京を二分する結界を破壊すると季節は巡り、冬が来て、それからというものほぼ毎日雪が降っている。

千歳の結界のお陰で時は止まり、季節はずっと秋のままだったが、それが正常に戻ったのだ。

そういえば、この時期は例年良く雪が降っていたよな...

空を見上げてふわりふわりと舞う雪を眺める。


「わあ!」と前を歩く花梨が声を上げた。

勝真が視線を戻すと共に歩いているイサトがこけた花梨を見て呆れている。

「お前、本当に鈍いなぁ...」

苦笑交じりにそう言ってイサトが手を差し出し「ありがとう」と花梨が彼の手を取る。

「コイツのお陰、か...」

ポツリと言葉が零れた。

花梨の手を引いて彼女を立たせているイサトは乳兄弟だ。

ある事件がきっかけで彼の家族とは疎遠となり、八葉として彼女にもとに集い、共に京のために戦っているうちにそのわだかまりも消えた。

異世界から彼女がこの京の町にやってきて全てが動き出した。


少し前を行く花梨が空を見上げる。

「前を見ろ。またこけるぞ」

勝真が声をかけると花梨は振り返って後ろ向きに歩く。

これまたこけそうだ。

「だって、綺麗なんですよ」

「お前の世界では、雪は降らないのか?」

「地域によりますけど。私の住んでいた街にはあまり降りませんでした。こんなに積もる事もないし」

花梨の言葉に「え?」とイサトが声を漏らす。

「お前の世界、少し前の京みたいに季節が止まっていたのか?!」

イサトの言葉に花梨は「違うよ」と手を振る。

「そうじゃなくて、暖かい..のかな?けど、こんな風に降る雪って、なんだか桜みたい」

そう言って両手を軽く広げた。

ちらと勝真は再び空を見上げる。

言われてみれば、そうかもしれない。

「桜は花梨の世界にもあるのか?」

イサトが問うと「うん。すっごく綺麗!」と花梨は笑顔で答えた。

「へえ...けど、こっちの桜もすげーんだぜ。な、勝真」

「ああ、そうだな」

話を振られて勝真は頷く。

「お前にも見せてやりたいな」

花梨はいずれ自分の世界に帰る。おそらく、春までは留まっていないような気がした。

「お!勝真、いいこと言うじゃん!花梨、春までこっちにいろよ」

「私がこっちにいられるのは龍神様の力のお陰みたいから、私じゃわかんないよ」

困ったように花梨が言う。

「何だよ、ケチケチするなよ。龍神様だって、今花梨がすげー頑張ってるの知ってるんだからそれくらいのわがまま許してくれたって良いじゃん」

少し拗ねたようにイサトが言い、「なあ、勝真」とまたもや勝真に水を向けた。

「全くだな」

勝真の言葉に花梨は目を丸くし、話を振ったイサトもちょっと驚いている。勝真も実は驚いていた。

「あんまり無茶を言うなよ。花梨が困っているだろう」

おそらく、普段の勝真ならそう言っただろう。自分もそういうつもりだったが、それとは真逆の言葉、つまり本心が出てしまった。

桜の花びらが舞い散る中に佇む花梨は、きっと美しいのだろうな...

先ほど花梨が雪を桜に喩えたときに勝真の脳裏に浮かんだ。

暖かな陽だまりの中、舞い散る桜を皆で見上げて杯を傾ける。

きっと穏やかな、尊い時となるだろう...

「じゃ、じゃあ。龍神様にお願いしてみます」

俯いて言う花梨の耳が少し赤かった。

先ほどの話だと、彼女のこれまで過ごしていた異世界は暖かい気候とのこと。

おそらく、こんなに雪が降り続く寒さには慣れていないのだろう。

「寒いか、花梨」

「だ、大丈夫です」

「しかし、赤いぞ」

「そんなことないです」

変なことを言うな、と勝真は首を傾げた。

そんな勝真を見てイサトは盛大に溜息を吐いたとか吐かなかったとか。









<あとがき>
すでに、誕生日のお話はネタが切れているので関係の無い話。
けど、勝真さんの誕生日をお祝いしたくて仕方ないので、この日に勝花SSは欠かせない。
勝真さん、誕生日おめでとうございます!
今年もあなたにとってステキな1年になりますように...!!


ブラウザバックでお戻りください