愛しきみ 9





ホールで宮田たちと別れては帰宅した。

「お邪魔しまーす」

「はいよ!」

部屋に入った途端、は絶句した。

「あの、さん...?」

「ん?ああ、ちょっと散らかってるけど気にしないで」

「...ちょっと?」

「そ。ああ、これでも片付けた方なんだけど。やはり人妻としては気になりますか??」

人妻どうこうじゃなくて...

はどう言っていいか分からず、沈黙を守り、話題を変えるべくコホン、と咳払いをした。

「良いよ。ここはの城だし。が住み良かったらいいんじゃない?で、お話とは何でしょう?」

昨日、はどうしても話を聞いて欲しいとに電話を掛け、無理を言って今日来てもらったのである。

しかし、としては何だか落ち着かなく、

「うん、まあ落ち着こう。お茶淹れるね。お風呂も沸かすよ」

そう言って話をそらした。

は肩を竦めてOK、と呟きソファに腰を下ろす。

そのまま結局寝る前までは話を切り出さなかった。

の方も言いたくなったらで良いと思い、アレから話を促すことはしていない。

「ごめんねー。リビングに寝ることになって」

「いいよ。さっき覗かせてもらったけど、の部屋は布団2組敷くのって絶対に無理だから」

「散らかってるもんねー。...ごめんね、中々話を切り出さなくて。ちょっとさ、頭ん中整理したかったから。聞いてくれる?」

「うん。元々そのつもりで来たんだし」

お互い布団に入って向かい合わせになる。

「私さ、千堂さんのこと好きなのかずっと考えてるんだ。実は千堂さんに付き合わないかって言われたの。
でもね、お断りしちゃった。前までの私ならまあ、いっかなってOkしたと思う。
でも、今は違うんだ。静かに誰かを想い続けていたちゃんを見て、まっすぐに誰かを想うちゃんを見て。私も真剣に考えなきゃって思ったの。ううん。真剣に恋をしたいって思ったの。前までは本当に去る者追わず、てか、私が去りまくってたけど...」

「そうだったね」

苦笑しながらは同意した。

「ねー。別に昔の恋愛を後悔してるわけじゃないよ。でもね、何だろう。羨ましくなったんだろうね。それなりに楽しかったけど、『それなり』じゃイヤだと思っちゃった。
ちゃんたちの言うとおり、私は『タケちゃん』が今でも好きなんだと思う。でも、たぶん、千堂さんも好き。うん、好きだな。
この前、ちゃんが答えてくれたでしょう?『好き』ってどんな気持ち?っていうの。アレ聞いたときにね、やっぱり思い浮かんだのが千堂さんだった。正直嬉しいってのが先に来た。でも、その後、どうしたらいいんだろうっていうのが来た」

「どういうこと?」

「うん。それってつまり。過去の恋愛にケジメがついてないって言うか...勿論、小学生のときに好きだった名前も知らない男の子への、初恋をまだ引きずってるだけの小さなことかもしれないけど。
でも、私にはちょっと大きいんだ。これって全然私が目指している恋愛じゃない気がするの。何だか、まっすぐじゃない気がするの。
千堂さんが私に向けてくれてる好意ってかなり、いや、もの凄くまっすぐなのね。それに応えるのに、こんなハッキリしないのって、いけないと思うの」

の言葉に「うー...」と唸りながらは考えた。

「あのさ、それって。なんて言うか。それを決めるのはじゃなくて千堂さんなのでは?」

「は?!」

の言葉にが素っ頓狂な声を上げる?

「え?どういうこと??」

「うん、だから。今、が私に言ってくれたこと、千堂さんに話してみたらどうかなって。私は..あんまり悪いことじゃないと思うな。だって、本当にその『タケちゃん』が何者で今どうしているのか分かんないんでしょ?
だったら、ケリをつけるコトだって簡単じゃないし、もしかしたらそのタケちゃん、ごめん、縁起でもないこと言うけど、もう居ないかもしれないじゃない?今のって、たぶん、そのタケちゃんに会ってみないと気持ちの整理がつかないって、そういう感じがするんだけど」

「うん、そのとおりだと思う」

「じゃあさ、会えなかったらケリがつかないままでしょ?それがダメだっては思ってるみたいだけど。じゃあ、一生恋ができないってコト?」

「う...イヤだ」

心底イヤそうな顔をしてが答える。

「それなら、それ以外の方法のケリのつけ方は見つけないと。あんまり他人に判断を委ねるって私も好きじゃないんだけど。で
も、この場合は相手がイヤだと感じなかったらOKなことだと思うし。タケちゃんのことがあってもが真剣に千堂さんのコトを想っているって事実は変わらないんでしょ?だったら、千堂さんがイヤじゃなかったら有りだと、私は思うな」

の言葉には「そか」と呟いた。

「そだね。当たって砕けろか。それなら話が早いわ。ありがと、すっきりしたよ」

「それは良かった。でも、千堂さんがその『タケちゃん』だったら一石二鳥なのに、ね...」

そう言ったかと思うと、はすぐに寝息をたて始めた。

よくよく考えたらこの親友は忙しい中自分の為に東京から大阪まで来てくれたのだ。

「ホントにありがとう。...宮田くんには勿体ないわぁ」

何とも自分勝手な感想を述べていたも間もなく寝息をたて始めた。










桜風
07.7.14


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