恥ずかしくなる。
 だが、城ケ崎は立香を抱き寄せ、ぽんぽんと子供を寝かしつけるように優しくゆっくりとしたリズムで彼女の腕を叩きながら歌を続ける。
 間もなく少し重みが加わった立香の存在を感じた。
 顔を覗き込むと寝息を立てている。
 彼女の額に口吻けを落として「良い夢を」と声を掛けて再び子守唄を口ずさむ。



「おはようございます」
 声がして振り返ると千恵が出勤してきたようだ。
「おはようございます」と声を落として返すと彼女が客間を覗き込んできた。
「おや、坊ちゃん。どうされ、……立香さん?」
「ええ。事情は後でお話します」
「わかりました。……坊ちゃん、目の下に隈が。一睡もされていないのですか?」
「ええ、いえ。どうでしょう。うとうととはしたと思います」
「ん、」と声を漏らして立香が離れていく。
「おはよ……おはようございます」
 寝ぼけていた表情から一転、立香は蒼くなった。
「おはようございます、立香さん」
 城ケ崎がにこりと微笑んだ。
「ごめんなさい、あの……ご迷惑を」
「迷惑? 昨晩も言いましたよ。あなたを「怖い」から守らせてください。次に嵐の夜が来るときには、お茶とお菓子の用意をしておきましょうね」
 微笑んで城ケ崎は立ち上がった。立香の体重を感じていた腕は少し痺れている。安心して体を預けられていたのだと喜びを感じた。
「坊ちゃん、少しお眠りになりますか?」
「いいえ。今寝たら確実に起きません。部屋にいますので、食事が出来ましたら声を掛けてください。立香さんはお休みになっては?」
「いえ。なんだか気持ちよく眠りこけてしまっていたので大丈夫です。千恵さん、お手伝いします」
「では、お願いします。でも、その前に着替えてきてくださいね」
 指摘されてハッとなった立香は慌てて自室に向かって行った。
 先ほどまで城ケ崎に体重を預けていた方の腕がぽかぽかしているようで、なんだか心がむず痒い。
 ふと視界に入った自分の手を見て昨晩口吻けられたことを思いだす。
 直後の稲光は全く怖くなかった。その光を背に受けた城ケ崎の顔はよく見えなかったが、いつもと少し違うようにも見えて思わず顔をそむけてしまった。
 城ケ崎のまねをして自分の手の甲に唇を落としてみた。カッと顔が熱くなる。
 聞いた事がないくらいの心臓の強い鼓動に不安を覚えつつも、どこか心が踊っている。何だが足元もふわふわする。
 初めて覚えるこの感覚は何というのだろうか。







桜風
18.2.28初出
(19.9.15再掲)