| 宮田家での送別会だが、宮田が男一人では気の毒だということでが木村を誘った。 お酒が入るまでまだマシだっただが、段々怪しくなってくる。 「そうやけど。それでも、ウチは大阪には帰りたくなかってん」 流暢な関西弁を話すに、宮田と木村は顔を合わせる。 「さんって、大阪出身だったのか?」 「そだよ。たしか、中学でこっちに来たって前に言ってた。あー、そろそろ始まりそうだね」 の様子を見てがに言う。 「だねー。今回はいつからの話になるんだろう」 関西弁を話されて既に身構えている宮田と木村が改めて身構える。 今度は何が始まるんだ? 「ウチはぁー。小さい頃からアナウンサーになりたかったんや。関西弁やったらアナウンサーにはなれへんの。そやから、大阪におっても頑張って標準語を話しとった。 でもなー?みんな冷たいんやわ。大阪で標準語話しよったら、非国民みたいな扱いを受けるんや。苛められとったんよー。でも、タケちゃんがそれでええ、言うてくれたん。せやから、曲げずにがんばったんよ〜」 独り言だろう。何やらぶつぶつ気持ち良さそうに言い始めた。 そして、パタリと口を噤んでそのまま舟を漕ぎ始めた。 「今日は、結構手短に済んだね」 ちびりとお酒を飲みながらが呟く。 「そうだね。前、お父さんとお母さんの歴史から始まったときはどうしようかと思ったけど、今回は自分の話だけで終わったもんね」 隣の部屋から毛布を持ってきたも苦笑をしながら応えた。 「え?!ちゃんっていつもこうなの?」 「ええ。大抵こんな感じですよ。まあ、ここまでなるのに時間が掛かりますけど、今日は疲れてたのかね?お酒が回るのが早かったみたいですね」 「なあ、『タケちゃん』って何だ?」 の言葉の中にあったその存在を聞く。 「うん、よく分かんないんだって。自身もその『タケちゃん』の名前は知らないし、何処の子かも知らないって。 ただ、標準語を話してるを応援してくれたらしいよ。の初恋の君だって。本人はそうは言ってないけど...」 「『タケちゃん』か。てことは、渾名だよな。『タケウチ』、『タケダ』、『タケハラ』、『ニイタケ』ってのも有りだよな?」 指折り数えながら木村が『タケちゃん』という渾名がつきそうな苗字を挙げていく。 「名前ってのもありますよね。『タケユキ』、『タケル』、『タケシ』とか?」 宮田も考えて名前を挙げる。 「そういえば。千堂さんって、下の名前が『武士』だよね?大阪にその名前って多いのかな?」 「いや〜、普通に日本全国に分布してる名前でしょう?でも、子供の頃の渾名って、名前が多かったよね。じゃあ、彼は名前かな?」 の推理にがそう応える。 「何で、ちゃんは『タケちゃん』の名前を覚えてないんだ?」 「確か、学年が違って言ってました。周りが渾名以外で呼ばなかったからじゃないんですか?小学生って、男女気にせずに渾名で呼び合っていた記憶がありますよ」 本人が覚えていないのでははっきり言って自分たちだけで勝手に推理しても答えが出ない。 その後、皆は『タケちゃん』について考えるのをやめた。 が起きた後、もう時間も遅いので解散することになった。 が車を出して皆を送り届ける。 「何?まだタケちゃんが気になるの?」 何故か一緒に車に乗り込んだ宮田にが声を掛ける。 「いや、まあ。どうだろうな」 「ってさ。まだタケちゃんの事が好きなんだと思うよ。だから、今誰かと付き合ってもあんまり長続きしないんじゃないかな?案外、今タケちゃんに会ったら何の気持ちも芽生えず、恋心もなくなるかもしれないけど。 でも、実際は会えないから彼の影を追うって言うか、結局自分の中のタケちゃんと付き合っている人と比べてしまってるんだと思うよ。思い出って風化していく割りに美化されていったりしない?多分、それだと思うなー。 でも、大阪に行って、またタケちゃんに会って、それで改めて恋心が生まれたら、それって運命だと思わない?」 の言葉に宮田は苦笑をして 「そんな物語のようなことが現実に起こったら、確かに凄いな」 と返した。 |
桜風
07.5.12
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