ひだまり





望美の姿が見えない事に気がついた九郎はキョロキョロと周囲を見渡す。

やはり、この周辺には居ないようだ。

現在山の中で、周囲には野生の獣が少なくない。

望美の実力は知っているがやはり少し気になる。

九郎はそのまま山の中に分け入った。


まだ昼間だからそんなに心配しなくても良いとは思う。

思うのだが、やぱり気になる。

「あいつはああ見えて、抜けているからな。この間も木の根に引っかかってこけそうになったし、その前は川に足を突っ込んで滑っていた。さらに...」

九郎は何かに言い訳をするように望美の意外なドジっ子ぶりを口にしていた。

しかし、その場に他のものが居たらそんなことあったっけ?と首を傾げることが混ざっていることに九郎は気がつかない。

傍に誰も居らず、そんなツッコミを入れてくれるものが居ないためだ。

さらには、何故自分がそこまで望美のあれやこれやを目撃していたかについても、その理由は九郎にはさっぱり自覚がないのだろう。

今だって、他の誰かが気づく前に望美の不在に気がついたの九郎だと言うのに...


望美を探して暫く彷徨っていると一瞬目に眩しい光が刺さった。

反射的に顔を逸らして、そっとそちらを見る。

今は、その光は向かってこない。

何だ...?

気になってそちらに足を向けてみることにした。

腰に佩いている刀に手を添えたまま歩いてみると、大きな木の根元で無防備な寝顔をさらしている尋ね人が居た。

「まったく...」

源氏の龍神の神子として戦場を駆けている彼女からは想像できないくらいの穏やかな寝顔だ。

「無防備すぎるぞ」

少し恨めしそうに九郎は呟く。

またキラリと何かが光った。

いや、もう『何か』の正体は分かった。

望美の剣だ。

剣の稽古でもしていたのだろうか。その途中に少し疲れて休憩していたらうとうとと...

「まあ、それも仕方ないだろうな...」

九郎は望美の隣に腰を下ろして呟く。

背を預けている大きな幹は心地よいし、大きく広がっている枝には葉が茂っている。

それがちょうど良い日影となり、風が吹けばさやさやと木漏れ日を落とす。

つまり、ここは昼寝にぴったりの場所だったのだ。

起こして皆のところに戻ることも考えたが、まあ、もう少し良いだろうと九郎はそのまま望美の寝顔を覗き込んでいた。



「おやおや...」

望美と九郎の不在は結構早くに皆が気がついた。

何かあったのだろうか、など皆が心配になって手分けして探すことにした。

弁慶が少し足をのばしてみると、そこに仲良く昼寝をしている2人を見つけたのだ。

なんとも微笑ましい光景だ。

方や、源氏の総大将として兵たちを指揮している若き武士。

方や、龍神の神子として源氏の兵士たちの士気を高めている少女。

今の2人は年相応な表情で寝息を立てている。

「起こすのは..気が引けますねぇ」

「では、もう少しこのままにしておこう」

弁慶の呟きにリズヴァーンが応える。

一緒に来たわけではないので、突然のリズヴァーンの声に驚いても良いのだが、弁慶は驚く様子も見せず「そうですね」と応えてその場を後にすることにした。


九郎が目を覚ますと既に青空から満天の星空に変わっていた。

「おはようございます」とすぐ傍から聞こえてきた声に九郎は慌てる。

「な!?何で起こさなかったんだ!!」

「だって、九郎さんいつも忙しそうにしてるし。気持ちよさそうに寝てたんです」

それはお前だ、と言いそうになって九郎は言葉を呑んだ。

その代わりすっくと立ち上がり手を差し出す。

「帰るぞ」

望美は微笑んで「はい!」と頷き、その手を取る。

「みんな心配してますね、きっと」

「白龍が特にな」

仲間の様子を想像して九郎は苦笑した。

「そうかも」

望美も想像したらしく、苦笑してそのまま歩き出す。

星明りの山道は危険だから...

などなど何故か自分に言い訳をしながら九郎はのぞみの手を離さず、そのままいつもより少しゆっくりな歩調で皆の元へと向かった。






<あとがき>
九郎さん、お誕生日おめでとう。
遙か3は記憶に残るほどプレイしていないので、なんともかんとも...
CDドラマもそこまで聞き込んでいないから、望美ちゃんの口調とか微妙です(汗)