| 「ねえ、いい夫婦の日には何をするか知ってるの?」 また人の家で... 宮田は吐きたい溜息をぐっと堪えて自分をじっと見ているを見た。 「さあ?」 「おばか!」 の反対側に居るが間髪入れずに非難した。 もう、帰れよ... そう思いながらも顔に出さない。ポーカーフェイスに慣れっこで良かったとつくづく思う。 「じゃあ、何をする日なんだよ」 「パートナーを大切にして、楽をさせてあげる日」 それ、本当か? 絶対にその『パートナー』ってのは『』限定だろう?少なくとも、2人の間ではそうだろう? 仮にこの2人が結婚したとして、パートナーたる夫に楽をさせると言うことは想像できず、その際には『パートナー』の部分を『妻』のみに変換するに違いない。 「あれ?ちゃんに、いらっしゃい。宮田君、ただいま」 が買い物に出ていた隙に入り込んだ2人の存在に、彼女は少し驚いた様子だが歓迎し、宮田には帰宅の挨拶をする。 「ねえ、ちゃん。いい夫婦の日って何するの?」 「あー...そんな日が出来たよね、最近。いいじゃない、いい夫婦はいい夫婦のままで。何か特別なことをしなくても」 ねえ、と宮田に声をかける。 宮田はなんと返していいかわからず曖昧に頷いた。 を大切にして、楽をさせてあげること自体、なんら抵抗はない。 しかし、この2人に言われてから、というのが非常に抵抗を感じてしまう要因だろう。 暫く居座ったの友人2人はそれぞれ夜勤があるとか、大阪に戻らなくてはならないからとかいいながら帰って行った。 「もしかして、また何か言われちゃった...?」 宮田があの2人に色々と言われているのは知っている。何度もやんわり注意しているのだが、どうも聞いてくれていないようで、大抵彼女たちが帰っていくと宮田は疲れた表情を浮かべるのだ。 「ごめんね、ホント」 「いや、いいけど。なあ、。...夕飯、俺が作ろうか?」 と宮田が言う。 はきょとんとして、「いいよ、大丈夫。ありがとう」と言った。 「遠慮しなくても良いんだぜ」 宮田が言うと 「ねえ、いい夫婦の日って、どこかの保険会社が言い出したはずなのよ」 とが言う。 「ん?ああ、らしいな」 宮田もそう聞いたことがある。 「でね、その意味?目的なのかな?それが、パートナーに『ありがとう』を伝えるきっかけになればっていうことなんだって」 「詳しいな」 少し驚いて宮田が呟くと 「気になったから調べちゃった」 とはにかんでが言う。 「だから、普段からちゃんと『ありがとう』があるなら態々いい夫婦の日だとかそう言うの気にしなくていいのよ、きっと」 宮田は意外ときちんと「ありがとう」を口にするし、は言わずもがなだ。 「結局、日本人って口下手な人が多いからさ。そのきっかけとして普及したものでしょう?まあ、関連企業の努力がその影にありそうだけど」 苦笑して言う。 宮田は基本口下手だが、に対する気持ちだけは意外と口にしているのでこんなきっかけがなくても良いのだ。 少なくともにとってはそうだ。 「」 宮田が名を呼ぶ。 「なに?」 「いつもありがとう。愛してる」 「は?!」 『いつもありがとう』までは、先ほどの『良い夫婦の日』の起源を考えれば出てきても良い言葉だが、その後のは... 「気持ちを伝えるきっかけの日なんだろう?」 イタズラっぽく笑って言う宮田に、これは自分もそれを求められているのだと気付き、は後ずさる。 「あ、あとで...」 「いいぜ、今夜が楽しみだ」 グシャッと何か、悲しくなる音がした。 の足元では、10個入りのタマゴのパックが潰れている。 「宮田君...!」 「タマゴ、買ってくる」 自分の発言が原因であるようなので、宮田はすぐに彼女の言わんとしたことを察して家を出た。 「良い夫婦の日か...」 それはそれで悪くない日だと思いながら、宮田はスーパーに足を向けた。 |
桜風
11.11.22
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