| 何となく予感はしていた。 今までの人生経験から言ってそうだ。 自分はほど鈍くない。かと言って、のようにさり気なく人と距離を置くのが苦手だ。 千堂と何回目かのデートの食事中、千堂が真剣な目をしてに直った。 「なあ、。あの、な?ほら、もうええ加減何回もデートしとるし、おかしない思うんやけど。ワイと...」 とうとう来てしまったか... それが、の正直な感想だ。 千堂の態度を見ていれば分かる。 今までそういう雰囲気を味わったコトがあるには容易に予想できた言葉だ。 は東京に居るとき、正直モテた。 彼氏が居ない期間が短い自分には感心し、は呆れていた。 今回ほどの鈍さが羨ましいと持ったことは無い。 きっとなら「はい。ワイと、何ですか?」など平気で言いそうだ。 こんなコトを言われたら気も削げるだろう。 きっと木村たちもこれに苦労していたんだろうと何となく思い浮かべていたものの、さて、自分はどうしたらいいか本気で悩んだ。 「?」 目の焦点が合っていないの顔の前で千堂が手をヒラヒラさせる。 「はい。えーと、ごめんなさい」 「何でや?ええ感じやないか、ワイと」 の返事に千堂は引かない。 「そうやね、ウチもそう思う。でも、ダメなんや。前までは、まあ、付き合ってもええかなって思うたら付き合ってた。それでダメなら次があるって。でもな。違うような気がするん。 ウチの親友たち。2人とも自分の『好き』って気持ちにまっすぐなんや。それこそ不器用やなーって呆れるくらいに。でも、今のウチはそれが羨ましい。ウチもそうありたいって思った」 の先の見えない言葉に千堂は静かに耳を傾けていた。 「それやから、千堂さんはあかんの。まだ、好きやないから。ううん、勿論、友達としては『好き』や。でも、それとは違う『好き』はまだ無いんや。それが無いのに、付き合うことは出来んのんや。千堂さんの気持ちは嬉しい。けど、応えられんのんや」 が話し終わり、千堂は「そうか」と言いながら自分の目の前に運ばれた皿に箸を伸ばす。 そのまま、殆ど会話の無い食事が進んでしまった。 帰りは、千堂が変わらず送ってくれた。 はこれが最後のデートだと思っていた。 千堂の気持ちを断ってしまったのだ。当然だ。 千堂は一緒に居て楽しい。 一緒にご飯を食べても美味しい。 メールが来ると早く開封したくなる。 でも、違うと思う。 誰かを特別に想う好きと、今自分が千堂に抱いている好きは似ているが、一緒ではないと思った。 「あのな」 あと少しでの家だという所で、千堂が沈黙を破った。 「さっきの話なんやけど。つまりは、がワイに惚れたらええんやな?」 「はい?!」 「そういうことやろ?さっき『まだ』って言っとったよな?それやったら、この先、まだワイにも逆転のチャンスはあるっちゅうことやろ?」 「はぁ...」 何だ、この前向きさは?! そう思いながらは曖昧に頷く。 「それなら、話が早い。覚悟せぇや。ワイはKO勝ち、得意やから。今回もKO勝ちや!」 「あ、あれ?」 さっきまで深刻に考えていた自分が滑稽に思えるほどの爽やかな笑顔を残して、千堂は去って行った。 「ふ..ふは、ははは!!」 は小さくなっていく千堂の背中を見ながら吹き出し、笑った。 なんだかとても楽しい気分になった。 |
桜風
07.6.23
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